LOVE YOUR SONG -恋の足音-
「美亜ぁ、またやってるよぉ?裕也。」
「玲…。ご報告ありがとう。」
「美亜…めっちゃ顔怒ってますケド…」
裕也を帰すのがあたしの仕事。
裕也のお母さん直々に頼まれちゃったんだもん…。
断れるはずがナイ。
「裕也!もう5時!!帰んなきゃあたしが怒られるのよ!!」
「あー、美亜さんきゅっ!」
裕也はあたしの小さい頃からの幼馴染。
サッカーバカでサッカーしてると時間も忘れるとかなんだか。
「今日も汗ひどいね…」
「夢中になっちって★」
夢中…かぁ…
「そういえば裕也ってもう初恋した?」
「はぁっ?!」
いきなり声を上げると顔が赤く染まっていく。
え?変な事言った?
「あたしまだ…恋とか夢中になれないって言うか…だから裕也はどうなのかなって。」
裕也のそーいう話聞いたことないし。
「いきなりいつも聞かない事言うからさ…」
「そう?で、答えは?」
「……俺もまだわかんねぇ」
なんだ。
裕也もまだあたしと同じなんだ。
なんかほっとした。
なんだか一人だけどっかに行っちゃう気がして。
「まぁまぁ美亜ちゃん、いつもどーも。」
「あっ、どもっ!じゃあ今日はこれで…また明日ね、裕也」
「おー」
一人って、寂しいもん。
そんなの、昔から知ってる…。
「裕也先輩っー!これレモン水っ!よかったら飲んで?」
「おー、さんきゅ。」
林 未央って言う新しいマネージャー。
あたしは別にマネージャーでも何でもないけど、なんか裕也にくっつきすぎ。
「未央ちゃん、転んじゃったから手当てしt…」
「じゃーバンソコでも貼っておけばー?」
態度があからさまだ。
裕也がなれてくるのも、あの女が裕也のあたししか知らないことまで知られるのは、嫌。
なんだろう?この感情。
もやもやして、胸がイライラしてくる。
「それは嫉妬よ、嫉妬!!」
しっと?
あたしにとって聞きなれない言葉。
たしかヤキモチって意味だよね?
嫉妬!?
…そうなのかな?
この気持ちが指す意味は…。
「あ、もう5時だ…裕也迎えにいかないと…」
「ん。行ってらっしゃーい」
嫉妬…ヤキモチってことは…
あたし裕也が好きなのかな?
きっとそうだ。
初恋…なんだよな。これ。
「近郷…美亜先輩ですよね?」
聞きなれたこのイラつく声は…
「林…未央ちゃん?」
嫌な予感。
「今だけは敬語とか無視しますね。」
「…はぁ。」
「少し一緒にいたからって…
『特別』って許せないんです!!アタシが…裕也先輩を幸せに出来ます!!」
きっとこの子も大切なんだろうな。
その恋を。
でも…ね。
「あたしに言ってもあんたの恋に変化はないよ?裕也に言ったらどう?」
「…ッ」
パタパタパタ…
きっとあの子は告白するかもしれない。
あたしが引き立て役になるかもしれない。
それでも…
あたしは裕也が好き。
それだけなんだ。
あの子が裕也に追いつく前に…
窓!!
ちょうどグラウンドが見えるはず…!!
ガラッ…
「裕也ぁーーーー!!!!!」
「なーにー!!」
通じた…!
「…好ーきーなーのーー!!!!!」
「…はぁ!?!?!?!?」
これが、あたしの初恋だ。
「どーゆーことだよーー!!!」
笑みがこぼれるような幸せな初恋。
それがあたしの選んだ初恋なんだ。
一生に一度だけのあたしの初恋。