表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/15

☆12話 走れ私

 私はとてつもない罪悪感に襲われていた。

もし私がオムツを付けてこなければ、私たちは恥ずかしさを半分にできたはずなのに、私だけおむつを付けてきたせいで、おもらしをした時の恥ずかしさが全部叶乃ちゃんに行ってしまった。

叶乃ちゃん、叶乃ちゃん、本当にごめんね。

私にできるのは叶乃ちゃんをこの場から救うことしかない。


 「叶乃ちゃん、ごめんね。私だけおむつで…… ここから逃げてトイレに行こ!」

私は叶乃ちゃんの頬に両手を当てて、強制的に私と目を合わさせる。

叶乃ちゃんの頬に触れたとき叶乃ちゃんはとても震えていた。

私はすぐに叶乃ちゃんの右手をつかんでまずはこの人混みから逃げ出す。

それからある程度のところまで走り抜けると、ようやく青と赤でそれぞれ描かれたトイレの標識が見えた。


 今私の下半身を包んでいるのは、黄色いおしっこをたっぷり吸ったおむつだ。

そのおむつは大量のおしっこを吸ったせいでずっしりと重くなり、私が走っていると今にもずり落ちそうだった。

だから私は叶乃ちゃんの手を引っ張り走りながらも、もう片方の手でワンピースの上からおむつをつかんでずり落ちないようにする。


 私たちは女子トイレではなく、多目的トイレに入った。

トイレに入り、鍵を閉め、私は叶乃ちゃんにワンピースを脱いで見せた。

自分の目では見えないがおそらくぷっくりと膨らんでるはずのおむつを叶乃ちゃんに見せて謝る。

それから私はいまだに少し泣いている叶乃ちゃんを抱きしめた。

私とほとんど同じ背格好の女の子。

その子はワンピースを自分のおしっこでびっしょりと濡らして泣きながら震えている。


 「ごめんね叶乃ちゃん。私だけおむつしてて」

私にこんな権利はないのかもしれないけど叶乃ちゃんのことを抱きしめ、背中をさすりながら耳元でささやいた。

叶乃ちゃんがゆっくりと私の背中に手をまわして、それから私を強く抱きしめる。

双子とは言え、これほどのことをしたのはいつぶりだろうか。

もしかすると人生で初めての出来事かもしれない。


 「夢乃ちゃんは悪くないよ。謝らないで」

そうやって私をかばおうとしてくれる叶乃ちゃんの声はいまだに震えていた。

「ねえ、さっき見ていた服でいいかな?」

私が叶乃ちゃんにそう聞くと叶乃ちゃんはこくりと一度頷き、私の肩にその振動が伝わる。

「分かった。じゃあ買ってくるね!」


 私は叶乃ちゃんにそれだけを告げて、叶乃ちゃんを多目的トイレに置いたままさっき見ていたお店に向かった。

私の下半身はいまだに濡れたおむつに包まれていたままだったので、案の定少しずり落ちそうになる。私は先ほどと同じようにおむつのウェストを濡れていないワンピースの上からつかみながら歩いた。

さっきの服を見つけたお店までたどり着くと、私はその服を全く同じ色で全く同じ大きさのものを二着買い、叶乃ちゃんの待つ多目的トイレまで急いで戻った。


 私の姿を見た叶乃ちゃんの目にはなぜか私がいなくなる前よりも涙がたまっている。

「叶乃ちゃんどうしたの!?」

「寒い…… 寂しい…… 怖い……」

叶乃ちゃんの顔がどんどんと歪んで、とても悲しそうな表情になっていく。

やっぱりあれだけの多くの人におもらしを見られてとてもつらかったんだろう。

私は咄嗟にそんな叶乃ちゃんを再び抱きしめた。


 「うっうっ、えぐっ、ひっく!」

叶乃ちゃんが突然しゃくり泣きだす。

私はそのまま叶乃ちゃんを抱きしめた状態で叶乃ちゃんの背中をゆっくりとさすってあげた。

すると次の瞬間だった。

私の足首に何らかの水の感触が伝わり、高いところから落ちた水がトイレのタイル調の床に落ちる音が聞こえてくる。

その感触と音は紛れもなく叶乃ちゃんがおもらししていることによるものだった。


 次第に水の当たる音も、叶乃ちゃんの泣き声も大きくなっていく。

私の足首に叶乃ちゃんのおしっこがかかるがそんなこと全く気にも留めない。

私は直立しているままの叶乃ちゃんを抱きしめて、背中をさすって落ち着かせる。

それから私はすこし叶乃ちゃんから離れた。

叶乃ちゃんのワンピースにできているシミは一回目のおもらしの時よりも広がっているようだった。そして叶乃ちゃんのおしっこはトイレのタイル調の床の溝に沿って広がっている。


 「大丈夫だよ。ほら、おむつつけよっか」

私はこの時やっとお母さんがおむつを三枚も持たせた理由が分かった。

私はカバンに入れてあった二枚のおむつを取出しそのうちの一枚を叶乃ちゃんに渡す。

私たちはいつも通り、一緒におむつを履く。

それから紙袋に入っているさっき買ったばかりのおそろいの洋服を取出し、私たちはそれを身に着けた。


 家を出たときとは違うけど、私たちはまたおんなじ服を着た双子コーデをできた。

それからの私たちはフードコートでご飯を食べてから、一緒にプリクラをとったりと二人の時間を満喫した。

気が付けば時計の針は長針、短針ともに真下を指している。

私たちは二人で手をつないでデパートをでた。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ