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アルバイトとホワイトデーのプレゼントと、衝撃 ②

 大きな音がする。

 なにかがぶつかりあうような音




 僕はそういう音を聞くと正直冷や汗が出てくる。

 ――時間が巻き戻っておよそ一年近く、異世界関連のことを散々見てきたから結構僕は慣れていると言えるだろう。ちょっとしたことぐらいスルーすることは日常的だし出来る。

 とはいえ、乃愛がいつも傍に居たからすっかり安心していたというのもあるかもしれない。



 そう考えると乃愛が隣に居るのってすごくありがたいことなんだなと改めて思ったので、帰宅したら乃愛に改めてお礼を言っておこうかな。




 家へと早足で足を進める。



 なのだけど、気づいてしまった。

 帰り道の方が音が鳴っている。




 ……これは近寄らない方がきっといいだろう。何だか雷っぽいもの落ちているし。……自然現象じゃなさそうだから多分魔法か何かだと思う。

 僕は魔法は効かないけれども、そこに自然現象が関われば僕に直撃したらヤバい。



 そういうわけで僕は遠回りをして家に向かうことにする。



 少し薄暗くなっているからこんな中で遠回りするのは正直嫌だけど、まぁ、仕方がない。



 遠回りして家に帰ろうと歩き出したわけだけど……、なんか逆に音が近づいてきているように聞こえる。

 正直やめてほしいなぁと思いつつ、文句を言うと僕が認識していることを悟られてしまうし、そもそもそれでややこしいことになるのも面倒なことになるし。


 うーん、乃愛についてきてもらっていればよかっただろうかなどと僕は呑気に考えていた。






 だけど、呑気なことを言っていられる状況でもなくなってくる。




 近くの塀が粉砕された。

 幸いにも壊れた破片は僕にはかからなかった。




 ……杉山の姿が映った。

 フラッパーさんたちもいる。



 その向かいにいるのは、悪魔っぽい人達である。

 何だかすごく派手にやっている。……これ、何人か巻き込まれているよね。破片の下敷きになっている人達ももしかしたらいるかもしれない。




 僕はこの状況でどうしたらいいだろうか。とりあえずこれだけ派手にやっているのならば、家に帰って乃愛を呼びにいくべきか? 僕は正直言ってこの状況をどうにかするための手段を何一つ持ち合わせていないから。





 気づいていない風を装いながら杉山たちのことを見れば、なんか空を駆けている様子。……どうやって空を飛んでいる風なんだろうか?

 光の剣らしきものをもっていて、とても様になっている。服装はただの私服なんだけれども、もっと勇者っぽい服装をしていたらもっと勇者らしく見えることだろう。何だか本当に勇者だって感じだ。


 しかし悪魔っぽい人を倒すためとはいえ、そこそこ周りを破壊しているのはどうにか出来ないのだろうか。



 悪魔たちだって壊しているけれど。

 あとルードさんの魔法が派手過ぎる。

 エルフだから魔法が得意なのだろうけれども、常識改変が効いていてももう少し周りのことを考えて行動してほしい。

 それにしても炎や水などが空を飛び交っていて、一種のアトラクションか何かみたいだ。



 って見惚れているわけでにはいかない。

 帰らないと。

 


 僕は色んな音がなったり、何かが破損されたりする音を聞きながら早足で家へと向かう。




 なんとか巻き込まれることなく、家に帰れたらいいけれどとそんなことを思いながら僕は歩く。




 ――そうしていれば、衝撃が僕を襲った。





 突然の出来事で、何が起こったのかも僕は分かっていない。ただ感じるのは痛みだった。

 ――何かが落ちてきた。そして何かが破損された。多分、僕が歩いていた隣の家が壊れた?



 その瓦礫が僕に襲い掛かった。

 ……痛い。赤いのは血?



 瓦礫の下敷きになったっぽい。……なんか僕、妙に冷静だなと自分で驚く。なんだろう、血が流れているのも、こういうものに直接的に巻き込まれているのも――何だか現実味がないからかもしれない。



 乃愛に購入したホワイトデーのプレゼントも潰れてしまっている。折角アルバイト代ためて購入したのにな。



 ……乃愛は、僕が怪我しているのを見たらどうするだろうか。生き返らせることは出来るだろうけれど、僕がもしここで一回死ぬことになれば乃愛はブチ切れるかもしれない。乃愛が暴れないためにも、どうにかしたいけれどここから起き上がることが僕は出来ない。



 やばい。意識を失いそうだ。


 ――朦朧としている中で、僕の耳に乃愛の声が響いた。





「博人!!」



 珍しく焦った乃愛の声。

 その言葉と同時に僕を覆っていた瓦礫が排除される。




「博人!!!」


 乃愛が、こんな風な表情をしているのも珍しい。僕は思わず小さく笑ってしまった。



「ええっと! ああ、もう、博人、外から魔法効かないのか」


 乃愛は多分回復魔法っぽいのをかけようとして、僕にかけられなかったのか苛立ったような顔をしている。



 視界が歪み、目を閉じそうになる僕に乃愛は「博人、後から怒らないでね!」と言って覆いかぶさった。



 僕の口がふさがれる。

 それと同時に内側から何かが流れ込んでくるのが分かる。



 ああ、そうか。

 乃愛の思考を僕に飛ばすことが出来るように、口から直接僕に回復魔法をぶち込んだのか。



 それと同時に血が止まったのが分かる。

 血は止まっても僕の身体は疲労しているのか、そのまま意識を失いそうになる。



「博人、寝てていいよ。私の博人に怪我させた人は全員どうにかしとくから」



 ――意識を失う寸前に恐ろしいことを言っている乃愛の声と、恐ろしいまでに冷たい瞳を浮かべた乃愛の顔が見えたけれど、僕はそのまま気を失った。





 


 

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