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 フラフラと暗い空間を歩いていた。どこなのか分からないけれど足の裏から感じる温かさに不安が少し薄くなった。遠くから何かが飛んでくる。私はそれに手を伸ばした。

「君がオリビアかい?」

 それは艶やかな羽を纏うからすだった。私の腕に止まり、温かい声で私の名前を呼んだ。

「そうだけど、なんでからすが話すの?」

「儂は魔法士様の使い魔だからじゃ。猫の奴が他を回っているからの、儂が君を呼ぶように頼まれたのじゃ。」

 ばさりと羽を広げ、私を見ると飛び立った。カァと小さく鳴くとその体は白い光を帯び、私を誘った。あてもないし、悪いからすではなさそう。私はからすの背を追い走り始めた。


 30分は走った。だけれどからすが止まる気配も息が切れることも無く、走り続けた。どこまで行くんだろう。流石に時間が経ちすぎな気もして、知らないからすについて行くのは次から止めよう。そう思い足を止めた時、足元に大きな蓮の花が咲いた。私がしゃがんで花に触れると、花は私を飲み込んだ。甘い香り、そして太陽を浴びている様な温かさが私を包んでいる。

「おかえり、私の眼よ。いらっしゃい、剛腕を持つ少女よ。」

 ゆったりとした声が聞こえた。花弁が開かれると眩い光と共に外の景色が現れた。咲き乱れた蓮たち、空を埋めるように咲く藤、そしてその景色を眺める一人の白いローブの人。目を隠すように包帯が巻かれているため顔がはっきりと分からない。それでも少しだけ上げた口角と肩に止まったさっきのからすを撫でる優しい手付きを見て、優しい人なのだと感じた。

「急に夢寄せをしてすまなかったね。どうしても君と話がしたくてね。」

 蓮の上を歩き、私の手を取る。そして立ち上がり彼の顔を見るとからすが短く鳴いた。すると黒猫とお姉ちゃんが現れた。お姉ちゃんは眼を見開いた。

「なんで、オリビアがここに?」

「私が呼んだんだ。君たちのお父さんに伝える時間も無くてすまないね。」

「お父さんを知っているんですか?」

「ああ、古い友人でね。二人が揃った事だし本題に入ろうか。」

 お姉ちゃんは私の元に駆け寄り、震えた手で私の手を握った。

「君たちに魔王を倒す部隊に入ってほしいんだ。心苦しいが、前衛部隊としてね。」

 魔王って、魔族とかの主?みたいなモンスターだよね?確か、ラスボス?キャラクター?

「・・本気で言っているんですか?」

 お姉ちゃんは静かにその人を睨んだ。その恐ろしい目付きと殺気にぞくりと身体が震えた。その人は悲しそうに笑った。

「今、魔族たちにより9つの町と8500人が亡くなっているんだ。それは魔王の魔力が上がっている証拠であり、戦争の兆しでもあるんだ。私たちは一人でも多くの討伐者を探しているんだ。これ以上犠牲者を出さないためにも。」

「それで、私と妹が選ばれたんですか?」

「ああ。毒竜の巣であれだけ戦えることが分かったからね。」

「でも、妹はまだ9歳です!早すぎます・・。」

「君が受け入れられないのも分かる。あまりにも危険なことを幼子にやらせようとしているからね。私に出来ることなら何でもするよ。今までもそうしてきたからね。」

 その人が笑った理由が分からなかった。お姉ちゃんは身体を震わせ、一瞬心を閉ざした後静かに私のポケットから石を取り出した。

「私たちは対価を求めません。父と母の教えを破るわけにはいかないからです。代わりにこちらにおいでください。でなければ、了承することは出来ません。」

 お姉ちゃんは石を足元に投げつけた。石が砕ける音と共に意識が覚めていく。その人は空に何かを書いた。私の腕がじんわりと熱をもった。

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