捜索、救助、三度目の死!?
瓦礫の山の中へはいった。
「慎重に進まないとまた死ぬからな~」
慎重に、這って進む。
這うのは穴のサイズ的な問題だ。
人一人が這ってとおれるくらいのサイズの穴なのだが、当然、なかにはいれば酸素は薄れるし、僕の体で光も減る。
「ん~、何もいない感じかな?」
不死鳥の加護ということで、鳥の特徴的に、暗いと何も見えなくなるかとも思ったけれど、そんなこともないみたいで、人並みには見える。
「暗いなあ。そうだ」
先ほど拾った小さなナイフで、目の下辺りを刺す。
「っつ~、さすがに痛いな」
思わず目を閉じてしまいそうだが、回復のお陰で痛みは和らいでいく。
勿論、痛みが欲しくて刺した訳じゃない。
別に僕はマゾというわけではないのだ。
痛みを快感には変えられない。
刺したのは、明かりの確保のためだ。
この加護は、特性上、治る際に患部が燃える。
お陰で見えるかもと思ったが、よく考えたら、照らすべきなのは奥なので、目元を燃やす必要はなかった。
一旦、回復を待ち、再度、今度は左手の指を切る。
切り落とすのではなく、切り裂いた。治るのに時間はかからなかったが、逆に光も一瞬だった。
「はあ、やっぱ痛くしなきゃダメかあ」
ナイフを左手に刺す。
痛みを伴うが、刺しっぱなしにしておけば、恒久的に光を得られるだろう。
「よし。いや、痛いな。これで何もなかったらとても悲しいな」
先へと進んでいく。
暫く進むと、行き止まりだった。
「うわぁ、マジですか」
だが、悔やんでいても仕方がない。
引き返すことにして、後ろ向きに進む。体を入れ替えるほどの隙間はない。
と、足がなにかに当たった。
と思った瞬間、崩れる音と共に、なにかが僕の足を押す。
よく考えてみるべきだった。
生き返れるとはいえ、生き埋めになったら繰り返しだ。
これはまずい。
だんだんと僕を押し込む力が強くなっている。
いっそ力を抜いて落ちていく方が楽だろうか。
やってみよう。
先ほどの行き止まりまで来た。
その行き止まりで、僕は止められ、後から来る瓦礫達に押し潰される。
「い、痛、があああああああああああああああああああああああああ!」
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
ゲシュタルト崩壊しそうなくらいに、痛いという言葉が、単語が、漢字が僕の頭を駆け巡る。
おそらく全身の骨がおれた。
内蔵もひどいことになっているだろう。
それでも、回復力があるせいで、治っては壊れ治っては壊れし、死ぬことすらできない。
いや、実は何度か死んでいるかもしれない。
一瞬記憶が飛んでは戻りを繰り返している。
意識も飛んだり戻ったりしている。
うん。これ死んでるわ。複数回。
押し潰されていくなか、背後の壁がびきびきと音をたてていた。
ん? あれ、どういうことだ?
まさか、この先に空洞があるのか?
自分の体勢はよくわからないが、頭が外へ出た。
その先に何があるかは、暗すぎて見えない。
「くそ、見えない。誰かいないのか!?」
叫んだのと同時だった。壁が砕け、僕の体と瓦礫がいくつか放り出される。
落ちる感覚が少しあった後、地面に着く。
自分の体を燃やす炎で、周りが見えたが、意識が薄れていった。
次第に薄れていくその視界に写ったのは、焚き火の跡と、倒れた女の子だった。