☆4話もしかして叶乃ちゃんも?
けたたましく鳴る目覚まし時計の音が私たち二人の目を覚ます。
私は眠たい中でも頑張って上体を起こしてとなりで同じように上体を起こした叶乃ちゃんを見る。そうだ、昨日の夜に私は叶乃ちゃんの部屋で一緒に寝るようにしたんだった。
私の脳内にふと昨晩の記憶が映像のようによみがえる。
私はベッドの近くに置いてあった私の白い星の髪飾りを手に取った。
そして叶乃ちゃんも同じようにその横に置いてあった黒い星の髪飾りを手に取り、二人そろって髪の同じ部分につける。
もしこの髪飾りがなければ私たちは本当に見分けがつかないのだろう。
ぼーっとしながらも髪飾りを付け終えた私たちは徐々に意識を取り戻し、下腹部のじめっとした感触を感じる。
だけどこれはいつものことで、私たちは二人でおむつの処理をする。
「ねぇ夢乃ちゃん。実は私、夢乃ちゃんの前で一人でおもらしする夢見たの」
おねしょをするときにおしっこが関係する夢を見ることは確かに多い。
そして、私は今日の叶乃ちゃんの夢に心当たりがあった。
「もしかしてエレベーターを降りた後におもらししちゃった?」
私は叶乃ちゃんの見た夢が私の見た夢と同じなのではないかと思い聞いてみた。
実は私は夢の中では、叶乃ちゃんのおもらしを見た後家に入り、トイレでおしっこをした後に叶乃ちゃんにおむつを付けてあげる夢を見た。
私がした叶乃ちゃんへの質問に叶乃ちゃんはこくりと頷いて返事をする。
やっぱり同じ夢を見ていた。
以前からもだったが、今日のように二人一緒のベッドで寝たときにはこんなことも多い。
私たちは同じ夢について話し合いながら、交互にお互いのおむつを外して、股を拭いてあげる。
若干聞こえる鳥の鳴き声と、キッチンから聞こえている何かが焼かれる音、そして二人のおしっこの臭いは、毎日変わらない日常的な朝の感覚だ。
私たちは股を拭き終わり学校に行くときに履いていくいつものパンツをお互いに履かせ合う。
中学二年生になってもこんなことをしているなんて少し子供っぽくて恥ずかしいかもしれない。しかし私たちは双子なのであって、喜びや楽しみは二倍で、悲しみや恥ずかしさは二分の一だった。
叶乃ちゃんと一緒にベッドの上で遊んでいたかったが、制服に着替えなくてはいけない。
私は一度自分の部屋に戻り、横開きのクローゼットから中学校の制服を取り出す。
白いシャツ、赤いリボン、チェックのスカートを腕に抱えて私はすぐさま叶乃ちゃんの部屋に戻る。
私たちは一緒に裸になり、一緒に制服に身を包んでいく。
双子であるせいか、たとえ叶乃ちゃんの体を見ても自分の体を見ているのとほとんど変わりはなく、恥ずかしい感情は一切ない。
私の心にあるのは叶乃ちゃんと要られて楽しいという気持ちが大きかった。
制服に着替えた私たちは着ていたパジャマを腕に抱えて、洗濯機を経由してから顔を洗って、お母さんが朝ご飯を並べて待つリビングへと向かう。
私たちは隣同士の席に座った。
私の前には白い箸があり、叶乃ちゃんの前には黒い橋がある。
色の違いはずっと小さい頃から決まっていて、双子ではあるが姉、妹の順番で白、黒と分けられていた。
それを言うと名前もそうである。
私が姉の夢乃で妹が叶乃ちゃん、つまり姉妹の順に並べると”夢叶う”となる。
二人そろって成立するということが本当にうれしくて、私はこの名前が大好きだった。
それはおそらく叶乃ちゃんも同じなんだと思う。
朝ご飯を食べ終わった私たちは歯磨きをして、各々の部屋に戻りスクールバッグを肩にかけて家を出る。
私達はエレベーターに乗り込み「1」の書かれたボタンを押す。
多くの人が何度も押すせいか「1」と書かれた表示は少し薄くなったいた。
エレベーターはたちまち高度を下げて直ぐにエントランスの風景が目に入る。
そして同じ制服を来ている生徒が歩いているその流れに乗って、同じ方向へと向かっていく。
「今日は体育あるのかぁ」
叶乃ちゃんが少し面倒くさそうに愚痴をこぼした。
「ほんとだね。私も嫌だよ」
私も叶乃ちゃんと同じで体育が苦手で嫌いだったので同じように愚痴をこぼして苦笑いをする。
その日の時間割の話や、クラブの予定の話、テストの話などをしながら学校まで向かうのはいつも通りの日常だ。
私たち双子はとても仲良しだと、噂になるくらいのほどである。
徐々に学校の門が目に入る。
私達はそのまま話を続けながら学校の中へ入った。靴箱まで来るとほかの多くの同級生とも目を合わせて挨拶を返す。
上靴に履き替えた私達は自分たちの教室へ向かうために階段を登った。
学校のクラス替えの決まりとして、双子やいとこや親戚は同じクラスになることが出来ないせいで、私たち二人は同じクラスになったことがない。
「叶乃ちゃん頑張ってね!」
私は少し寂しかったが叶乃ちゃんに笑顔で手を振りながら別れた。
「夢乃ちゃんも頑張ってね!」
別れ際に叶乃ちゃんが私に手を振ってくれた。これが日常的な習慣であり、これがあるおかげで日々頑張れる気がするのだ。