表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

110/121

冬休み明け、降り注ぐ何かを見る ②

24日 四話目




 石化の雨が降り注ぐ。

 まだまだその雨はやむ気配がない。


 そういうわけで昼休みは空き教室で乃愛と一緒に昼食をとる。




「なんか、石化している人が増えてない?」

「まぁ、ただの雨だと思い込んで外に出ているから、そりゃあ石化するよね」

「……あれ、なおせるの?」

「大丈夫だよ」

「ゲームとかで石化した状態で破壊されるとどうしようもないとかあったけど、そういうのは?」

「まぁ、どうにでもなるね。それにしてもアレをどうにかするのがまだ出来ないって、勇者もその程度なんだなーって感じだよね」




 杉山たちは何だかその悪魔みたいな存在とゲームのようなものをしているっぽい。その間、ずっとその雨が降り注いでいるのはなんとも迷惑だけど。


 杉山たちは石化しないように女神様からの加護が与えられているらしい。





 というか、雨がかかっている地面の一部なども石化しているっぽいし。こういう存在って、異世界だと凄い凶悪で、恐ろしい存在なのだろうなと思う。だって問答無用でそういう風に状態異常を与えるなんて……恐ろしいとしか言いようがないし。




「博人は多分、あれ浴びても平気だよ」

「本当?」

「うん。博人にはあれきかないとおもう」



 でも僕に効かなかったとしても、こういう石化の雨の中飛び出すのはちょっと遠慮したい。



「博人、放課後にもまだ降っていたらしばらく学園いる?」

「うん。受験勉強するって名目で残る」



 乃愛と二人で小さな声でそんな会話を交わしながら僕は外を見る。

 徐々に石化していく人が増えているけれど。いつになったらこの石化の雨は止むのだろうか? そして石化してしまった人たちはいつになったら石化から解放されるのだろうか。


 まぁ、常識改変が効いているから皆違和感がないようになるんだろうけれどさ。




 なんて思っていたら杉山たちとゲームをしているあの悪魔みたいな人が至近距離に近づいてきてびっくりした。飛んでいて窓に近づいてきたらしい。びっくりするからやめてほしい。その後、その人を追いながら校舎の壁を駆けあがる杉山の姿もあった。

 何で校舎の壁を駆けのぼれるんだろうか……。



 勇者という存在だというのは分かるけれど、勇者というのは色んな存在がいるものだよね。

 漫画やゲームを見ただけでも一口に勇者といっても、様々な能力を持つ人がいる。杉山は王道の勇者っぽいけれど。



 というか、なんか崩れた音したけれど……破壊した??


 正直その少し破壊された校舎の中にいる僕はその音にハラハラしてしまう。全壊は流石にあり得ないだろうけれども、こういう風に校舎を壊すような真似はしないでほしい。




 昼休みが終わって、午後の授業中も色々と煩かった。

 


 音が沢山なると、正直言って勉強に集中できない。常識改変が効いていて、全く持ってそういう音を聞く事のない教師やクラスメイトたちが少しだけ羨ましくなった。

 それにしてもいつまでやっているのだろうか。



 なんて思っていたら15時ぐらいにようやく、石化の雨が止んだ。

 ようやく終わったのだろうか? 本当に結構時間がかかったな。あの蠅の羽の人って結構強力で、勇者である杉山が相手にするのも大変な連中なのだろうか?

 というか、異世界で勇者を杉山がやったとはいえ、杉山よりも強い存在が異世界には溢れているとかそういうことなのだろうか??


 異世界物の物語だと、幾ら主人公が強くなってもその後どんどん強敵が出てくるパターンが多いしなぁ。



 その後、杉山たちは石化した人や物への対応で追われていたようだ。ちらりと校庭の方を見たら、なんか振りかけていた。あれ、何をふりかけているのだろうか? 石化を治す薬みたいなもの?



 異世界だとやっぱり石化みたいな異常状態も日常茶飯事なことなのだろうか。そう思うと異世界って本当に恐ろしい場所だと思う。僕は行きたくない。

 この世界よりも人の死が近くて、危険なことも多くて――そういう世界で命の危険を顧みずに過ごすなんて僕には無理なので、異世界で普通に生活をしている人達も凄いなと思う。




 放課後になってもまだ杉山たちはあの蠅の羽の悪魔の対応で追われているようだった。というか、今日は教室に全然かえってこなかった。

 杉山は高校生よりも勇者としての生き方の方がすっかり本分になっているのだと思う。




「博人、雨やんだし、かえろー?」

「うん」


 石化の雨も止んでいるので、僕は乃愛の言葉に頷いて帰宅することにする。

 石化から解放された人たちは、一瞬不思議そうな顔をしていたけれど、その後に常識改変が効いたのか平然としていた。

 人の認識をそんな風に自由自在に操れるのは本当に、神様だからなんだろうなぁと思う。


 石化していたってことは、その後遺症とかもあったりするんだろうか……? まぁ、異世界産の薬だったら問題ないのかな?



 そんなことを考えながら帰りに校庭から校舎を見る。


 屋上部分の一部が欠けている。……あれがドンパチしていた破壊音の正体? 見ているだけで恐ろしいことなので、本当に異世界関連のドンパチは自重してほしいなぁと僕は思うのだった。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ