迷走、連絡、合流。
さて、どっちに向かう?
いや、その前に、だ。
「まずは、アーカーに合流の断念を連絡しないと」
ほうれんそうはしっかりしないと。
後から困ることになりかねない。
『アーカー、アーカー』
『聞こえてる。てめェ、どこにいる? 外に出てみりゃァ、あちこちぶっ壊れてやがるし、誰もいねェしで、手が止まってたとこだ』
『誰もいない?』
『あァ、怪我人っぽいのはちらほら見かけるが、ちからァ持ってそうなのはいねェ』
ということは、もう彼らはこちらに向かっている。
「少し奥に入るよ。ここはまだ危ないかもしれない」
そう言いつつ、僕は少女二人を大通りから見えないところまで連れていく。
「ふふ、人目につかないところに連れていって、どうするつもりです?」
「うるさいなあ、僕もちょっと思いましたよ……。どうせ何かをする勇気も度胸もないですって」
「あってくれた方が私的には嬉しいのだけれどね」
「んなことしたら即刻首ちょんぱですよ」
「それでも死なないけれどね」
「まあ、そうですけど」
僕とヒヨ様がそんなしょうもない会話をしていると、シロナが言う。
「そんなことより、これからどうするんです?」
「……」
少し間を置き、僕は言う。
「この国を出たい。ただ、戦力が足りない。まずは、今度こそアーカーと合流する」
「わかりました。しばらくこの人目につかない暗がりで待機ですね」
「もう反応しないからね?」
『おい、そっちは大丈夫か? さっきから返事がねェが』
『すまない。少し移動していた。こっちは君がいないと大変そうだ。来てもらえるかい?』
『あァ。元からそのつもりだ。場所を言え』
『中央の通りに出て、議場と正門の間くらいの辺りについたら、教えてくれ。数分毎に連絡を入れる』
『わかった。そこへ向かう』
その返事を聞いて連絡を切った。
「よし。しばらく待機だ。少し外の様子を見て来ます。もしも誰かに見つかったりしたら声をあげて下さい」
そう言い残して、僕はその場を離れた。
慎重に歩き、外の様子を窺う。
そっと外に顔を出したときだった。
「あれ? 総司令?」
「なんでここにいる?」
そこには、ここにいるはずの無いやつがいた。
こいつは、中々に馴れ馴れしい、僕の部下だ。
名前はイグール。
数人しかいない後輩でもある。
僕の総司令就任以来、誰も死なないので、ほとんど人員を募集していなかったのだが、彼は自ら志願してきたやつで、新人ながらその実力から、第四席である。
「いやー、なんか、帝后様が行きたいって言うから、護衛として?」
「へぇ、それで、その帝后様は?」
一緒にいないよな? という意思を込めて言ったのだが、
「向こうでドーク様に守られてますよ」
そう、こいつ、僕以外の先輩はみんな「様」とか「さん」とかつけて呼ぶんだよな。
まあ、そんなことはいいや。
「え、ドークも来てるの? それ、うちの国やばくない?」
そう、ドークもこの国にいるということは、帝国軍の上位層四人が帝国にいないということだ。
まあ、僕は戦力外としても、彼らがいなければ、帝国軍の戦力は四分の一ほどになってしまう。
これ、国防出来ないだろ……。
いや、今はそれよりも、
「とりあえず、二人を連れてきてくれ。今、この国に顔の割れた帝国人がいるのはまずい」
「え、何かあったんすか?」
「いいからさっさと呼んでこい。静かに。話はその後でするから」
「え~、はいはい。わかりましたよ。了解了解っと」
さっさとしてほしい。
見つかるリスクは上がりまくるんだから。
「で、なんのお話です?」
帝后様が、到着後すぐに僕に尋ねてきた。
「それは少し待ってください。今危険なことになってまして……。ちょっと奥へ入りますよ」
こうして、僕は彼女らをヒヨ様の元へ案内した。
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