勝負、招誤、勝利。
「帝国、第二席、『竜切り』ドーク=スナーク」
「称号なし、烏丸黒人」
「いざ」
僕の相手、ドーク=スナークがそう言うと、場に静寂が訪れた。
その静寂を破り、上の方の特別製の観覧席から眺める王が言う。
「始めぇ!」
先に動いたのは、ドークだった。
というより、僕はこの勝負、できれば動きたくはない。
少しでも動けば、僕が弱いことがばれてしまう気がするから。
だから、僕は動かず、ただ胸を張って、彼の騎士剣が僕に届くのを待った。
「!?」
微動だにしない僕を見て、少し驚いたようだが、その剣先はぶれることなく僕を目掛けて襲いかかる。
剣が僕を通りすぎ、切られたことに気づいた。
そして、気づいた頃には二撃目、それに気づく頃には三撃目が、僕を襲っていた。
だが、僕は倒れない。
痛みなら嫌というほど感じた。
もはや慣れてしまった。
どれだけ剣で切られようと、痛みは感じれども、それが苦しくはない。
それがどこか辛いような、なんとも言えない気持ちになる。
おっと、そんなことを考えている場合ではなかった。
今も切られている。切られ続けている。
「どうしたの? なんだか焦っているようだけれど? そろそろ本気でかかってきてくれてもいいんだよ?」
そう言いつつ、僕は深く息をついて見せる。
まるで効いていないというように。
見せつける。
それを見て、ドークは声を荒げた。
「っ、な、めるなぁ!」
そう言って振るう彼の剣から、毒のようなものが溢れ出す。
それは徐々に剣に纏わり着いていく。
毒竜の加護。
その力だろう。
それについてはアーカーに聞いている。
驚きはしない。
問題は、この体が、毒にどう反応するか……。
「はっ!」
そんな掛け声と共に、彼は、毒を纏った剣で僕を叩き切った。
左肩から斜めに切られた。
どこを切られたのか分かったときには、すでに傷は塞がっていた。
「残念だったね。毒も剣も効かないみたいだね。ふふ、そろそろ反撃させてもらうよ?」
そう言って、僕は右手を突き出す。
手のひらを正面に向け、まるでそこから何かが出るかのように。
右手をただ、突き出す。
「くっ!」
それに反応し、彼は上体を反らした。
それによって、体勢が崩れた。
向こうで、授業で柔道をやったことがある。
技はなに一つ憶わらなかったが、一つ学んだことがある。
それは、相手の重心を崩せば、勝手にそいつは倒れるということ。
僕は、体勢の崩れたドークの足を払った。
彼は倒れた。
「がっ!」
僕は、追い打ちをかけるように手を振るおうとする。
当然だが、なにもできないが。
しかし、周りは何かが起きると思う。
故に、
「勝負あった!」
王が言った。
「勝者、カラスマ=クロト! これをもって、彼を、帝国軍第二席兼帝国軍総指揮とする!」
よし、これで計画通りだ。
戦闘シーンは書き慣れてないので、感想やアドバイスなどもらえるとありがたいです。