念話、呼出、対話。
「勝者、カラスマ=クロト! これをもって……」
その勝ち名乗りを受けながら、僕は周囲を見渡す。
観客たちは、騒然としている。
第二席が入れ替わったのだから当然だが、何やら落ち着かない。
耳をすましてみると、
「てか、あいつは誰だ?」「知らねーよ。俺が聞きたいくらいだ」「あれじゃねーか? あの、第一席が連れてきたって言う……」「あー、そいつか!」「聞いてたよりヒョロいな!」「なんであんなのに負けたんだろな?」「さあ?」「相性だよ、切っても意味ねーんだから勝てる訳ねーって」「んだよ、相性の問題かよ」「なら大したことねーのかもな」
その声を聞き、僕は翼を広げて浮かび上がった。
「お、おい……」「飛んだぞ……」「うわ……、飛んでる……」「そりゃ飛べるだろ……」
ちょっと待った、うわってなに!? 飛んじゃダメ⁉
まあいい。
僕は深く息を吸い、口を開いた。
「僕に勝てると思うものはいつでもかかってきてくれて構わない! 僕に勝てたら、第二席の座はすぐさま君のものだ!」
僕の発したその言葉で、会場はさらに騒然とする。
「いいのかよ、あれ……」「へっ、おもしれーじゃねーか」「自信満々だなぁ……」「後悔すんなよ……?」
そんな声が聞こえてくる。
ここで、さらに僕は言った。
「ただし! 相性次第で勝てると思っているのなら甘い! 一つ教えておいてあげると、僕に勝つことは容易じゃないよ? 例えばそうだね……。アーカー! 僕を爆破してみて!」
「あァ!?」
不満そうな声をあげつつも、アーカーは僕に巨大な火球を撃ち込んできた。
空中にいた僕は、何を巻き込むこともなく、爆破された。
「お、おいおい、行きなり死んじまったぞ……?」「大丈夫なのかよ……」「いや、あんな自信げだったんだ。死んでるわけねーだろ」「そうか……?」「お、おい、あれ!」
ざわめきのなか、僕は再び中央に降り立った。
「僕は死なないんだ! 君達、死なない人間に勝てるかな? はは、まあ、気軽に話しかけてね! 以上! 自己紹介でした!」
そんな風に、僕は言葉を締めた。
「はっは! そういうことだ。皆、よろしく頼むぞ!」
王も笑いながら言う。
去り際、僕はドークに念話を送った。
『話があるんだ。後で僕の部屋にでも来てくれるかな?』
「?」
『ああ、驚かせたかな? これは僕の加護の力の一つさ。そっちも口に出さずに念じれば話せる』
『こ、こうかな……?』
『うん。できてる。それで、さっきのの返事は?』
『ああ、君と話すのはボクはいいよ。ただ、君の部屋の場所はわからないから、……』
『なら、城の正門付近にでも来てくれればいい』
『わかった。夜だね?』
『うん』
夜。
そういえば、時間を正確には決めてなかったけど、大丈夫かな?
そんな風に思いながらそこへ行くと、すでに彼はそこにいた。
「ごめんごめん、待ったかい?」
「はい、五分ほど」
「それは悪かったね、何が一番悪いって、呼び出しておいて時間を指定しなかったとこかな。下手すればもっと待たせていたかもしれないし」
「いえ、問題ないですよ。階級が今はボクの方が下ですし」
「ああ、階級とかは気にしないでほしいな。君の方が先輩でしょ」
「であれば直します。早く本題に入ってほしいんだけど。これでいい?」
「うん。ああ、じゃあ、本題に入ろう。あ、その前に少し離れない?」
「え、うん。いいよ」
少し離れた茂みに移動すると、少し間をおいて、僕は言った。
「……、僕に戦い方を教えてくれないかな?」