提案、ダメ出し、承諾。
「殺す?」
「ああ。俺様は強ェ。帝王は殺すことなんざ造作もねェよ。言ったろォが。この国の軍事力は半分俺様が占めてるって」
「ああ、それは聞いたが、ならそもそも僕は必要ないんじゃないのか? 案も君が作ってあるんだろう?」
「その案でてめェがいるんだよ」
「まずはその話から聞こうか。っていうか、そういえば、この会話聞かれてない? もしそうならもう終わりだけど……」
「問題ねェよ。ここの扉はめちゃくちゃ分厚い。聞こえねぇさ。現にてめェも外の会話なんて聞こえなかったろォが」
「ああ、たしかにそうか……」
苛立ったように、アーカーが息をついたので、僕は手で先を促した。
「俺様の案はこうだ。まず、お前が外に出る。俺様が帝王を殺す。そして、新しい帝王にお前がなる。なんで俺様が一番上にならないのかっつーと、帝王になっちまうと俺様が自分で動けねぇからだ。お前には、帝国の王として、俺様に指示を出してもらう」
その話を聞いて、少し考え、僕は言う。
「ダメだな」
「あァ?」
不満そうにアーカーは言う。
「そもそも、僕はどうやってここを出る? まあこれはいいとしても、君が帝王を殺したとして、どうして僕が次代の王になれる? いいかい。そういう立場になるには信用が必要だ。国をまとめるような立場となればなおさら。それが今の僕にあると思うかい? ただ捕らえられてきただけの得体の知れない輩だよ?」
僕のダメ出しが終わると、アーカーはすこし考えて言った。
「……、そう、か。じゃァいい。悪かった、この話は無かったことに……」
そう言って出ていこうとする彼に、僕は声をかけた。
「いや、そもそも、僕の下に着きたいと言っていただろう? なんで君が作戦まで考えようとしている?」
その言葉を聞くと、彼は足を止めた。
振り向いて彼は言う。
「そォいやそォだな。いや、ちょっと待て。てことはお前……?」
疑問符を浮かべる彼に、僕は答える。
「ああ。君の上につこう。全部僕に任せてくれていい。僕が頭を使おう。幸い時間はたくさんある」
「そォか! わかった。じゃァな」
そう言って今度こそ出ていこうとしたところで、再び彼は振り返った。
「あァ、そォいや、てめェ飯はいいのか?」
「必要ないよ。加護のお陰だろうけど、僕の体は食事を必要としていない」
「そォか。ならいい。あァ、もう一つ。次はいつ来ればいい?」
「もうここに来る必要はないよ。次に会うのは、僕がここから出されて帝王と話すときだ。君の話だと、帝王自ら僕と話すんだろう?」
「そうだな。てめェは特別だからな」
「なら、その時に君も護衛としてその場にいるだろう。その時に何とかして伝える。それまで待っていてくれ」
「わかった。今度こそだ。またな」
そう言って彼は扉を開き出ていった。
鍵の閉まる音は聞こえなかったが、おそらく外で完結している鍵なのだろう。
さて、この国を出ると共にアーカーを従える策を考えるとしよう。