転生
初小説です。緊張しています。
「ママー おままごとしよーよー」「しおー」
「ママはお客さんね」「おきゃんしゃん」
「真依は運ぶ人ね」「はごぶぅ」
「真央は作る人!なににしますかー?」「しましゅかぁ」
「じゃぁハンバーグ下さいな」
「はい!ちょっとまっててくださいね」「まってくだしゃーね」
随分と変わった夢。見たことのない部屋に変わった服を着ている。初めて見る子供たち。1人は5歳くらいのボブヘアの女の子。眉毛の上でぱっつん前髪。自作の歌を歌ってお料理中。
もう1人は2歳くらいのツインテールの女の子。こっちもぱっつん前髪。お姉ちゃんの真似っこお料理中。
知らない子達なのにどこか懐かしくて心が温かくなる。もう愛おしくて堪らない。
(ふふっ。可愛い。ちょっと前髪切り過ぎちゃったかな)
あれ?何でそんなこと思ったんだろう。
え?私が切った・・・の?
「今日は自転車で大きい公園に行こうか?」
「やったー!行くー!」「いくぅー!」
「青信号だよ!レッツゴー!」「ごぉー!」
あっ!駄目!待って!お願い止まって!!
目を覚ますとそこには見慣れた天井。白のカーテンに小花柄の刺繍が入った天蓋ベッドの中。窓には夕方なのだろう、赤く染まっている空が見える。
ここは、『今』の私の部屋。
「はぁ もう最悪」
これは前世でよく好んで読んでいた小説の、ありきたりの設定。
そう、転生だ。
私はあの事故で死んで転生したんだ。
子供達は!? あの子達はどうなったの!?
心臓の鼓動が激しく打ち、胸が張り裂けそうに痛い。
落ち着いて、よく思い出して。あの時、信号は青になって自転車を走らせた。そこに馬鹿な車が突っ込んで来て、私は吹っ飛ばされた。
まさか子供達も!?
いや、違う。子供達はヘルメットをしてきちんとシートベルトを閉めていた。だから吹き飛ばされてはいないはず。薄れ行く意識の中、視界に写っていたのは・・・
倒れた自転車に乗ったままの2人。
泣いている?
そうだ、ママーと呼んで泣いていた。2人とも元気に声を上げて泣いてた。元気に、泣いて、生きていた!!
なら、子供達は助かっているよね?駆け寄って来てくれた人もいたはず。その人達が救急車を呼んでくれているよね?ケガはしているかもしれない。でも命に別状はないはず。
だからきっと生きてる。絶対生きてる!
「お目覚めになられたのですね。本当に良かった。すぐに旦那様と奥様をお呼びして参ります」
目に涙を溜め、そう声を掛けて部屋を出たのは、侍女のユーリア。
いつも冷静で何事もさらっとやって退けてしまう、できる女の子 ユーリア。敢えて言うなら表情をあまり顔に出さないのが欠点かな?そんなユーリアが涙ぐんでいた。確か熱を出して寝ていたはずだけど、結構重症だったのかしら?
とりあえず上半身を起こして座ってみる。
特に痛い所もないし、気分も悪くない。至って普通。
ただ、前世と現世の記憶が混濁して気持ちが追い付いていない。
そこへ、扉が勢い良く開く音がする。
「ティアナ!!」
「お父様、お母様 あの、私・・・」
2人の顔を見て驚いた。目の下には隈ができて顔色が良くない。少しやつれた感じがする。これじゃぁどっちが病人かわからない。
「良かった、本当に良かった。熱も下がらず5日も眠ったままで、医者に見せてもわからないの一点張り、このまま目を覚まさない可能性もあるなんて言うものだから・・・」
えっ!? 何それ!? 怖い! そりゃ心配するわ。5日も眠るって何?熱が下がらないとか無いわー。1日熱が下がらなくてもヤキモキするのに。それを5日もだなんて。考えただけでゾッとする。
にしても、そんな状態だったのに私よく普通に起き上がれたな。
「お父様、お母様、私はこの通り元気です」
もう心配いらないよ、大丈夫だよと伝えるために笑ってみせた。すると、お母様には強く抱きしめられ、お父様には頭を撫でられた。
温かい。 優しい手。
あ、駄目だ。
私の中で何かが切れた。
私もあの子達をもう一度抱きしめたい。
笑顔が見たい。
会いたい。
会いたい。
会いたい…
あの子達は目の前で母親を失った。心に大きな傷を負わせてしまった。まだまだ甘えたい年齢なのに。
悲しいよね。寂しいよね。辛いよね。
なのにもう抱きしめて慰めてあげることも、大丈夫だよって声を掛けてあげることもできないなんて。
どうして私は死んでしまったの!?
大きくなったら一緒に買い物したり、料理をしたり、好きな子の話をしたり、テレビを見てこの人面白いねーなんて話したり。特別なことなんて望んでなかった。
ただ、あの子達と一緒に過ごせれば良かった。
成長を見届けたかった。
それだけで幸せだったのに…
止めどなく流れてくる涙を堪えることもできず、ひたすら泣き続けた。
読んで頂けて嬉しいです(泣)
ありがとうございます!
続きはなるべく早く掲載出来るよう頑張ります。