勝負前夜、迷子来襲、王女帰還。
明日か……。
とりあえず、ベッドのある部屋に案内されたので、ベッドに座りつつ考える。
さて、どうしようか。
どうすれば、存在感を見せつけられ、かつ信頼を得られる?
そもそも、二席と戦うとは思っていなかった。
聞いた話では、毒を使うとか、竜を切ったとかいう話だ。
単純に怖い。
どうしよう。
考えていると、部屋の扉が開いた。
そちらに目を向けると、入ってきた幼女と目が合う。
「……」
「……」
絶句だった。
お互いに一言も話すことなく、じっと見つめあっていた。
「えと、君は……?」
僕がそう尋ねるのと同時くらいに、幼女のほうも口を開いた。
「あなたはどなたです? ここは私の部屋では?」
「え? 僕はここに通されたんだけど……」
「おや、本当ですね。ここは私の部屋の四分の一程度の大きさではありませんか。どうやら間違えたようですね」
この子の部屋広すぎないか!?
この部屋狭くはないぞ!?
だが、とりあえず言うことはそれじゃない気がする。
「え~と、迷子かな? ん~、僕は来たばかりでなにも知らないから、誰か呼んでこようか?」
「不尊ここに極まれりですね。先程から何故ため口なのです? 私はこれでも王女ですよ?」
「王女? この国の?」
「無知蒙昧の極みですか? はい。この国のですよ? まさか、本当に知らないのですか?」
「ああ、うん。いや、はいか……?」
「ある程度の知能はあるようですね。今日から来た、ということは、お客さんですか?」
「いえ、僕は兵士になる予定ですかね……」
「そうですか。頑張って下さい。よろしくお願いしますよ」
「ええ、任せてください」
「ふふ、頼もしいですね。ところでここは何階ですか? 部屋の位置はあっている筈なので、階数が違うと思うんですが……」
「やっぱり迷子じゃないですか。確か、ここは三階ですよ。お連れしましょうか?」
「いえ、けっこうです。問題ありません。ああ、そういえば、名前を聞いていませんでしたね。私は、ヒヨといいます」
「僕は、クロトですね。これからもお見知りおきを」
「活躍次第でしょうね。励んでください」
「ええ。勿論です」
「では、おやすみなさい」
「ええ、お気をつけて。おやすみなさい」
こうして、彼女は帰っていった。
「……、そうか、勘違いを誘えば……」
彼女の来襲で、僕はひとつのアイデアを思いついた。
それを、記憶に残し、僕は寝た。
おやすみなさい。また明日。
じゃね。
「って、ちが~う!」
すぐに飛び起きた。
勘違いを誘う?
どうやって? 何を勘違いさせる?
そこだけでも考えて望まないと、絶対に失敗する。
考えろ、考えるんだ。考えろ……。
「よし、これでいこう」
僕は、一つの結論を導き出した。
これでバッチリ。
いや、無謀かも……。
でも、これでいくしかない。