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バレンタインの出来事 ②



 昼休みが終わって、僕たちは教室へと戻った。

 なんだかそこで杉山が中々の修羅場を形成していた。なんだろう、告白されていたり、女性に囲まれていたり……うん、後なんでちゃっかり女神様もこっち来ていて、チョコレート渡しているんだろうか?



 僕はそんなことを思いつつ、席に着く。

 もうすぐ昼休みも終わるけれど、他のクラスの人たちは帰らないのだろうか??





「博人、これ食べる?」

「チョコレートまだ持ってたの?」

「沢山持ってるよ? 授業前に食べさせたいなぁって。あーん」

「いや、自分で食べる」


 乃愛が差し出してきたチョコレートを受け取り、自分で食べる。

 乃愛はそれを見てもにこにこしていた。



 ちらりと杉山たちの方を見れば、まだ修羅場をしている。というか、何で教室で修羅場気味なのだろうか。僕は詳しく知らないけれど、杉山は結構人助けをするらしい。痴漢にあっている子を助けたりとか色々。そういうことをしているから、周りに人が増えたりするのだろう。

 でも流石にこの世界の人たちは幾ら杉山のことが好きでも、杉山が勇者だと言うことは知らない様子である。

 女神様の常識改変はそれだけ優秀な様子だ。……僕には効いてないけれども。




 フラッパーや女神様達に関して言えば、自分たちの方が杉山のことを知っていると優越感に浸っている様子が見て取れる。

 異世界での杉山も、日本での杉山も知っているからということなのだろうけれど。




『博人ー、私も博人のことなんでも知っているからねー』


 ……乃愛も何で対抗して僕の脳内に直接話しかけているのだろうか。

 逆に全て知られていると僕はびっくりするけれど。でも乃愛は僕の心を読めるわけではないので、完全に僕のことを全て知っているわけではないだろう。ただ乃愛が一番僕のことを知っているのは事実だろうけれども。



 昼休みが終わって、ようやく杉山の修羅場は解消された。とはいえ、一時中断みたいな感じっぽいので、放課後とかにまた修羅場を繰り広げるのだろう。女の子たちが中々ギスギスしていたりしても平然とした様子の杉山はやっぱりメンタル面では強いのだろう。

 



 結果として杉山は大量の袋を紙袋に入れて持ち帰ることになっていた。あとフラッパーさんとルードさんの言葉を聞いた限り、異世界でも同じように色々もらう可能性があるようだ。

 日本で好きな相手にチョコを渡す文化があることを異世界でも認知され、勇者である杉山には大量の貢物が届いているのだとか。



 ……異世界の貢物ってどんなものなのだろうか?

 やっぱりファンタジーな生物のものとか色々と含まれていたりするのだろうか?



 そんなことを考えながら、放課後になる。

 放課後にまた杉山が何だか修羅場になっていたけれど、それを横目に僕と乃愛は帰宅する。



 帰宅途中にスーパーにもよった。母さんから買い物を頼まれていたので、それを購入する。

 バレンタイン当日なので、スーパーの中もバレンタインコーナーが充実している。自分用だろうか、チョコレートを色々と購入している女の子の姿も目に見える。



「博人、何か欲しいものある? 家にもまだチョコあるけれど、博人が買いたいなら買おうか?」

「いや、大丈夫」


 じっとバレンタインのコーナーを見ていたら乃愛に何か買うか聞かれる。でも帰宅してからも乃愛がチョコレートを用意しているのならばこれ以上チョコレートはいらない。



 家へと帰宅して、夕飯を食べた後にはチョコレートケーキが出てきた。これも乃愛が作っていたらしい。……本当に色々用意しているなぁ。



 ちなみに毎年母さんがバレンタインを義理でくれていたわけだが、今年はなかった。乃愛が色々準備しているのを見て、僕には渡さなくていいだろうと言う結論に至ったらしい。代わりに父さんへのバレンタインチョコを張り切って作ったようだ。

 ……両親が仲よくしているのはいいことだけど、目の前で仲良くされるとちょっと恥ずかしい。あと乃愛が真似しようとするし。





「博人、まだ色々あるから明日もチョコおやつに食べようね」

「……どんだけ用意したの?」

「博人が他の子からチョコレートもらわなくていいって思うぐらい」

「そっか」

「うん。来年も沢山用意するから、他の子からもらっちゃ駄目だよ?」



 そう言う風に大量に用意しなくても、僕にわざわざチョコレートを用意する人はそんなにいないと思うけれど……。

 でも乃愛がそうしたいのならば好きにさせとこう。




「博人、こっちから食べる?」



 ……乃愛はどこかでポッキーゲームを見たのか、やらないかと誘ってくるけれど首をふっておいた。

 本当に乃愛は色々調べて日本のことを色々知ってきているなと思った。






 そうやって僕と乃愛のバレンタインは過ぎていく。

 こんなに濃いバレンタインは人生で初めてだなと呟いていたら、乃愛が嬉しそうに笑っていた。




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