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帝国、再訪、前。

 炎竜の巣を旅立って、しばらくたった。

 方角も何もわかってはいなかったが、適当に歩くことにした。

 加護のおかげなのか、少し視力が上がっているように感じる。

 おかげで、かなり遠くにある街が見えた。

 とりあえずは、そこを目指して歩いていく。

「とりあえずは、……、そうだなあ、困っている人がいたら助ける。そのおかげで何かあればいいし、何もなくても別にいい。うん。そういう方針でどう?」

 これから長い間一緒に旅をすることになるであろう精霊のインにそう尋ねる。

「問題ありません。これからは、助言も致しますが、基本的には指示に従います。好きなようにどうぞ」

「あ、そうなの。もっと仲良くいこうよ。ほら、僕一人で決めて失敗すると、責任重いし」

「はあ、命にかかわらなければ問題はないと思いますが」

「あはは、僕らが命にかかわることなんてそうはないよ。お、魔石」

「まあそうでしょうね。あ、いざという時のために持っておいたほうがいいですよ。クロトさまの魔力がかなり少なくなった時はそれを使ってください」

「不死鳥の加護持ちと精霊だしね。じゃあ、見つけたら拾っていこう」

「そうですね。いざという時には高値で売れますからね」

「ほう、高値で。インはいろいろ知ってるんだね」

「世界中をまわってはいましたので。人間たちの世間のことは一通り把握してます」

「そりゃあ頼もしいや。これからもよろしく頼むよ」

「よろしく頼まれました」

 そこで会話が途切れてしまった。

 この辺りはまだ魔力の濃い地域なので、魔石がちょこちょこ落ちている。

 それを拾いつつ歩く。

 しばらく歩いていると、突然、空気が軽くなった。

 比喩的な表現ではなく、本当に今なら空も飛べそうだと思うほどに体が軽い。

 あ、空はいつでも飛べるか。

 翼が出せる体である。

「体が軽くなった」

 そう呟くと、僕の肩の上に座っているインから反応があった。

 はじめのうちはふわふわと僕の周囲を浮かんでいたのだが、少し前から肩の上に座るようになった。

 これからの定位置にする気だろうか。

「魔力の強い地域を抜けましたからね。まあ、普通の人は、魔力が結晶化するような濃さのところでは、体調がかなり悪化しますけどね。だから誰も入ってこないんです。かなり珍しいですよ? 体が重くなるだけというのは」

「まあ、気づかないうちに何回か死んでたんじゃないかな。寝てるときにでも。だるさはあったといえばあったし。でもそんな気にならなかったけどな……」

「炎竜さまの体内にいたのでしょう? おそらくそこは先ほどいたところよりもかなり魔力は濃いですからね。そこででしょう」

「なるほどね。これまた慣れたわけか」

「おそらくは」

「いやあ、それにしても、やっぱり話し相手がいると退屈しないね。ありがとう」

「いえ。こちらこそ、契約できてうれしいです。ありがとうございます」

「ん~、歩けど歩けど、近付く気配はないなあ。この分だと、今夜も野宿だね」

「翼を使うことはないのですか?」

「急ぎなら使うけれど、今はいいかな」

「そうですか」

 僕らはえっちらおっちら歩き続けた。

 いや、厳密には歩いているのは僕だけだけれど。

 夜になったら、寝た。

 精霊にも、食事は必要ないらしい。

 別に疲れるわけでもないので、睡眠は必要ないのだが、気分的な問題もある。

 寝ている間に魔獣に喰われるとかも嫌だけれどね。

 まあ、喰われていればさすがに気づく。

 大丈夫だ。


 そして、翌朝を迎えた。

「よし、それじゃ、行こう!」

「朝から元気ですね」

 目をこすりながらインが言う。

「そう? 変わらないでしょ」

「まあ、ずっと同じというだけで、朝に特別元気というわけではありませんが」

「ああ、他と相対的に見てってやつだね」

「それですね。ふわぁ」

 インはあくびをした。

「まだ眠っていたければねててもいいよ。しばらく何もなさそうだし」

「では、そうさせてもらいます」

 そういうと、再び彼女は眠りについた。

 今度は僕の頭の上だ。

 僕は今日も歩く。

 そのうち着くだろう。

 明日、もしくは明後日くらいには。

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