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☆10話 私だけおねしょ、私だけおむつ

 次の日、私はお母さんにゆすり起こされて目を覚ました。

下半身に広がるじくじくとした湿った感覚は、いつものことだがやっぱり悲しい。

「お母さん、今日もおねしょしちゃった」

「そっか、じゃあ叶乃をおこして一緒におむつ替えようか」

お母さんがやさしい口調で寝起きで目をこすっている私を励ましてくれる。


 それから私はお母さんと一緒に叶乃ちゃんの部屋に入り、お母さんは私を起こした時と同じように叶乃ちゃんを起こした。

「おはよう……」

叶乃ちゃんは私と同じように目をこすりながら目を覚ます。

「叶乃、おねしょは?」

お母さんが叶乃ちゃんにそう聞いた時だった。

叶乃ちゃんの表情が突然変わる。


 「おねしょしてない!」

叶乃ちゃんが声を大にしてそう言った。

私は叶乃ちゃんだけがおねしょをしなかったことに少し変な気持ちになっている。

いつもは二人一緒におねしょをして一緒におむつを替えるのに、私だけがおねしょをしてしまっただなんて嫌だった。

「夢乃、おむつ替えようか」

替えるといってもおむつからパンツに履き替えるだけなのだが、私たちの家ではそれですらもおむつを替えるということにしている。


 私は叶乃ちゃんのベッドに寝転がり、そこでお母さんにおむつを外してもらい、下半身を拭いてもらった。

いつもなら夢乃ちゃんと一緒にされるおかげで、恥ずかしさや悲しさは半分なのに今日は私だけのおねしょだったせいで、余計に恥ずかしく、悲しかった。


 私は少しブルーな気分のまま、リビングへ向かい家族4人そろって朝ご飯を食べた。

今日、私は叶乃ちゃんと二人でバスを使い30分ほどのところにあるデパートに向かう予定だった。ご飯を食べ終わった私は叶乃ちゃんと二人で、どんな双子コーデをしていこうかなんて話し合いながら、出かける準備をしていく。

結局私たちは淡い水色ので青いラインの入ったチェックのワンピースを着ていくことにした。

鏡に映る私たち二人の姿は髪飾りがないとどっちが誰かわからないような状態だった。


 「夢乃! ちょっと来て!」

リビングでお母さんが私を呼ぶ声が聞こえた。

私は少し小走り気味でお母さんのところまで向かう。

リビングにつくとそこには今からいい話をする様子ではないようなお母さんの姿があった。

「どうしたの?」

「あのね…… 保健室の先生から聞いたんだけど、こないだの学校でのおもらしは叶乃よりも夢乃の方が先にしたらしいね。だから夢乃は一応だけど昼間もおむつしていった方がいいと思うの」

いままではウキウキしていた私の口角がグイっと下がったのを感じた。


 「今日はおもらししてないのに、昼間もおむつを付けるなんて嫌!」

私はお母さんの提案を断固拒否したが、実際私自身も最近心配になっていた。

最近は叶乃ちゃんはおもらしやおねしょをせずに私だけが失敗してしまうようなことが増えているような気がする。このままじゃ私だけ置いて行かれて叶乃ちゃんだけ成長していっちゃう。

そんなの、双子なのに嫌だよ……

私も成長したい。赤ちゃんみたいに甘やかされたくない。

でも、もしデパートでおもらししちゃったら……

私の脳裏にはデパートで私だけがおもらしをして周りの人にじろじろと見られる様子が映った。


 「分かった……」

私はボソッとお母さんに返事を返してお母さんが片手に持っていたおむつ3枚を受け取る。

私は今はいていくだけの一枚でいいといったのだが、一応ということでお母さんは私に3枚もおむつを持たせたのだった。

それから私はその場でパンツタイプのおむつに足を通して、2枚のおむつとさっきまで履いていたショーツを片手で持ち自分の部屋まで戻る。

私はカバンにそのおむつを詰め込みショーツを衣装ダンスにしまった。


 「夢乃ちゃん準備できた?? そろそろ行こうよ!」

私が開けっ放しにしていたドアから叶乃ちゃんが入ってきて私にそう言った。

「うん!」

私は叶乃ちゃんのことをよく見て、心を占めている喜びの感情を表すかのように返事を返す。

それから私たちは行ってきますとお母さんとお父さんに告げて家をでて、手をつなぎながら家の近くのバス停へと向かった。


 しばらくしてバス停にたどり着き、ちょうどのタイミングでやってきたバスに私たちは乗り込んだ。案外車内は空いていて私たち二人は座席に座ることができた。

いつもの昼間なら私はショーツをはいているのに、今はおむつをはいていて少し変な気分だ。

それにこのことはまだ叶乃ちゃんには伝えてなくて、言うのも少し自分が情けない気持ちになるせいで言えない。

それから私はおむつのことを一切叶乃ちゃんに何も言わないまま30分ほどが過ぎて、デパートの前のバス停にたどり着いた。

バスを降りた私たちはもう目の前に見えているデパートの入口へと歩いていった。



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