対話、質問、告白。
「僕に戦い方を教えてくれないかな?」
そう僕がいうと、彼は、驚いたように言う。
「え、ボクに?」
「うん。君が一番強そうだからさ」
「いや、冗談でしょ、ボクは三席、もっと上がいるし、あなたもその一人だよ?」
「いや、さっきの勝負、思い返してみて欲しいんだけど、僕は一度も殴ったり蹴ったり、魔法を使ったりもしてないでしょ?」
「……、ん、ああ、そういえば」
「僕は加護に頼ってきたから、戦闘能力は別に高くないんだ。多対一になったら、たぶん勝てない。で、そういうわけで、……」
「ボクに頼みたいと」
「そう。第一席のアーカーは、基本的に魔法しか使わないみたいだし、君かなと思って」
「……、わかった。いいよ。じゃあ明日の朝、朝食前にここに集合で」
「了解」
「……、じゃね」
「うん。また明日」
よし、これでオーケー、なんとか強くなれそうだ。
翌朝。
「今日は僕が先か。教えてもらう立場だしな」
朝起きてすぐに出てきた。
僕の到着から数分で、彼はやってきた。
「あ、おはよう。待たせちゃった?」
「いや、全然。よろしく」
「うん。それじゃあまず、走ろうか」
「わかった」
僕らは思い思いに体操をすると、走り出した。
「けっこう体力あるね~」
「まあ、そうだね、たぶん加護の力だと思うけどね」
「そっか、たしか不死鳥の加護だったよね」
「うん。たぶん、基本的には恒常性の固まりみたいな力だと思う」
「なるほどね~。じゃあ、あんまり走り込んでも意味はないかもね。無限に体力があるようなものだろうし」
「ああ、そうかも」
「よし、じゃあ戻ろう!」
「ん、りょーかい」
戻ってくる途中で、ドークは別の道に入っていった。
「あれ、こっちじゃないよね?」
「いいからいいから」
心なしか少し浮かれているような……?
いや、気のせいだろう。
彼に連れられ進んでいくと、小さな広場に突き当たった。
「わぁ」
「すごいでしょ?」
「ああ、すごいよ、こんな……」
「へへ、ボクのとっておきの場所なんだ。いい眺めでしょ?」
「うん」
そこからは、帝国の帝都外が一望できた。
とてつもなく見晴らしがいい。
「ここなら人も来ないしね、さ、始めよっか」
「ああ、まずは……?」
「う~ん、拳を作ってみて」
「こう?」
そう言いつつ、僕は右手を握って差し出す。
「もっと強く握って。小指から握っていくんだ」
「こう?」
言われた通りにする。
「ん~、ちょっと力入りすぎかな、もっと抜いてみて」
そう言って彼は僕の腕をさわって揺さぶる。
少しずつ、腕から力が抜けていく。
ある程度まで抜けたところで、
「そうそう、こんな感じ!」
これでいいらしい。
よし、これで拳の握り方はできた。次は振り方かな?
「よ~し、それじゃあ、それを振ってみて」
「こう?」
振ってみる。
「もっと腰入れて、全身で振るんだ」
なるほど、やってみよう。
「じゃあ、こう?」
「そんな感じだね、もっと、体重をのせる感じで振ると、一撃の力は増すよ」
「あれ、でも、のせすぎると、体勢が崩れるよね」
「うん。だから、普段は今くらいでいいよ。止めの一撃ってときには、魔力も込めて、全力でね」
「魔力……?」
「え、魔力も知らないの?」
「うん。使ったことないんだよね……」
「そっかぁ……、どうしよ、魔力が使えないのはけっこう辛いからなぁ」
「そうなの?」
「うん。たとえ弱くても、魔力が使えるのと使えないのとだと、動きにさが出てきちゃうんだ」
「そっか、そういうものか……」
「よし、それなら一度戻ろう。朝ごはんももう近いし、戻れば魔力測れるしね」
「そうなんだ、じゃあ」
「うん。帰ろう!」