敗北、喪失、悲嘆。
「ほらほら、どォした! まだまだいけんぞ!」
アーカーの攻撃が激しく僕を打つ。
近づくことすら出来ない。
攻撃はまだ僕にのみ集中しているけれど、シロナ達に向かえば、もはや止められる気はしない。
これほどまでに、力の差があったのか、だとすれば、
「三年前のは、全然全力じゃなかったってことかよ!」
僕は怒鳴る。
あの時はまだ、もう少し余裕があったように思う。
そして、この三年で少しは強くなっているはずだ。
もっと反応できていなければおかしい。
それなのに、僕の体は彼の追撃にされるがまま。
反撃なんて、夢のまた夢だ。
加護による回復のせいで、死ぬこともできない。
ただただ、攻撃を受け続けるだけ。
死に続ける。
ああ、なんて、僕は無力なんだ。
力なんてなかった。
守れるだけの力なんて、初めから持っていなかったし、今もない。
この三年間で、培った技術なんて、強大な力の前ではないのと同じようなもの。
大した技術を身に着けたわけでもないのに、僕ならできると思い込んでいた。
守れると、大丈夫だと。
あるいは、僕は思い込みたかっただけなのかもしれない。
自分の行為に、意味があったと。
強くなったと、何かを、守れるようになったと。
でも、今はっきりとわかってしまった。
少なくとも、今の僕では何も守れはしないと。
今の僕は、完全に無力だと。
不死鳥の力?
そんなものは、僕を苦しめるだけのものだ。
いっそ、加護なんか無いほうが、楽に僕の人生は幕を閉じていただろう。
苦しみは一瞬だっただろう。痛みを重ねることもなかっただろう。
つらい、苦しい、もう、嫌だ。
いや、待てよ烏丸黒人。
帝后様たちが、逃げおおせれば、僕の勝ちだ。
逃がすための時間を稼ぐだけでいい。
なんとか、できるはずだ。
この死なない体なら、時間稼ぎは得意なはずだ。
やれ。
動け。
止めろ。
時間を稼げ。
心を強く持て。
逃がすんだ。
なんとしてでも!
「まだわかんねェのかよォ。てめェじゃあ、俺様にはかなわないってなァ!」
視界の端で、アーカーの攻撃で爆ぜる三人を見た。
「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ‼‼‼‼‼‼‼‼‼‼」
僕は崩れ落ちた。
もう、ダメだ。
何ともならない。
終わりだ。
僕の、負けだ。
結局、僕は何者にもなれはしなかった。
何を守ることもできず、一矢報いることも、できはしなかった。
結局僕は、ダメなままだった。
異世界に来て、不死鳥の加護を得て、それでも、僕はダメなまま、弱いままだった。
足場が崩れ去り、僕は飲み込まれた。
瓦礫に飲み込まれる中で、僕は去っていく影を見て、暗転していく意識の中、声を聞いた。
「面白くもなかった。じゃァな、カラスマ=クロト」
意識は、暗転した。