ホークド=アーカーの終幕
やっぱり、俺様には、成し遂げられなかった。
誰も殺さずに止めようと思っていたが、結局、止めきれなかった。
というか、そもそも無理だったんだと思う。
二万人以上の軍勢を、一人で止めるなんて。
殺していいんなら、何とかなったかもしれない。
でも、今回は殺せなかったんだ。
ドーク=スナークが来たのももう大体終わった後だった。
結局、俺様は死ぬんだろォな。
生まれてから今まで、たくさんの人を殺してきた。
数えたことはねェが、かなりの数になることはわかる。
だからこれも、仕方のないとだ。いくつもの命を奪ってきた罪は、罰を持って、裁かれなくてはならない。
ああ、だからなのかもしれねェなァ。
できるだけ人を殺そうとしねェあいつの姿勢は、俺様にとっちゃァ面倒以外の何物でもねェが、だからこそ、不死鳥の加護なんてとんでもねェ力を得ていたのかもしれねェ。
はっきり言って、あの力は反則だ。
死なねェなんて力、どうやったって倒せるわけがねェ。
でも、誰も殺そうとしないあいつなら、その力を持っているにふさわしいと思える。
あいつは、かなりの憎しみを持っているであろう俺様ですら助けたんだ。そんなに優しい人間は、本来戦いに向いちゃいねぇが、その理想を貫き通せるだけの力を、あいつは持っているんだ。
「死んでも俺様にはできねェな……」
まあ今にも死にそうなんだが。
「おい、喋れるってことは、まだ生きてんだよな?」
ん? おいおい、幻聴が聞こえてきやがった。
「こりゃあ、いよいよ終わりかァ……?」
「バカか! まだ終わってない! お前が死んだら、この革命は死者を出してないなんて言えねえんだ! 死ぬな! 回復魔法はどうした!」
ああ、現実か。
誰かに抱き上げられる間隔がある。
目は開かないから見えやしねェが、クロトの声がしたから、あいつだろォな。
「今、魔力が、光よりも炎が多いんだよな。炎じゃあ、回復できねェ。まあちょぉどいいし、死なせてくれ。俺様が今死ぬのは、革命関係じゃねぇだろ……?」
「ふざけんな! お前がいなくちゃ、国防はどうするんだ! 王国の戦力を止められるのなんて、お前くらいだろうが!」
「いや、お前にだってできる。なんとかなるさ。全然大丈夫だ」
ああ、意識が薄れていく。
言い残した事とか、ねェよな……?
正直言って、俺様と近しいとこにいたのなんて、こいつだけだし、言いたいことなんて別にねェはずだが……。
ああ、一つだけあった。
「帝国はよろしく頼んだ。あそこだけが、俺様の、こきょ……」
言ってる間に、口は動かなくなった。
全身から力も抜けた。
目は最初から開いてねェが、目の前にいるクロトは、泣いてんだろォな。
頬に水滴がつく感触がある。
雨も降ってきてんな……。
「おい、ふざけんなよ。死ぬなよ。死ぬな。死ぬなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼」
最後に聞こえたのはそんな声だった。
おいおい、しっかりしてくれよな。
そう思ったのを最後に、俺様の意識は途絶した。
次でいったん完結になります。
一時間後ですので、正直すぐですけれど。
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