深淵から戻り、謎は深まる。
「な、んだと……」
あの火炎は、あとから現れた大きな不死鳥のものだった。
不死鳥と言ったらこれだ、という見た目の、大きな燃えている鳥。
「待った、待った……。てことは……」
つまり、不死鳥の祖は、他にいる。
いや、気づかない方が不自然だった。
そもそも、不死鳥なのになぜ人の形をしている?
あり得ないことでもないが、普通にはない。
つまり、
「彼女は……、人間、だった……?」
おそらく、不死鳥に加護を与えられたのだろう。
でなければ、神々しさはあったが、後から放たれた火炎に比べて、あまりにもスペックが違いすぎた。
ということは、……、つまり、だ。
「祖の不死鳥は、……、消失した、のか?」
いや、それこそあり得ない。
不死鳥は、蘇り続けるはず。
いったい、どういうことだ……?
加護に関する謎は増えるばかりだ。
だが、この行為で、いくつか知れた。
それは、飛べること、そして、おそらくだが、視界を鳥瞰モードにするようなことができることだ。
おそらく、あれらは加護だけを持った状態でも使えるはずだ。
なら、僕に出来ないはずはないが、ここでやろうとするのはリスクが高いような気もする。
なにしろ僕の動きは丸見えだ。
妙な動きをすれば即首ちょんぱだろう。
まあ、再生するのだが。
ああ、そういえば、転移前の世界で、死なない人間の話があったな。
確か、その中では、首を切られると、首から頭が生え、元の頭は消失するから、実際には殺せるとかいう話だった気がする。
う~ん、僕はどうなんだろう。
試す気にはならないな。
まあいいや。
さて、これからはどう暇を潰そうか。
そう思いながら、僕は、近くを歩いていた兵士に聞いてみた。
余談だが、けっこう強そうだ。体も大きい。
「あの、あとどのくらいで着くんでしょう?」
「ん? ああ、あと、三日ってとこだな。どうした?」
「いえ、どのくらい遠いのかなと思って」
「まあ、暇だろうしなあ、悪いが我慢してくれや。俺にはどうすることもできん」
「わかりました。まあ、ぼ~っとするのは得意なんで、任せてください」
「はっはっは、おもしれえ兄ちゃんだな」
いやいや、そんな。そう言おうとしたときだった。
ズガアア~ン!と、大きな音が後ろから響いた。
「敵襲か!?」
「え、敵?」
「兄ちゃんはここで待ってな。俺はちょっくら行ってくる」
そう言うと、彼は後方へと走っていった。
まあ、戦えないし、僕は待つとしますか。
そう思って、僕は横になろうとした。
「待てよ……。後ろの方って……」
しかし、そこで僕は一つ思い出した。
「後ろって、確か、シロナが!」