廃墟、灰、魔獣。
さて、というわけで、いったん周りを見渡してみる。
灰となった廃墟には、相変わらず人影はない。
「う~ん、どうしたものかな」
「いったん戻るか?」
「いや、とりあえずこの辺で方針を決めたいけど、ここで何が起きてるのかまず見極めとかないと。とりあえずここを安全にしたいって感じかな」
何が起きているのかすらわからないところで長時間とどまるというのも、こわい。
まずは何が起きているかだ。
どこかの国が密かに攻めてきたのかそれとも反乱でも起こそうとしているのか。
後者の場合は面倒だ。
その場合、ここの住人は意図的に隠れ、機会をうかがっているということになる。
それをとりあえず見つけ出したくなる。
だが、高確率で攻撃してくるだろう。その場合、アーカーは殺してしまう可能性が高い。
しかし、僕はこれから、人を殺したくはない。
手の届く範囲にいる人の死は回避させたいのだ。
この場合、僕の命はどうでもいいが、抵抗しなればアーカーが危ないだろう。
とはいえ、まだそうと決まったわけでもない。
「とりあえず、調べてみたいけど……。これじゃあね」
「なんも残っちゃいねェぞ」
「壊したのも僕たちだからな~。誰に文句も言えない」
「まァ、焼け残ってるもん見るしかねェだろ」
「そうだね」
「あの、クロトさま。私をお忘れでは?」
「え?」
ああ、完全に忘れていた。
でも、そんなこと言うと悲しむだろうし……。
よし、ごまかそう。
「いや、忘れていたわけじゃなくて、その、別のことに集中してたっていうか、ね。その……」
「ごまかしきれていませんよ。ところで、話は聞いていました。私もお手伝いいたしましょうか?」
「おい、その前にお前は何だ?」
インが手伝ってくれそうな発言をしたところで、アーカーがインに聞いた。
そういえば、説明してなかったな。
「彼女はインって言って、僕と契約した精霊だよ」
「なるほどな。わかった。で、使えんのか?」
「少なくとも、あなたにできないことが私にはできます。ただし、私にはあなたほどの戦闘能力はありません」
「へェ」
アーカーはにやりと笑う。使える奴だと思っているのだろうか。
「何ができるんだっけ?」
僕は尋ねてみる。
よく考えてみれば、僕は彼女が何ができるのかよく知らない。
「はい。私は、妨害、追跡などが得意ですね。黒の物質を生み出して霧のような用途で妨害ができます。また、残留している魔力などから、追跡などもできます」
「そうなんだ。ん? じゃあ、ここにいた人たちの追跡もできる?」
「ある程度は。ただ、どこかのお馬鹿さんたちが盛大に散らかしてくれていますので、少し時間がかかりますが」
どこの馬鹿さんだろうな~?
「そうなんだ。でも、できるんだね?」
「はい。可能です」
「よし、じゃあよろしく。その間に方針を固めておく」
「了解しました。では、クロトさまたちはどこかへ行っていてもらえますか? 邪魔なので」
「あァ?」
「邪魔になるなら仕方ないね。行こうか。どのくらい離れていればいい?」
「とりあえず街のあったところからは出てください。二人とも魔力が多いんですよね」
「なら仕方ねェな。行くぞ」
「そうだね」
さて、というわけで街のあったところから少し離れた。
その時だった。
魔獣だった。
正確には、魔獣の群れ。
結構大きい。その口のサイズ的に、人間一人くらいなら、一口で食べられそうだ。
そんな奴が、群れでいたのだ。
そして、一匹は今まさに食事中だった。
「これは……」
「確実にこいつらだろォな」
「やっぱり?」
「あァ。こいつら、魔獣のくせにある程度知能が高い奴らだ。こんだけ数がいりゃ、街を包囲して押しつぶすことくらいできんだろ」
「そっか。ここにいたのは?」
「おおかた、救援を呼びに行くであろう人間を一人逃がしたんだろォな。で、来た人間を食べようと、ここで待ち伏せしてたってとこだろ」
「つまり、襲われているとの報告に来たのは」
「十中八九、逃がされた奴だろうな」
「襲撃があったのは、たぶん夜だね。でないと、襲撃者の正体がわからなかったことに説明がつかない」
「そォだな」
「で、どうする?」
「決まってるだろ」
そんな話をしている間に、見つかった。
魔獣たちは襲い掛かってくる。
「全部殺す」
だと思った。
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