旅の始まり、説明話。
「つまり、この世界には、赤青黄緑白の五種類の魔法があります」
「へぇ、それで、それぞれに特性があるってこと?」
僕らはある程度休憩すると、歩き始めていた。
とりあえずは、近くの町へ。
「はい。赤は炎系統、青は水系統、黄色は土系統、緑は風系統、白は光系統です。すべての生物は何らかの魔力を持っていて、それぞれに異なった色の魔力です」
「ああ、赤と青を持ってたら紫みたいな?」
「そういう感じです」
「なるほどね~、面白いもんだね。君は何色なの?」
「私は桃色です。炎系統と光系統が使えるんです」
「へ~、てことは回復とかも?」
「できます」
「そういえば、僕、不死鳥の加護っていうのをもらってるんだけど、加護っていうのは何?」
「加護……、確か、超自然的な存在などが与えるその存在の力の一部だったはずです。それにしても、不死鳥の加護とは、すごいですね」
「ん~、けっこう不便だけどね」
「加護は、たしか、持ち主の努力次第で力を引き出せるはずですよ」
「そうなんだ。そう聞くと、やる気出るなあ」
「まあ、元の存在を越えることはないらしいですけど」
そっか……。
残念。
「台詞として出してくれないと何もわかりませんよ?」
「うん、まあ、進もうか。あっちだっけ?」
「はい。このまままっすぐです」
「ん~、今日は道中で野宿かな」
まだまだ見えてくる気配すらない。
「そうなりますね……。ああ、夜這いの際は、優しくお願いします」
「しないって!」
「そうですか。こちらとしては、されておいた方が、くっついておく理由になっていいのですが」
「別にそんなことしなくても一緒にいるよ」
「そう言ってもらえるのは嬉しいですが、口約束だけでは不安です……」
「そっか。でもなあ、……、よし、これから、シロナは僕の妹ってことで」
「はあ、妹、ですか?」
「うん。まあ、嫌になったら、というか、僕から離れることになったら忘れてくれていい。身分が証明しづらいから、関係性がほしいと思ってね」
「なるほど。では、よろしくお願いします。クロトお兄さん」
「うん、よろしくね、シロナ」
僕らは手を繋いで歩き続けた。
「この辺で野宿にしよう」
「わかりました。薪を集めてきますね」
「いや、危ないでしょ。僕が行くよ。シロナは、ここで待ってて。何かあったら呼んでね」
「はい、気を付けて」
「はいはい」
どうせ何かあっても死にゃしない。
もう暗くなってきた。
そろそろ寝ようと、焚き火を消そうとすると、
「……、あの」
「ん? どうかした?」
「あの、用を足したいんですけど……」
「あ~、そっか、その辺の茂みで大丈夫かい?」
「わ、わかりました。覗かないで下さいよ?」
「勿論だよ! 大丈夫! どんだけ信用無いの、僕……?」
というか、体を売る感じの事を言ってたのに、恥ずかしがりはするんだな。
それにしても、完全に失念していたな。
というか、僕の体は大丈夫なんだろうか。
全く尿意を感じないけど。
なにも食べてないからかな?
あ、しまった。
その声が口から漏れていたのかもしれない。
あるいは、表情から何か察したか。
どちらにせよ、
「どうしたんですか?」
茂みから出てきたシロナが僕に問うた。
「いや、食べるものがないなあと思って、どうしようか?」
「一日二日食べなくても死にませんよ。明日以降考えましょう」
「そうだね、お休み」
「はい。お休みなさい」
「じゃ、火を消すよ? いや、消さない方が安全か?」
「そうかもしれませんね。でも、どっちにしろ寒いですし、」
そう言いつつ、彼女はこっちに寄ってくる。
「これなら暖かいです」
そう言って僕に抱きついてきた。