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プロローグ どうやら私は死んだようです

読んで頂き、ありがとうございます(*'▽'*)

これから宜しくお願いします!!

 夢の中にいるのかもしれない。


 見渡す限り真っ白な世界。

 光に包まれた世界は全てが眩しい。

 何も見えないくらい眩しい世界なのに、前に立つ男の人だけがはっきりと見える。


 目の前にいる人は誰なんだろう?

 すごく綺麗な顔立ち。真っ赤な瞳に長い睫毛(まつげ)。すっとした鼻筋。見れば見るほど整っていて、とても素敵な人だ。

何より腰までの金の長髪が、さらさらしていて気持ちよさそう……


「……後で触らせてやろう」


 触らせてくれるのね。ありがとうございます。

 それなら逞しい身体も一緒に……。


「それは駄目だ」


 そう。残念。

 眉間に皺を寄せて溜め息をつく彼を見て、うっとりとしてしまう。

 やっぱり夢だ。こんなに素敵な人、今まで見たことがない。


 彼は一つ咳払いをすると「お前は……」と赤い瞳を細めて辛そうな声音を出す。少し掠れた低い声は腰が砕けそうなくらい色っぽかった。


「……お前は死んだ。わかるな?」


 だ…れが、死んだ……? え?

 私は……私が……。


「そうだ。お前は死ぬ前に子供を助けただろう」


 子供……?


 その言葉が引き金になったのか、急に意識がはっきりとする。

 ぐわっと頭を鷲掴(わしづか)んで揺すられたかのようにクラクラとした。


「そうだ、私……あの時……」


 一台の軽自動車が横断歩道に向かって来たとき、そこには小さな子供がいた。

 ピンクのランドセルを背負った子。いつも出勤する時に居たからよく覚えていた。と言っても、あの子と話したことはなかったし、無我夢中なだけだったと思う。


 驚いて立ちすくむあの子を見て、咄嗟に私が何とかしないとって思ったら身体が動いていた。

 突き飛ばした私に、驚いた顔をしたあの子の顔が脳裏に浮かぶ。


 ――じゃあ、ここは夢の中じゃないんだ……。本当に私は死んだんだ。


 そこでようやく気づく。きっと目の前にいる人は、神様とか天使とかそういう存在なんだなと。

どうりで綺麗なはずだと一人納得した。


「でも……良かった。あの子は助かったんだ……」

「そうだ。だから、お前の転生には多少優遇してやろう」

「転生……?」

「何かなりたいものはあるか?」


 なりたいもの……と聞かれても、特に何も思い浮かばなかった。

 普通の人間としてありきたりな人生を送ってきたけど、満足していると言えばしているし、していないと言えばしていなかった。

 そういえば、幼い頃から将来なりたいものとか聞かれても、よくわからなかったっけ。


 私が「特にありません」と答えると、彼は困ったように考え込んでしまった。


 憂いにかげる瞳を見て、睫毛も金色なんだなと思った。

 キラキラと透き通るような金の髪と睫毛。


 格好いい人は睫毛の長さも完璧なのかもしれない……。


「お前の考えてることも、俺には全部聞こえているぞ」

「うえっ!? え、あ、ごめんなさい」

「まあ、いい。では、お前の好きな物は何だ?」


 好きな物? そう聞かれて思い出したのは、冷蔵庫に入れて食べられなかったプリンのことだった。

 我ながら呆れてしまうけど、甘い物が大好きなのだ。

 仕事の後に食べようと思って取っておいたプリン……あのままでは弟に食べられちゃうんじゃないかな。


 それに、家族にだって何もお別れが言えなかった。

 特に十歳も離れた弟は、仲が良かったから泣いてしまってるかもしれない。いくら人を助けたとは言え、悲しませてしまうのは辛かった。

 生意気な事ばかり言う弟だったけど、良いことがあると私に一番に教えてくれたし、私も楽しそうに笑う弟のことが大好きだった。

仕事の後に、弟とやるゲームの時間は、私にとってプリンと同じくらい楽しみの時間の一つだった。よく弟と張り合って、ムキになってやってたっけ。


 そういえば、あのゲーム……結局クリアーできなかったな。こんなに早く死んでしまうのならもっとやっておけば……。


「ふむ。げぇむとぷりん、弟……だな? まあ、お前の好きな物はよくわかった」

「え? あ、プリン……?」


 満足そうに腕を組んで頷く彼が呟いたものは、たしかに私が今考えていた事柄で。


「楽しみにしておけ」


 彼が微笑むと同時に、景色が一層白んでいく。


「あれ……そういえ……ば」


 貴方の名前はなんですか、と聞こうとしたのに、私の意識は途切れてしまった。

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