最後
エッセイです。僕が実際に体験したことに少し付け足していますが、ほとんど実際にありました。ぜひコメントなど気軽にくれると嬉しいです。
僕は1人部屋の中で自身の布団の中てスマホをいじる。時間にして10時20分月曜日、普通なら学校に行き机に座り先生のつまらない話を聞いているところだ。
しかし、何故僕がここにいるかと言うと、まぁ、不登校だからだ。スマホでYouTubeを見る。別に面白くはない、ただ時間がすぎればいいと思っているだけ、時間が過ぎる。
ふと、布団から出る、トイレのつもりだったが布団から出ればトイレに行きたくもなくたなってしまった。カーテンを開けてみる。真っ青の空、白い雲がぽつりと浮いている。冬なので空っぽになった木が悲しく見える。僕の心にぐっと何かを注ぎ込む感じがする。
虚しい、そんな気持ちに襲われる。
カーテンを閉じ真っ暗になった部屋の世界に引き戻される。再び布団に入り携帯の光を浴びる。
何分か経った頃コンコンと、ノックが聞こえた。聞きなれたノックの音に、無言で待ってると、ゆっくりとドアが開いた。
「晴空ちゃん」
そこに居たのは祖母、おばあちゃんだ。手にはビニール袋を下げている、外は寒いのか赤いマフラーをまいている。そろそろ70後半だと言うのにまだ腰は曲がっていない。元気だ。
「昼ごはん持ってきたよ」
そう言って袋からひとつの箱を取り出す。カップラーメンだろう、あとはいつも持ってきてくれるパンにトマトなどの野菜をのせたピザパン。
「ありがとう」
1つ例を言ってそこに置いといてと指で示す。
「じゃあ、ばあちゃん帰るけど学校に、行けたら行くんだよ」
その言葉が心に刺さる。何科がこみあげてくるのを感じる。ぐっと何かをこらえる、唇をキュッと1度かんでから、言う。
「うん」
それだけが口から溢れ出た。それだけしか口からこぼれでなかった。
トントンとおばあちゃんが階段を降りる音がしてやっとの事で布団からはいでる。
少し早い昼食、普通学校なら12時過ぎのご飯なのだがら、まぁ、そこは不登校のいい所だ。
カップラーメンにお湯を注いで3分待つ。その間にピザパンを食べる。美味。
ムシャムシャとパンを大きくかじっていると1匹の猫がよってきた。うちで飼っているペット、名前はタナ、タマみたいだが違う。スリスリと足にすり寄ってくる。こいつもご飯が欲しいのかもしれない、僕はひとつキャットフードの袋を取り出し専用のお皿に移す。それを美味しそうにガツガツと食べる。
食べ終わったら日向に行って寝転がる。そんなことを毎日繰り返す。僕も同じく布団に戻る。
猫になれたらどんなにいいだろうと、時々思う。来世は猫になりたい。今も猫とおなじ生活だが大人になったらきっとそうはいかない。朝早く起きて仕事に行って夜遅くに帰って、やっとのことで寝れる。まあ、仕事につけるかわからないけど。僕は今中学三年生、高校は受かってる。10月まではしっかり学校に行ってたがひょんなことから行かなくなってしまった。
高校にちゃんと行けるだろうか、そんな心配が浮き出る。大人になって仕事につけるだろうか、学校に行かなくてはと、思うけど行けない。そう、行けないのだ。
不登校になって気づいたことが沢山ある。不登校生の気持ちなんて考えたことがなかったがなかなか大変だと僕は思った。学校に行こうとしたことがある。朝からではなく2時間目からとか、学校に不登校生が再び行くことが滅多にないその理由が、学校に行かないのではなくて、行けないのだ。重要だ、行けないのだ。
その理由は幾つかある。まず授業を普通に受けるのが難しくなる、周りの目が気になる「あいつなんできてんの?」とか思われてそうで授業所ではない。あと座るの大変だった。長い時間座っているのは窮屈に感じられた。
2つ目に給食が辛い。毎日少食なので、給食の多量が辛い。吐きけがする。
最大の理由が優しさだ。今の人たちは優しい。なので学校に行くと、大体、
「よく来たね」
「おー、晴空、よく来たな」
「そーらー、来てくれたんだ」
とか、そんなふうに優しくされると罪悪感がある。「学校きただけでなんで褒められるの?」と、1人に言われたこともある。
確かにそうだ、休んだから悪いのに、来たら褒められる、おかしなことだ。
いつの間にか4時になっていた。玄関に行きポストを開ける、中にはひとつの袋が、明日のスライドだ。これを届けるのも一苦労なのだろう。何せ僕の家は少し離れた山の中にあるのでこれを届ける人は少し離れている、届けるのも大変だろう。
行きもしない明日の予定を見る。
ぽいと、紙を捨てる。
どうせ行かないのだからあっても意味ない。
◆◆◆◆
翌日、今日は珍しく朝からインターホンが鳴らされた。僕は誰が来たのかわかったままパジャマ姿で外に出る。まだ肌寒い、あたりまえかもう2月も半ばなのだから。
扉を開けてヒューと入ってきた風邪を全身に浴びることなく1人の女子によって壁が作られた。
「あ、まだパジャマだ、だらしないなー」
「僕の私服でもあるんだ」
「何言ってんのよ」
「日本語」
こいつは僕の幼なじみ、川井美奈。僕にスライドを届けてくれるやつでもある。
こいつが僕の家に来た理由もわかっている。
「学校いこ」
「やだ」
「なんでぇー」
僕は昨日思っただろう、優しいのが辛いと、こういうことだ。こんな所をクラスメイトに見られたらたちまち悪い噂など陰口があとを尽きないだろう。まぁ、言ってみれば美奈は可愛い。学校一と言ってもいいだろう。それに比べて僕はどうだろう、一般だ。もう一度言おう一般、普通。なので不味いのだ、こいつがうちに来ることさえも。
「そう、じゃまた明日来るね」
「来なくていいよ、どうせ僕は学校に行く気は無い」
「そんな事言わないの」
そう言って美奈は手を振りながら、通学路に戻っていく。
まったく八方美人も大変だなと思った時
「晴空、毎日来てくれるんだからちゃんと学校行きなさいよ」
と母さんがいつの間にか僕の後ろで手を振りながら言う。もちろん美奈に手を振っているのだ。
「いかない」
「まったく、いつからそんなになったのか」
正確には10月24日。僕は覚えてる。理由は忘れた。
「これ届けてくれたのよ、昨日。あんたプリント捨てたでしょ」
「ああ、何それ」
母さんが持ってたのは1枚のプリント。どうやら昨日のスライドのプリントと一緒に入っていたらしい。
「明日、参観日だってどうする?」
「いかない」
「最後なのよ」
「いかない」
そう言って僕は部屋に戻る。布団に入りスマホでYouTubeを見る。昨日の繰り返しがやってきた。母さんはこの後仕事に行くので心配ない。
昨日と同じ、それだけで事が済む。
◆◆◆◆
夜が来た。今日は父さんが帰ってきた。いつもは単身赴任で少し遠いところにいて帰ってくることは少ない。
フゥーと溜息をつきながら帰ってきた。疲れたようにネクタイをクイッと緩める。
「晴空学校に行ってるのか?」
最初の一言がそれだった。僕は嫌気がさして素っ気なく答えた。
「行ってない」
「はぁー」
また溜息をつき父さんはお茶を1口飲む。
「明日参観日出そうじゃないか」
「うん」
「行きなさい」
多少の怒りの感情が混じってそう言った。
「…………いやだ」
「わかった、行かないのなら――――」
最後の手段のようにゆっくりと言った。
◆◆◆◆
「晴空………………がいる!!!!」
開口一番皆はそう叫んだ。僕は手を挙げながら玄関の前で応える。
「よお、学校に行くぞ」
「なんでぇ」
「いいだろ、気が変わったんだ」
通学路を歩く、時々驚いたようにこちらをキョロキョロと目を見開きながら見てくる。鬱陶しい。
これでも周りに気づかれないようにちゃんとマフラーと手袋、ニット帽を被っている。まぁ、周りに人はいないんだけど。
「晴空なんで学校に行く気になったの?」
美奈が聞いてもいいのかな?みたいな顔で問いてくる。
僕はクイッとマフラーを頬まであげて答えた。
「スマホが没収!!!お小遣いなし!!!本読むの禁止!!!」
そう、それが僕に課せられたミッションの理由。学校行かないと、まぁこうなる。本も大好きなのでやめて欲しいところではあった。なので仕方なく学校に向かっている。
「ぷっ、うわははははは」
「なんだよ」
「いや、晴空そんな理由で学校行くなんて、面白くて」
目尻に浮かんだ泪を手で拭いながら言う。
「面白くない、大変なことだ。スマホがなかったらYouTube見れないし、お小遣いなかったら本買えないし、そもそも本読んじゃダメとかつっきのラノベ気になるんですけど!」
「そっかそっか、いやー良かったよ学校来てくれて」
「はいはい、八方美人も大変ですね」
「何それ、心配してんのに!」
「ふっ」
「ふっ」
どちらがともなく吹き出す。楽しい、と感じたのはいつくらいかぶりだ。
楽しい。
もう、周りの目とか気にせずに普通に歩くことが出来た。
◆◆◆◆
ドアを開けられない。そう思った時僕の手が震えるのが感じられた。きっとそうだ、いつからか感じていた、きっと、休む期間がながければ長いほどこの感覚は大きくなる。そう感じていたはずなのに、前来た時はなんともなかった、それでも怖くて手が震える。
教室の前まできて、立ち止まる。美奈は自分の教室に行ってしまった。なので今はひとりだ。
100分、それが1分にして感じた体感時間だ。
やっとの事で開けることが出来た。トイレの扉を。情けない。
3分がたった。トイレの外に見える外掛けの時計から時間を見た。僕は決心して便器から立ち上がる。勢いだ。ここまで来たら勢いだ!僕は壁をも突き破る勢いで進んだ。
勢い、勢いだ。行くんだ僕!
ガン!
「……っ!」
つ、強く開けすぎた。うわーやっちゃった。いそいそとドアを元あったいちに戻す。ガラガラと音を立てながら閉まる。背中に視線を感じる。
勢い!
「お、おはようございます」
「きたよ」
「だれ」
「なんだよアイツ」
「?イキってんなァ」
「うっさいなぁ」
視線はいたいものだった。優しさとかこれっぽっちもなかった。
クラス中から視線を集めた僕、しかしそれは一時的なもので直ぐにみんな友達と話し始める。
「うぅぅぅ」
僕は誰からも挨拶されずに自分の席に着く。30分もあった時間はとても長い時間のように感じられた。
来るんじゃなかった。
参観日は、一言で言うと、覚えてない。寝てた訳では無い、記憶が全くない、もはやボーっとしてただけで先生の話とか1個も聞いてない。
帰り、僕は一人で帰った、となる感じだったんだが、友達、まぁ、天邪鬼な感じで言ってることが学校と帰り道ではて全然違った。僕が学校に通っていた時は、「お前嫌いなんだよ性格とかさぁ」と言っていたのに、帰り道では「ちょ、いっしっに帰ろ」と言ってきたり。1部の女子からはツンデレとか言われてる。友達のはずだ。
「お前なんできたの」
突然話しかけてきた。少しキョドりながら、
「えぇーと―――」
と、内容を話すと、
「へぇー」
だけだった。
「僕、明日から学校来ない」
意を決して言ってみた。そのまんまの意味だ、明日から卒業式も、謝恩会も行かないつもりだ。
それを聞いて友達のはずの、琉生が、
「いいんじゃね」
「いいの!」
「何驚いてんだよ、いつもの事だろ」
「確かに」
そんなことを話していた、僕にとっては心強い、なんせ今日久しぶりに人と話した。
「じゃ、俺受験勉強あるから」
「あ、うん。バイバイ」
手を振って踵を返す。これで今日も終わり、というか中学校生活が終わる。
と、思ってたのに、
「たまには来いよ」
バッと振り返るともうそこに琉生の姿はなく家の中に入っていた。
僕は変な気持ちになって家路に着いた。
読んでくれてありがとうございました。