回収、収用、勧誘。
新章開始です。
その攻撃で、僕の体は足の踝以下だけ残して消え去った。
その後、再生し始めた体を持って、襲撃者は歩いていった。
「ちィ、ガキ一人とおっさんがいねェ。まあいいか。最重要なモンは捕らえた」
その言葉で、僕はあの二人が助かったことを知った。
確かに、その二人の死体はなかった。
どうやら、彼らだけは逃げられたようだった。
よかった。
僕の全肉体が復活したと同時に、僕は意識を刈り取られた。
やはり、彼は化け物並みの強さだった。
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気がつくと、僕は牢の中にいた。
四方が壁に囲まれているが、どうやらあちこちに小さな穴が開いているのか、酸素も微量の光もある。
どうやら、頭部を切り取ってそとに出して脱出するなんていう手段が使えないようにするために大きな穴を作っていないようだ。
この方法、思い付いた時はやる気はなかったけれど、まさか封じてくるとは。
怖すぎてやるやつなんていないだろうに。
やることもないので、しばらくぼ~っとしていた。
どのくらいそうしていただろうか。
牢が開いた。
正面に扉があったようだ。
「よォ。元気かァ?」
そう言いながら入ってきたのは、先ほどの襲撃者だった。
「俺様はアーカー、ホークド=アーカーだ。よろしくな」
「何の用? そもそもここは?」
「質問ばっかかよ。まずは名乗れ。そうすりゃ答えてやるよ」
「烏丸黒人」
「カラスマクロトか。何処で切れてんだ?」
「烏丸が姓名。黒人が名前だよ」
「そォか。ならクロトって呼ぶ。お前もアーカーでいい」
「わかった。アーカー、ここはどこだ?」
「急かすな。答えてやるからよ」
そう言って、彼は続けた。
「まず、ここは帝国の地下牢。穴がないこの牢は最下層の四つのうちの一つだ」
「最下層?」
「ああ、帝国の城の地下には三層の地下室がある。一層は国の中から排出された犯罪者と反逆者。二層は国外から来た犯罪者と反逆者。そしてこの三層は、重要なやつと危険なやつだ。ここだけはかなり堅牢に作られてる。逃げようとは思わない方がいい」
「ふ~ん。それで君の用は?」
「さっき言ったことと矛盾するんだが、……、ここを出てもらう」
「出られないんじゃないのか?」
「大丈夫だ。計画はある。ただし、俺様の案に同意があってからだ」
「案っていうのは?」
「俺様の上につけ。てめェなら適任だ」
「どういうことだ?」
「俺様の上についたやつはよォ、みんな死んじまうんだよな。どォやら、俺様の攻撃に巻き込まれて、耐えきれないらしい」
「待った。そもそも、僕を連れてきたのはなにか指令があったんじゃないのか? だとしたら、お前にはまだ上官がいるってことだろう?」
「ああ、今の俺の上官は帝国の頂点。帝王だ。で、こないだの爆発で、その原因を探れってことで俺様はあそこに行った」
「なら、そもそも僕は何かされるんじゃないのか?」
「たぶん、うちの軍に入れと言われるだろォな。うちの武力は半分くらい俺様頼りだ」
「なら、そもそも出られるんじゃないのか?」
「そォだな。ただし、まともな環境が与えられるとは思えねェ。何しろ、お前は半分捕虜みてェなもんだしな」
「なるほど。その状態じゃあ、君の望む方向には進まないっていうことだね?」
「そォだ。飲み込みが早いなますますてめェの下に着きたくなってきた」
「でも、さっきも言ったけど、今君には上官がいるんじゃないの? なんで僕を求める?」
「それは、……」
彼は言うかどうかを迷ったようだった。
だがすぐに口を開いた。
「あの王は俺様が殺すからだ」
お互いにお前とかてめえとかしかでしか相手を呼ばない……。