そして異世界へ。え、落ちるの⁉
落ちる。ひたすら落ちていく。
ただただ落下する。
このまま死んで終わるんだろう。
いや、もしかすると異世界転生とか……。
馬鹿か僕は、そんなことは起きない。
いい加減気づけ。
この世界に大した救いなんてない。
そう思いながら、僕は目を閉じた。
目を開くと、僕は広い空間にいた。
「? 落下中じゃなかったっけ?」
周りを見回す。
ぐるりた視線を一周させ、正面に戻すと、女の人がいた。
「命を粗末にするでない」
「はあ、あなたは?」
「人に名を聞くときはまず自分から名乗るのが礼儀じゃろう、烏丸黒人よ」
いや、知ってんのかよ。
僕は、少しイラっとしたので、こう言ってやった。
「いえ、知っているのなら言う必要はないかと思って」
「ふむ、それもそうじゃな。私は神じゃからな。大抵のことは知っておる」
「神?」
そう言われれば、何とか理解できなくもないが、この状況がよくわからないな。
「教えてやろう。おぬし、投身自殺をしたじゃろう」
「ああ、まあ」
「確か、世界がつまらないとかいう理由だったはずだな」
「そうですね」
一応敬って、敬語を使っておこう。
何せ神だし。自称だけれど。
「であれば別の世界に送ってやろう。おぬしが望んでいた、異世界に」
「そうですか、どうも」
言ってから思う。
え? 異世界? 何言ってんの? この人、頭大丈夫かよ。
いや、でも、神様とかいるなら、そういうのもあるか。
なんにせよ、異世界に行けるなら願ったり叶ったりだ。
さらに自称神様は言った。
「ついでに、私の加護をくれてやろう」
「それは嬉しい。不死鳥さんの加護を、僕なんかに」
「? なぜわかった? 言っていないはずだが」
「いや、見ればわかりますよ。その玉座みたいなやつ、不死鳥様専用とか書いてあるし」
「え⁉」
驚いた様子で、上を見る。
「ほんとだ、いつの間に……」
「はは、まあ、よろしくお願いしますよ」
「んん……まあ、いいか。ではな、坊主」
そう彼女が言いつつ手を水平振ると、僕の体は光に包まれた。
「坊主って……。まあ、あなたはかなりのお年でしょうしね」
その発言が気に障ったようだ。
「っ、落ちろ。死なんのだし別にいいだろ」
え?
僕のその思いは、声になるころには、僕の体は空に放り出されていた。
「さっきより高いよね、これ⁉」
雲よりも高い。
落ちる。
落下する。
雲の中へ、
「う、苦し……。ってか、寒っ!」
まあ、空の上なのだから、当然と言えば当然なのだが。
そして雲を抜ける。
さらに落ちる。
落下する。
ようやく地面が見える。
「って、下、町あるじゃん」
神様雑だな。
何とか軌道を変えようと体をひねる。
そんなことをしつつも、
落ちる。
落下する。
ある程度の高度からは、空気抵抗と重力加速度が一致して落下速度は変わらなくなるって聞いたけれど、まさか体感するときが来るとは。
と、どうやら街には落ちずに済みそうだ。
ただ、さっきから空気との摩擦で燃え落ちたり破れたりして、服はもう残ってない。皮膚とかは焼けて消えるたびに修復されていくようだけど、服はどうなるんだこれ。
考えているうちに、状況が教えてくれた。
和服のような装束が生まれて体にまとわれていく。
「なんか派手な色だな」
その服は、朱色を基調にしていたのだ。
そして、そういったことを考えている間に、地面にかなり近づいた。
落ちた。
地面に着いた。
読みやすくなるよう頑張ります!