炎竜、対面。
「ん? 固まってしまって、どうした?」
再び口を開いた炎竜は、こう言った。
いや、僕が動けないの、あんたの威圧感のせいなんですが……。
「おお、すまん。あまり威圧的に接するつもりはなかったんじゃ」
「本当でしょうね……」
死ぬかと思ったよ……。
ともあれ、炎竜は威圧感を消してくれたので、僕は動けるようになった。
案外、やさしいようだ。
まあ、僕少し前に食われたわけだけど。
「む? おぬし、におうな」
「あ、そうだそうだ。一回焼き消してもらえます? 戻りますんで」
そうだ。もう鼻が慣れてきていたが、僕はこの竜のトイレから出てきたわけで、とても不潔な感じだったはずだ。精霊たちにもそう言われたし。
「戻ってくる?」
「はい。不死鳥の加護っていうの持ってるんですよね。だから、焼き殺されても、跡形もなくなっても、復活できるっていうわけです。てなわけで、パパっと、お願いします」
「ここはわしの家じゃからな。外に一度出ろ。その加護なら、翼もついとるじゃろう?」
確かに、自宅に火をつけるような奴はいないか。
僕は、一度炎翼を広げると、飛び上がった。
「外っていうのは?」
「すぐそこじゃ。どうせわしが焼くんじゃったら、案内してやる。ついてこい」
そういうと、炎竜は振り返り、進んでいく。
ついていくと、本当に近く、数十メートル進んだところがもう外だった。
竜の巨体で見えなかっただけで、本来見えていたはずだ。
それにしても、よくこんな穴見つけたな、この竜。
「よく見つけましたねえ、こんな大きな穴」
「わしが自分で見つけたわけじゃないからな。数代前から、ここに住んどる。人間が作ったと聞くぞ?」
「そうなんですか」
違ったらしい。
いや、こんな大きな穴を掘ったっていう人もすごいんだけどね。
どうも、竜はそこまで万能というわけでもないらしい。
「で、焼いてほしいんじゃったか?」
そうだそうだ。
焼いてもらいに外に出てきたんだった。
ちゃんと考えると、僕かなり頭おかしいこと言ってるな。
「早速お願いします」
「ほんとに一瞬じゃからな? 驚くなよ?」
「戻るのも一瞬ですよ。驚かないでくださいね?」
「知っとるよ。先代の不死鳥に会ったことがある。あの時はまだわしも若かったがな」
確かに、三年のうちに見た加護の記憶の中には、竜と一緒に戦っているのもあった。それがこの炎竜だったということだろう。
適当に相槌を打つ。
「へぇ、そうなんですか」
言い終わるか終わらないかのうちに、だった。
僕の視界は、炎に覆い隠されていた。
次の瞬間に、肉体は蒸発。
そして、その次の瞬間には、もう戻っていた。
「ほう、これは驚いた。わしがあった先代より、再生が速いな」
「先代より弱いから、しょっちゅう死にましたからね。あなたにもかなり溶かされたし」
「ああ、おぬし、あの街におったのか」
気づいてなかったんだ。
まあ、そりゃそうか。
「ああ、それと、敬語はいらんぞ。普通にしゃべってくれ。わしは、敬われるような存在じゃあない。竜種の根絶すら望む変わり者じゃ」
「なんか理由があるんですよね?」
「まあ、あるにはあるが、大したあものじゃない。そもそも、竜種の根絶には賛成じゃが、わしは、竜の加護の根絶は望んでおらんのだから」
「加護、ですか」
加護って、根絶するんだ。
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