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来訪

誰かの手の温もりを感じ意識が覚醒する。私の手を握り心配そうに名前を呼んだのはお母さんだ。どうやら家まで運んできてくれたらしくベッドの上に寝かされていた。ゆっくりと身体を起こすとコップに入れられた水を渡されたので少し喉を潤した。

「シアンの事はお父さんが見てくれているから、もう少しで起きると思うわ。」

「・・ねえお母さん私達、どうしたの?」

「貴方が気絶してからシアンも急に倒れてね。お父さんがすぐに夢寄せだと気が付いて護り石を握らせたの。ほら、洞穴の前で貰った石よ。」

「護り石・・。」

「夢では割らねば効果が無いがな。」

 改造が必要だなと不満そうに呟き、お父さんは私と目線を合わせると腕を出すように言った。袖をまくると赤い刺青のような模様が腕に描かれていた。大海の波の中に蓮の花が船のように浮かんでいる。それを見たお父さんは眼を見開き奥歯を噛みしめた。

 コンコンとお姉ちゃんが開いたドアをノックし、不安そうに眉を下げてお客がと呟いた。お姉ちゃんの脚にも青い色違いの刺青のような模様が描かれていた。その後ろから、するりとごく自然な動きで部屋に入ってきたのは夢で出会った男性でお父さんは静かに彼を睨み付けた。

「邪魔するよ。ロアン、シルビアさん。」

「ああ、本当に邪魔だな。」

「嫌味なら今度にしてくれ、ロアン。君が怒る気持ちも良く分かるがこれはッ!」

 お父さんは彼の胸倉を掴み、持ち上げて怒りを露わにした顔で彼に話す。彼はプランと宙ぶらりんになり、苦しそうに顔を歪ませた。

「仕方のないこと、そう言うつもりか?ローティス。お前は確かに世界を救うような偉大なる魔導士ではあるが自愛の感情のみならず、慈愛までなくしたのか?そこまで人間として落ちてしまったのならば今、私がお前の首を折ってやろう。」

 すると彼は静かにお父さんの腕を掴み、悲しそうな顔をしてお父さんを見下ろした。

「私がとうに人の心など持ち合わせていると思いかい、ロアン。最大限の祝福と加護を着けるさ、でもねロアン、私達人類を救うにはこうするしかないんだ。」

 君が一番良く分かっているだろうと呟くように言うとお父さんは静かに彼を下ろした。彼は首を擦りローブを直すと私とお姉ちゃんの方に向いて、静かに口を開いた。

「その刺青は一種の呪いなんだ。シアンは知っているだろうが、これは魔族の魔力に反応して飛躍的に能力を上げるというモノ。魔族たちとの戦いの中で生み出されたモノなんだけれど、一つ、大きな欠点があってね。適度に魔族の魔力を吸収しなければ付与者の魔力が大幅に吸収されるんだ。人間は魔力に比べて魔力が少ないから最悪しんでしまうんだ。」

 そんなものがお姉ちゃんと私の身体についているの、逃げることが許されない状況に頭がパニックになった私は弱々しい声で彼に聞いた。

「これは・・・・どうしたら消えますか?」

「私が解く呪文をかければ消えるよ。それか同等の魔力と知恵を持つものならね。」

「・・そうですか・・。」

「分かりました。では交渉しましょう、ローティス大魔導士。」

 お姉ちゃんが急にわたしと彼の間に入り、そう言った。彼は驚いた様子を見せたまま静かにお姉ちゃんの話に耳を傾けた。

「まず妹に十分な魔力と優秀な魔術師をあげてください。部隊がバラバラになるだろうから、最後まで生き残れる強くて優しい人をお願いします。そして必ず生きて家に帰してやってください。」

「シアン、君は何もいらないのかい?」

「それが守れないのであれば私達は部隊には入りません。」

 彼は溜息を軽く着くと了解したよと言って笑った。その顔を見たお母さんが私とお姉ちゃんを力強く温かい腕で抱きしめた。

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