発覚、理由、裏切り。
ウソ、だろ……。
邪魔をするように降ってきた。
明確な、殺意をその目に宿して、そいつは、来た。
「捕らえるんじゃなかったのかよ……」
「いや、元から殺す予定だ」
「なんでだ……?」
なんで僕たちが狙われる?
訳が分からない。
殺してしまえば、大きな問題に発展しかねない。
まあ、捕らえるだけでも十分問題だが。
ただ、だとして、僕にはわかる。わかってしまう。
彼が、僕らを殺す気だということが。
なぜか? 見ればわかる。
だが、確認のために聞く。
確認しなければならないから。
本音を言えば、確認したくはない。
でも、するしかないんだ。
「なあ」
「あァ?」
「お前、王はどうした? 答えろ。ホークド=アーカー!」
意味のない問いをしたと、自分でもわかった。
「殺したよ」
答えはわかりきっていたから。
「なんでだ。何のために、何の目的があって、殺し、また僕たちを殺そうとする……?」
それでも問わずにはいられない。
理由は、知りたかった。
でも、それを知ることで、認めてしまうのが怖くて、聞きたくなかった。
でも、聞くしかない。
それしか、今この瞬間を生き延びる方法を知らないから。
思いつかないから、問う。
今この瞬間を生きるためだけに、そして、今この瞬間、彼女たちを、生かすために。
「簡単なことだ。まず、最初に言ったよなァ? 俺様は、王が嫌いだってよォ」
「だから、なぜ今殺した? ここで殺す理由にはならないだろう!」
「話は最後まで聞け。クロト、てめェは遅すぎんだよ。ちまちましてて、時間もかかりすぎる。それに、俺様はさっさとあの王を殺したかったんだよ。お前の作戦を聞いた時は、正直に言ってふざけんなって思ったよ。でも、てめェしかいなかったからな、てめェに従うしかなかったよ。でも、今は違う」
「つまり、他の奴と組んだってことか?」
くそ、くそ、こいつは、僕が思っていたほど忠誠心があるわけでも、辛抱強いわけでも無かった。
こいつは、ずっと僕の味方じゃなかったんだ。
「そォだな。俺様は、今総務大臣の、ホワイトと組んでる」
「ホワイト、ホワイト=グルーだったか?」
「そう、そいつだ。王の職務執行能力が低いせいもあって、仕事が増えてるあいつだよ。可哀そうだよなァ。総務大臣って、基本的には帝国王補佐だから、仕事って少ないはずなんだよ。それなのに、そう思い込んだあの帝王のせいで、外務大臣と兼任させられてんだ。まあ、そのおかげで今回の作戦は遂行できるんだがなァ」
「なるほどね。この国とつながりがあるってこと?」
「さすがに頭の回りは早ぇなあ。そう、その通りだ。この国で、王室には全員消えてもらう。最初、帝后様が来なかったから不安だったが、あいつはうまくやったよォだなァ」
「で、殺してどうする? 国民の怒りは、和国に向くんじゃないか? そんな策を、この国が飲むとは思えないが」
「この国が帝国と戦争した回数は知ってるか?」
「いや、いちいち数えてない」
というか、戦争が起きるたびに、死者を出さないことに必死で、回数を数える暇なんてなかった。
「正確な回数は俺様も知らねェが、この国の行った戦争のうち、半分くらいは、帝国戦らしい。まァ、ここと隣接した国が二つしかねェんだから、当たり前かもしれねェが、考えてもみろよ」
「なるほど、帝国と協定を結べば、戦争の数は半減する。そうすれば」
「死者の数も減って、この国が少しは平和になるってわけだ。いやァ、ほんと、察しが良くて助かる。もっと殺しに躊躇がなければ、俺様の上につけたのになァ、惜しい奴だ」
「アーカー、君、死んだ経験って、ある?」
「いや、ねェな。俺様は知っての通り強いからよォ」
「だろうね。死んだことがないから、君は簡単に人が殺せるのさ。一度でも死んだことのある人間は、他人に死んでほしくないと思うだろうさ。あれは、すごく痛いし、つらいし、苦しい。僕はもう慣れてしまったけれど、普通、死ぬ感覚に、慣れることなんてできないんだ。わかるかい?」
「加護を持ってねェから」
「そう。だから、僕はあの痛みを、苦しみを、できる範囲で誰にも負わせたくはないんだ」
「知るか。他人が死のォが、俺様はどォでもいい。その痛みとかってのは、俺様は感じねェんだからな」
「うん。死んだことの無い奴に言ってもムダなのは承知してる。ただ、僕が人を殺すのを躊躇う理由は、知っておいてほしかったんだ。それだけだよ」
だから、
「今は、全力で君を止める」
「無理だな、てめェと俺様じゃあ、戦力に差がありすぎる。守ることすらできねェよ」
「やってみなくちゃ、わからないだろ!」
言いながら、僕はアーカーに飛び掛った。
「ヒヨ様たちは、逃げてください!」
叫びつつ、炎翼でアーカーの視界をふさぐ。
「はっ、面白れェ! 三年前の繰り返しになるだけだって、教えてやるよォ!」