帝国最強、再戦。
容赦のない一撃だった。完全に不意を突かれた。
知り合いにも容赦ないな、こいつ。
まあ、僕を警戒してくれたととらえれば、好意的に受け取れないこともない。
とはいえ、僕はまた死んだ。上半身を焼き消されて。
インは何とか離脱したらしい。
視界の端に映っている彼女は、アーカーを睨んでいる。
まあ、いきなり攻撃してきたわけだし、無理もない。
と、アーカーが口を開いた。
「ん~、なんだァ? 再生速度は前よりだいぶ上がってるみてェだな。それと、そこの精霊。お前、けっこォ変わったか?」
「変わりはした。強くはなった、はずだ」
だが、
「俺様にはかないそォにねェな」
言いつつ、彼は僕に攻撃魔法を撃ってくる。
「さあな。まだ力を隠してるのかもしれないぞ?」
話しながら、攻撃を受け続ける。
再生時に、頭ができていないと、声は出ないが、聞こえるので、そこそこ会話は成立している。
「なら出し惜しみはしないほォがいい。すぐに終わっちまうかもしれねェぞ?」
「あいにく死なないんでね。すぐに終わるつもりはない」
そう言った直後、僕は横に跳んだ。
正面からでは、すぐに対応されてしまう。
炎翼も展開し、移動の速度を上げる。
「攻撃力に少し自信がついたんだ!」
右手をふるって、直接打撃を与えに行く。
炎竜の加護の効果で、爪を立てた手は硬化され、攻撃力は上がっている。
当たれば、傷はつくはずだ。
しかし、
「当たりもしねェし、そもそも攻撃力も高くはねェな」
僕の攻撃は、当たってはいなかった。
光魔法だろう。不可視の壁に阻まれ、空中で停止している。
当然僕の手だ、感触は伝わる。
硬い。割れる気がしない。
ではと、僕は掌から炎を生み出す。
これは、炎竜の加護によってさらに火力を増している。
数回使ってみたのでわかるのだ。数倍の威力にはなっている。
しかし、これもまた、彼の魔法による壁を破ることはできなかった。
帰ってきて、僕の体を焼く。
すぐに回復するが、なかなかに衝撃的だ。
正直、いくらかの効果はあると思っていた。
だが、まったく効く様子はない。
ひるむ様子すらない。
「お前、確かに強くはなったが、ほとんど変わりはねェな。それとも、まだ何か隠してるか? それならいいが」
話しながら、彼は魔法を解く。
僕の体は少し前のめりになる。
すぐに立て直したが、僕の手は取られていた。
そのまま、彼の太くはないその腕で、引っ張られる。
どこからそんな力が、と思うほどの強い力で引かれ、僕の体が引っ張られる。
そのまま、投げ飛ばされた。
これはあれだ。
前の世界での、柔道に近い。
授業で、柔道部の奴に投げられた時と似た感覚だ。
だが、こちらのほうが強いだろう。
痛みが少ないのだ。
下は畳よりも固いはずなのに、痛みが全くない。
ひかれた腕は痛むので、達人とまではいかないのだろうが、かなり強い領域にいることは間違いないだろう。
勝てる面は、見つからない。
少なくとも、こと戦闘においては、僕はこいつに勝つことはできないのかもしれない。
「まだまだ見せてくれるんだろぉなあ!」
そう言われつつ僕は蹴り飛ばされ、近くの建物の中へと入った。
当然壁を突き破ってだ。
壁のほうが強いだろうと思ったが、加護によって保護されたのだろう。民家の壁が意外ともろかったのかもしれない。
どちらにせよ、僕は蹴り飛ばされ、建物の中へ入れられた。
飛んで逃げることはできない。
そういえば、インはどうしただろう、と思うと、すぐ近くにいるのがわかった。
こんなことなら、彼女の力を早めに把握しておくんだった。
アーカーが入ってくる。
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