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美味しい冒険はじめました。  作者: 流水行雲/ながみこううん
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第七話 賢者の教えと妹誕生

お勉強の時間です。

 翌朝、朝食が終わり一息ついた頃にウォートが訪ねてきた。

 生まれたばかりのノワールを気遣ったのと、外で見られて騒動になるのを避けたからだ。

 ノワールはモモと一緒に朝食後のお昼寝の最中だった。


 「ニノン、はじめるかの」

 リビングのソファに座りニノンを呼ぶ。

 「まずニノンにはお約束してもらいたいことがあるんじゃ」

 普段やさしいウォートが珍しく表情を引き締め、まじめな顔をニノンに向ける。

 「なにをおやくそくすればいいの?」

 見たことのないウォートの顔に少し緊張した。

 「うむ、これから教える魔法や魔法の知識だがの。覚えたことはじーちゃんやおとうさん、おかあさん以外には話しをしないでほしいのじゃ。どんなに仲良くなった人でも家族以外には絶対に話してはならん」

 「おともだちとか、むらのひとたちにも?」

 「そうじゃ、家族以外にはだれであろうとじゃ。おお、ノワールはお友達でも家族に入るからの」

 真剣な顔を不意に(ゆる)めると、目を細め微笑む。

 「わかったー、おやくそくする」


 いずれニノンには、詳しく理由を話すことになったのだが、ここで教えた魔法に関する知識は、実はウォート自身が研究したものが過分に含まれていた。

 魔法一つ発動するにもオリジナルの要素で威力が上げやすくなっていたりと、危険な要素が含まれているため、ニノンには(いち)から教える際その事も踏まえて教えられるが、そうでない場合とても危険なことが起こるため約束させたのだ。


 「まず魔法というのは何か、わかるかの?」

 尋ねられたニノンはキョトンとして首を振る。

 「わかんない。でも、じーちゃんとおかあさんがつかってるのは見たことあるよ」

 「そうじゃの、じゃあ、魔法の初歩から話すとするかの」

 そういうと魔法についての説明をはじめた。

 幼いニノンに向けて話す内容のため、難解な部分はいずれ教えることを前提に、かみ砕いてわかりやすく話す。

 魔力は生き物の体内にあるものと、自然に漂っているものがあること、とか。

 魔法を発動させるには魔法言語と魔法陣を理解しないといけない、とか。

 魔法を使うときは呪文が必要だが、魔力の扱いに慣れたら呪文の詠唱をしなくていいようにならなければならない、とか。

 魔法の効果は体内の魔力を種にして、大きい効果を発揮するには自然に漂う魔力を集めて使うこと、とか。

 他にも属性魔法以外に、魔法言語や魔法陣を応用して使う付与魔術や特殊魔術と呼ばれるものなど、いろんな魔法があること、などを説明していく。

 「わかったかの?」

 「んー、よくわかんないとこもあったけど、まほうがいっぱいあるのがわかった」

 首をかしげてそう答えたニノンに、微笑みかけて、

 「うむ、それがわかれば今のところ良いじゃろ」

 そう言うと人差し指を立ててニノンの顔の前に差し出す。

 ライト、と小さくつぶやき魔法を発動させると、指先に小さな光球が浮かび、ニノンとその周りを照らし出す。

 「この呪文はライトといっての、ニノンの能力を見るときにも使って見せたのじゃが覚えておるか?」

 「うん、かみのうえの絵がひかったやつ」

 光球を目を輝かせて見るニノンが、大きくうなずき答える。

 「そうじゃの。まずはこのライトの呪文を使えるようにしようかの。この呪文は魔法陣も魔法言語も使わず詠唱するだけで発動できる呪文じゃ、工夫しながら使いこなしていくと魔力の精密操作の訓練にもなるでの」

 「どうやるの?」

 キョトンとするニノンに、詠唱文を覚えさせる。

 「ようこう(陽光)のごときひかり()よ、()まれいでてしゅうい(周囲)()らせ」

 たどたどしい口調で、ゆっくり唱えたニノンの詠唱が終わると、指先にウォートが出した光球の二倍くらい明るい光球が現れて周囲を照らした。

 「できた、まぶしい!」

 眩しそうに目を細めるニノンに、ウォートが微笑みかけた。

 「きゅう…」「くう~ん…」

 まばゆい光に迷惑そうに泣いたノワールとモモが、被っていた毛布に潜り込む。

 「ちと強いが、まあいいじゃろ。ニノンよ、そのまましばらく光らせておくのじゃ」

 「わかった」

 ウォートの指示に素直にうなずく。

 フワフワと不安定に揺れながら、ニノンの指先で明滅を繰り返す光球を維持する。

 三十分ほど過ぎると、強く光っていた光球はホタルの(ともしび)ほどになり、今にも消えそうな大きさになっていた。

 「じーちゃん、なんかフラフラする」

 疲れた顔のニノンが見上げて異変を訴えた。

 「そうか、ではやめてよいぞ」

 ウォートの言葉を受けライトの呪文を解く。

 ふう、と一息つくとふらりとソファにもたれた。

 「疲れたじゃろ、そのフラフラした感じが、もうすぐ魔力がなくなる合図じゃで、覚えておくんじゃぞ」

 「まりょくなくなっちゃうの?」

 不安そうに眉をハの字にしたニノンがきく。

 「ほっほ、無くなるわけではない、魔力枯渇といっての、一時的に魔法が使えなくなるのじゃ。フラフラしても無理をして魔法を使い続けると、気絶をして場合によっては危険なことになるからの。フラつきを感じたら魔力がなくなる合図じゃから、魔法を使うのをやめて休憩するんじゃぞ」

 なだめる様に微笑みかけた。


 こうして、その日から毎日ウォートによる魔法の講義が続いた。

 この村では6歳から、希望すれば村の集会所で共通語の読み書きを教えてもらえるのだが、ニノンと年の近い子供がいなかった。そのため、集会所に行く意味がなくなり、少し早いがついでに共通語の読み書きや数字の計算もウォートが教えることにした。

 最初のひと月である程度安定するまでライトが使えるようになり、半年過ぎたころには光の強弱も付けられるようになった。

 読み書きも幼さゆえの吸収力でどんどん覚えていく。

 計算については教える事がないどころか、ウォートでも感心するほどの能力を発揮した。

 前世の男から流れ込んできた料理の知識に付随する知識の中に、数学的な知識も含まれていたのが要因である。

 

 その(かたわ)ら、未知のレシピをおねだりすることも忘れなかった。

 残念ながら辺境の村では、手に入る食材や香辛料などの調味料が限られたり、存在不明なものもあったため、行商の商人に頼んで取り寄せたりと時間がかかった。が、粘り強くおねだりしてじわじわと再現するレシピの数を増やしていた。


 ノワールもすくすくと成長していった。

 成長と共に翼がしっかりとして、大きくなり、体も大きくなっていた。

 体長が二メートルを超えた頃、体のサイズを小さくして幼龍形態になるサイズ変更の能力が覚醒した。

 幼龍のころはニノンの頭にしがみつくのが定位置だったが、体が大きくなることでそれができなくなっていた。

 サイズ変更の能力が覚醒したことで、再び定位置に戻ることができ、以降は必要のない限りは幼龍形態で定位置に陣取ることになる。


 それから三年が経つ。

 魔法と魔法言語、魔法陣などの基礎的なことはひと通り習得、初級魔法に関しては詠唱破棄もできるようになる。

 中級を勉強し始めた頃、フリーダが加わり錬金術と薬学の勉強も始まる。

 フリーダが扱う錬金術は錬金魔法という魔法を用いたもので、通常の錬金術とは別の方法だった。

 それは全ての工程を、工程に即した魔法を使うことによって(こな)し、ポーションや薬、金属などを作り出すものだ。

 その過程で、薬効や毒素のある素材の知識なども教えられた。

 

 更に二年が経ち、ニノンが10歳を迎えた年に妹のシリルが生まれた。

 出産には、ニノンの時にお世話になったボニーばあさんが活躍を見せた。

 小さく弱い存在に庇護欲を掻き立てられたニノンは、兄としての意識が芽生え始める。


 その後も妹を気にしつつもフリーダの手伝いなどをしながら、魔法や錬金術の勉強を続けていく。



読んでいただきありがとうございます。


あと少しで旅立ちです。

やっとここまで来た…。


続きが気になる、面白いと思っていただけましたら、

評価や感想などいただけたら作者が小躍りします。

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