乃愛とのクリスマス ③
「此処で告白して上手くいくと、永遠に一緒に居られるみたいなジンクスあるところだよね。それにしてもこの世界にはそういう魔法みたいなのないのにそういう言い伝えあるの面白い」
「ただそう言われているだけで、実際にそうかは分からないけどね」
「というわけで博人、大好き!」
「……はいはい」
「とりあえず伝えはしたので、一緒にいるってことで。私は博人の隣から離れる気全くないしね」
乃愛の行きたいと言っている場所は、そういう恋人たちの行くクリスマスデートのスポットである。そういう特集の雑誌を見たりしたらしい。
乃愛はそういうところでジンクス通りにしたりして楽しんでいるようだ。
今いるのは、巨大なクリスマスツリーの下である。ショッピングモールのすぐ傍にあるものだ。
それにしても周りはカップルばかりである。
やっぱりこういう場所だと、くっついている恋人同士が多い。向こうにいる人たちとかキスしているし。……乃愛がそれを見て目をキラキラさせている。
「博人!」
「やらないから」
「まだ何も言ってないよ!」
「乃愛が何を言おうとしているかぐらい想像出来るから」
「……キスしないって聞こうとしただけなのに」
「しないから」
やっぱりキスしている人達みて、僕にキスしようかなどと考えていたようだ。乃愛は無理やり僕にキスするぐらいは簡単に出来る。でもそれをしようとしないのは、嫌われたくないと思っているからなのかもしれない。
不満そうな態度だけど、それでも僕が乃愛の言葉を拒否できるのがやっぱり嬉しいのか乃愛はにこにこしている。
乃愛の力だと、こういう時に拒否が出来なくすることだって出来るのだ。
人を意のままに操ることが出来る力。だからこそ、相手の本心が本当にそうなのかというのが分からなくなってしまう力。
乃愛の力を思うと、そういう力って大変だよなぁと思う。もちろん、僕はそういう力を持ったことはないけれどもそれでも想像は出来る。
「博人。じゃあ、次あっち行こう」
「うん」
乃愛は僕と口づけすることを諦めて、そう告げる。
僕たちは歩きながら美味しそうなアイス屋を見つけて入る。冬に食べるアイスというのは結構おいしいものだ。僕は結構冬に食べるのも好きだ。
乃愛と一緒にアイスを食べる。
僕はチョコで、乃愛はバニラを食べている。
「冷たいけど、美味しい」
「うん、美味しい」
「冬に食べるアイスもいいなぁ」
「ねぇ、博人、そっちの味、一口頂戴」
乃愛が僕の方をキラキラとした目で見ている。僕は「いいよ」と口にする。スプーンか何かで分けようかと思ったら、乃愛がそれより先に僕の持っているアイスにぱくりっと食いついた。
「美味しい。ほら、博人も」
そう言いながら乃愛は自分が食べていたアイスを僕の方に向けてくる。僕は期待する乃愛を見て、それを直接食べる。
やっぱりアイスは美味しい。
それにしても冬でもそれなりにアイス屋は繁盛している。やっぱり冬に食べるアイスが美味しいからだろうか。男性客より女性客やカップルの方が多い。
アイスを食べ終えて、また僕と乃愛は歩き出す。
今までクリスマスに出かけたりほとんどしていなかった。家でのんびりする方が僕は好きだったから。だからこそ、僕はこの街に長く住んでいるのに、クリスマスにこんな風に街が彩られるのをそこまで知らなかった。こうして乃愛と一緒に出掛けているからこそじっくりと街を見て回れて、何だか新しい発見が出来ていて楽しいと思う。
「博人も楽しそうだね」
「うん。結構楽しい」
「良かった。私も楽しいけれど、博人が楽しくないと嫌だもん」
「僕、本当に嫌だったら断るよ?」
「そうだよね。博人は私が相手だろうとも、本当に嫌だったら断るよね」
「うん」
僕が頷けば、乃愛は嬉しそうに楽しそうに微笑んでいる。
僕は楽しくなければ乃愛にも「帰る」って多分言うだろう。それか「向こうの方が気になる」とかいって違う場所に行くかもしれない。
ぶらぶらとクリスマスで騒がしい街中を歩いていく。時々、人気のない公園にいったりもする。でも酔っ払いたちがいたり、カップルたちが怪しい雰囲気出していたりするのであんまり長居はしなかった。
そうやってぶらぶら歩いていると、辺りは暗くなってくる。
暗くなってくると、イルミネーションがよく見える。
キラキラと輝く光が、街を彩っていて、少しだけワクワクした気持ちになる。
こうやってイルミネーションをきちんと見るのも今までしてなかったからなぁ。そう思うと何だか今までもちゃんと見ておけばもっと楽しかったかななんてそう思う。でもイルミネーションを見るのが結構楽しいなというのを今日知れたので来年以降はもうちょっとじっくり見るようにしようと思った。
まだ学生だから遠くに見に行くことは出来ないけれど、大人になったら有名なイルミネーションのスポットとかにいってもいいのかもしれないなんて思う。