準備
あっという間に朝食は終わり、食器を流し台と思われる場所に置いた。勿論、ステンレスではなく石のような素材の台で、蛇口なんて無く小さな手押しポンプが付いていた。キッチンをよく見るとコンロもガスでは無くて、下に薪をしまえる穴の開いた台だし、冷蔵庫のようなものは見つからないし、電子レンジとかトースターとかの家電なんて一つも無い。
「何だか、童話の中に出てくるお家だな。」
「オリビアもそう思うのか?」
急に後ろから返事が返ってきた。お父さんが棚の中を探りながら答えたみたい。私はどうしていいか分からず突っ立ていると、緑色の瓶と硝子のコップをバスケットにいれて手招きをした。何だろう?そう思い近づくと、何かを握った手を出され掌を出すとコロンと小さなピンクの飴が転がった。
「田舎町の家をイメージして作ってもらったんだがな、些か可憐な家になってしまった。」
嬉しそうにため息をついて、キッチンを出ていった。さっきは厳しい人だと思っていたが優しい人なのかも。飴を握ったまま、奥で呼ぶお姉ちゃんの元に走った。
「ん、似合ってる。」
鍵がかかっていたのはお姉ちゃんの部屋で、先ほどおさがりのサスペンダー付きのスカートとシンプルなシャツに着替えた。スカートの裾の辺りに小さな花の刺繍が施して合って可愛い。
「ありがとう、お姉ちゃん。」
「・・っどういたしまして・・お父さんたちが外で待ってる。行こう。」
顔を赤くした彼女に手を引きながら部屋を出た。
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家の外に出る。太陽の光が木々の隙間と芝を照らし、美しい自然を目にした。少しその光景に見とれていると、お母さんが私の名前を呼んだ。
「今日はオレンジと竜塊石を取りに行きましょ。ダンジョン近いし、貴方たちの新しい武器も作らなきゃね。」
「・・嬉しい。」
「それでは行こうか。オリビアはこれだったか。」
そう言ってお父さんが渡してきたのは自分よりも二倍大きな大剣だった。恐る恐る受け取ると、思っていたよりも軽いことに驚いた。背中に鞘をかけ、お姉ちゃんの隣を歩いた。
「オリビアは、お母さんと同じで大きい武器。動作が大きいから気を付けて。」
「う、うん。お姉ちゃんは何を使っているの?」
「双剣。でも風魔法付与されてる。後で見せるね。」
「うん!」
私達の会話を両親は微笑ましく聞いていた。