大蛇
洞穴の奥へと進むこと数十分。開けた空間に出たのだが、目の前に横たわるゴブリンたちとさっきであったゴブリンよりも巨大な大蛇を見て足が止まった。
「大火力で行くぞ!」
「少し大人しくしてね!!」
大蛇の頭部に振り下ろされたハンマーにより地面が割れるタイミングと同時に、大蛇を覆うほどの魔法陣が現れた。赤く光り巨大な炎柱が空間を赤く染めた。肌がじりじりと焼ける。
「凄い・・。」
お姉ちゃんは見入っていた。お母さんが私たちを見て手を振り、お父さんは大蛇から何を剥ぎ取っていた。家族が強いことを実感していると、シュルシュルと何かが擦れる音が微かにした。誰もその音に気付いていないように見えて、不安を感じ目線を天井へと上げた。大きな鍾乳洞の先、大蛇の半分の大きさの蛇がこちらをじっと見ていた。ぽたり、ぽたりとよだれを垂らして。
「シアン、悪いんだけどこの子たちを端に移してあげて。」
「分かった。」
お姉ちゃんの双剣の柄が緑に光、片方を地面に叩きつけると下からすくい上げる様にゴブリンたちが空に浮いた。それを見た蛇はゴブリンたちを足場に下りてくる。お姉ちゃんはそのまま腕を振ると風が壁際に向かい流れる。その時、一匹のゴブリンがお姉ちゃんの横を通り過ぎた。
「お姉ちゃん!!」
その陰に隠れていた蛇は大口を開けて飛んだ。私は反射的に大剣を鞘ごと投げた。ゴブリンごと蛇は反対側にある大岩にぶつかった。私は跳んで、ジタバタと暴れる蛇に刺さった大剣の柄を殴った。軽くやったつもり、なのに大岩は大破し蛇は完璧に伸びていた。
「オリビア!大丈夫?!」
お母さんたちが駆け寄ってくれるがもちろんすり傷さえない。もしかして私って、強いの?自分が思っていたよりも常人離れしていたことに驚くが、お姉ちゃんに怪我無い事にほっとした。その光景をからすはじっと見ていた。
「あ、剣。」
伸びた蛇の前に落ちている大剣。私を抱きしめて頭を撫でるお母さんの腕から抜け、そちらの方に走った。お姉ちゃんも右手に剣を持ち、私についてきた。大剣の目の前まで行くが蛇はまだ横たわっていた。早く戻ろう。そう思い、柄を掴む。
それを見計らったかのように蛇は起き、尻尾で私を捕まえた。大きな力で引っ張られ、鞘についていたボタンが外れ刀身がむき出しになった。
「オリビア!」
シャー!!蛇のとぐろを切りつけた。それに対し大口を開け、白い液体を噴射して反撃する蛇。きりきりと締め付けられ体が痛い。何とか逃げ出そうと身体をよじるが、閉まる一方で抜け出せない。
「武器を使って!」
反撃を避けながらお姉ちゃんは叫んだ。腕は締め付けられて動かなかったが、手首は動かせた。重くは無い、これなら。柄をしっかりと掴み、大剣を上に半回転させた。
シャ!!短く呻いた蛇。私の身体にかかる赤い液体、切断された蛇の断面、赤く濡れた大剣。頭がその光景を綺麗に焼き付けてしまい、意識が飛んだ。叫んでいたお姉ちゃんの声すら霞むぐらい大きなショックだった。