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炎竜、別れ。

 さらに数日がたった。

 この頃は、炎竜もだんだんと元気がなくなっているように感じる。

 それでも、色々なことを教えてくれた。

 なんでも、僕に会うまでは定期的に死に場所を求めて世界を飛び回っていたらしい。

 文字通り、その背中の翼でビュンビュンと。

 そんな翼も、今は力なく見える。

「本当に僕でよかったの?」

 あまりいい質問とは思えなかった。

 なにしろ、選択肢はないのだ。

 ここまで来てしまえば、もはや僕以外に継承されることは、ほとんどないと言える。

 まあ、偶然にもこの近くに僕より強い者がいればいけるのだが、僕より強いというのはい過ぎるほどにいるかもしれないが、この近くにいることはないと言っていい。なにしろ、この周辺は異常に魔力の濃い地域で、あちこちに魔石が自然発生するほどだ。魔石というのは、結晶化した魔力のことで、たいてい人為的に作られるわけだが、それが自然発生するのだ。並の生物は生きていけない。つまりここにいられるのはかなり強い者なわけだが、わざわざここに入ってこようとするやつはいない。

 つまり、ここにいる間は、この竜はずっとひとりぼっちだったのだ。

 僕も向こうでひとりぼっちになったことがある。いや、当然炎竜の巣に来る前にこの世界でももちょこちょこ経験してはいるのだが、辛いのだ。話し相手はいないし、相談もできない。一人というのは、なかなかに辛い。

 そこに現れた僕に、色々なことを教えてくれたのだが、最後ともなれば、誰でもいいから知恵を授け、持てる力は与えたくなるというものだろう。

 それは僕でなければいけないというわけではない。

 むしろ僕でない方がいいのかもしれない。

 だって僕はとても弱い。炎竜の加護の後継者としては、ふさわしくないほどに。

 でも、炎竜は、そんな僕に言ってくれた。

「もちろんじゃよ。お主になら、安心して渡せる。何せ死なんのじゃからな。お主に渡せれば、この加護が消えることはないじゃろう。後はせいぜい、強くなってくれることを願うのみじゃな。ハハハ。死ぬ前にお主に出会えてよかった。わしの想いは、果たされた……」

 それが、最後の言葉となった。

 ゆっくりと目を閉じ、炎竜は眠った。

 長い、いや、永い眠りについたのだった。

 眠るように、その人生の幕を閉じた。

 すると、なにか光のようなものがその体からぼんやりと浮かび上がった。

 それは、僕の中へと入ってきた。

 僕は、しばし光に包まれた。

「これが、加護の継承……」

 どうやら、普通はこういうものみたいだ。

 あの先代の不死鳥様は、けっこう乱雑だったように思うが。

「まあ、安らかに眠ってくれ。炎竜さん」

 僕はそう呟き、ここを後にしようとした。

「では、さっさと焼いてしまいましょう。魔竜となられても困ります」

 そういえば、そんなことを言っていた気がする。

 死んだら焼いてくれと言われていた気がする。

 なんでも、魔力の濃いところで死ぬと、その遺体は復活し、強い魔性を帯びるのだとか。

 流石に僕もこれに蘇られて戦うのは嫌だ。

 ゾンビなんてみたくない。

 というわけで、早速加護の力を使い、炎竜の遺体を焼いた。

 骨になるまで、念入りに。

 パチパチと燃える彼の遺体を見て、僕は思った。

「やっぱり、死ぬときはこうがいいよな……」

「はい? ああ、まあそうですね。安らかに死ねるといいです」

「うん」

 やっぱり、帝国の最後の王室のような最期は、到底許されるべきではないし、シロナに至ってはとばっちりだっただろう。

 あれを許してはいけなかったのだ。

 そんな思いが、ふと僕の頭をよぎった。

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