発見、戦闘、発覚。
どういうことだ……?
さっきまで、人が結構いて、どう見てもありふれた日常風景だっただろう……?
何が、起きている……?
というか、まず、アーカーはどうした? なぜ、ここにいない。
まずい気がする。何か、重大な何かを見落としているような、そんな気が。
このまま逃げて大丈夫か?
アーカーは、どうする?
「いや、とりあえず、もう逃げると決めたんだ。アーカーにも、会えるはずだ。すぐに。あいつが負けることはない。逃げる」
「いいんだね?」
僕のつぶやきを聞き、ドークが確認をとる。
「行こう、時間がたつごとに見つかりやすくなる」
そう、こうしている間にもリスクは高まって……。
「残念、もう見つかっていますよ?」
声が、した。
そう、そうだ。街に誰もいない状態で、隅でごそごそ動いていたら、気づかれるにきまってる。
だから、今こうして先ほどの氷使いが僕らを見ていることも、想定できたはずだった。
でも、過去を悔やむのは後でいい。
今は、少なくとも後悔してる場合じゃない。
「逃げるぞ! ドークがこいつを、イグールは、もう一人のほうを!」
氷の奴と、僕たちから見て反対側にいたおっちゃん、つまりはブラウンを指さしながら、僕は指示を出す。
「氷使いと、黄色と緑の魔力を使うやつだ! 頼んだ!」
「待った、ボクたちが戦いに出れば、君たちはどこから逃げる? 両側がふさがれるぞ?」
「大丈夫、道ならある」
僕は頭上を指さしながら言う。
「なるほど、君は」
「うん。屋根を使う」
先ほど飛んだ時に確認できたが、幸いにも上は平らだった。
ここを使えば、逃走は可能だ。
「行くよ!」
僕のその声を合図に、全員が動いた。
イグールは屋根に上れるよう、足場を作り、ドークは剣を抜き氷を操る男に切りかかった。
「帝国軍、第三席、ドーク=スナーク、参る!」
「そちらが名乗るのであれば、こちらも名乗らなければ、無礼というものでしょう。和国連合軍、第一席、ヒューズ=アイス、参りましょう」
それらの声を、走りながら聞く。
帝后様たちを前に置き、もし誰かが正面に現れても、守れるように炎翼を展開しておく。
「急ぎましょう! これは確実に目立ちます! いつ別動隊が来てもおかしくない!」
「ちゃんと走ってる!」
「つらくなったら行ってくださいよ! 抱えて飛びます」
ただし、三人を同時に抱えることはできない。やはり、人手が足りないか。
と、僕らの出発を見届けたようで、ようやく後ろからこんな声が聞こえてきた。
「さて、こっちもそろそろ始めますか~」
「俺としては、とりあえず彼らを止めたいんだがなぁ……」
「こっちの仕事はあんたを止めることなんでね。何か言い残すことは?」
「生意気なこと言いやがる。いいか、坊主」
「何です?」
「簡単に勝てるとは思うなよ?」
「困難だけど勝てるってことね」
「減らず口を」
「遺言はそれでいいのか?」
「死ぬ気はない!」
その声とともに後方から爆発音がした。
「始まったか」
ここからは、時間との勝負だ。
「誰にも追いつかれないうちに、逃げ切る!」
僕がそう叫ぶのと同時だっただろうか。
「やってみろよ」
声が空から降った。