第14話:ファフニール討伐戦 その1
「ゴールデンアイアンゴーレム?」
「フンガー!」
2メートルを超える巨大な黄金モアイは、いかにも、という感じで叫んだ。
金ピカのモアイから手足が生えたような矛盾の塊を、カロンは訝しげに眺める。
「ゴールデンアイアンゴーレムさん……長いのでゴルゴさんと呼びますが、彼もまた、モンスターストリップの世界に存在していた魂です。なんと、☆4です」
「なんとまあ」
これはカロンも少し驚きだった。今まで送られてきた奴は最高でもアイリの☆3だ。
あらゆるソシャゲの魂を救うという方向性に、ボインプルンも切り替えたのかもしれない。
「さて、それと今回のアップデートでは、ステータスとスキルが見られるようにしました。ファフニールさんと戦う際に必要でしょう。本当は、能力を数値化するという行為には反対なのですが」
「でもあなた、幸福度とか前に実装してましたよね?」
「さあ、早速ゴルゴさんのステータスを確認してみましょう」
例によってカロンの話をスルーし、ボインプルンはゴルゴのステータス確認を迫る。
釈然としないが、カロンもゴルゴに向けて手を伸ばし、ステータス画面を開く。
【ゴールデンアイアンゴーレム】
レアリティ:☆4
レベル:1
体力:50
アイアンゴーレムが錬金術師の手によって黄金に変化したゴーレム。
全身が金になり美術品としての価値は上がったが、強度と耐性は落ちた。
「弱くなってるじゃん!」
「確かに、通常のアイアンゴーレムより弱いでしょう。ですが、ゴルゴさんの真骨頂はスキルにあります。その下に書かれている文言を見て下さい」
ボインプルンに促され、カロンは空中に表示されたステータス画面をスライドさせる。
下の方には、前に実装された幸福度のステータスバーがある。
さらにその下に、「所持スキル」という項目が出来ていた。
【スキル1】かばう
・味方全体の攻撃を一度だけ受け止める。
【スキル2】食いしばり
・体力が最大値であれば、体力以上のダメージを食らっても体力1で耐える事が出来る。
「どうです? なかなかの能力でしょう?」
「まあ、防御系としては……」
ボインプルンは自信ありげに宣言する。
確かに、これだけ見ると状況によっては使えない事も無さそうではある。
「さて、次にカロンに付与した能力について説明しましょう。カロン、あなたの頭上を見て下さい」
言われた通りカロンが上を見ると、頭の上に天使の輪のようなものがいつの間にか付いていた。
「それがあなたの魔力ゲージです。『プロテクション』と唱えれば、あらゆる攻撃を防ぐ壁が現れます。さあ、やってみるのです」
「プ、プロテクション!」
カロンが叫ぶと、ヴン、という音と共に薄いガラスのような壁が張り巡らされた。
「上手く行ったようですね。では、早速効果を試しましょう」
ボインプルンは慈愛の笑みを浮かべながら、乳の谷間からバールのような物を取り出した。
「では、行きますよ。避けないでくださいね」
「え、あ、ちょっ……!」
「たあああーーーっ!!」
ボインプルンはバールのような物を思いっきり振りかぶり、カロンの脳天めがけて振り下ろす。
「うわぁっ!」
それを、カロンは地面を転がりながらぎりぎりで回避する。
「何故避けるのです!?」
「避けなきゃ当たるじゃないですか!」
「当てるためにバールのようなものを出したのです。プロテクションの効果を試すのです!」
「ウワーッ!」
ボインプルンは笑顔で再びバールで殴りかかる。カロンは両腕で頭をガードするが、張り巡らされたプロテクションの壁にひびが入り、そして消滅した。
「という感じで、攻撃を完全にカットできます。ただし、強力な攻撃だけではなく、今のようにか弱い私の攻撃も一回でカウントされてしまうので、使いどころに注意をして下さいね」
「か弱い……?」
「さて、再び頭上を見てみましょう。天使の輪の輝きが薄くなっていませんか?」
未だに心臓がバクバク言っているが、カロンは言われるがまま頭上を見た。
確かに、先ほどは蛍光灯のように輝いていた天使の輪は、少しくすんでいた。
「プロテクションを打てるのは二回まで。それから先は時間経過で回復するのを待つしかありません。使うタイミングには気を付けて下さいね」
「ええ……戦闘中に二回しか使えないんですか?」
「そこで、ゴルゴさんの出番です。ゴルゴさんは実質、カロンのプロテクションの代行をしてくれます。とても強力な助っ人になるでしょう」
「でも、二回が三回になるだけですよね?」
「勝負という物は、紙一重で決まるものなのです」
ボインプルンは真顔でそう言い放つ。
「あと、もう一つプロテクションを発動させる方法があります」
「えっ!? それを先に言って下さいよ……」
そんな方法があるならさっさと教えて欲しい。
「それは……課金です!」
「課金とな」
「はい。私はソシャゲと乳を司る女神。炎の魔人イフリートが炎で強化されるように、ソシャゲの女神である私は、金によって神の力が発揮できるのです。カロンが課金する事で、天使の輪の輝きを取り戻す事も可能です」
「でも、高いんでしょう?」
「マックスまで回復するのに、一回500円です」
微妙に高い。
「なるべく課金しないように頑張ります」
「そうですか……ですが、私はソシャゲの女神。カロン……あなた達が力を合わせ、ファフニールさんを倒す事に、いつでも協力しますよ」
微笑みながら、ボインプルンの姿は徐々に透明になり、やがて完全に消えた。
遠まわしに課金しろと言っているような気がした。
「じゃあ、よろしく。ゴルゴ」
「フンガー!」
フンガーしか言わないのでよく分からないが、頷いているから多分やる気なのだろう。
安息地にゴルゴを連れていった後、アイリ、ジーパン、アーノルディでパーティを組み、ファフニールを討伐せねばならない。
「あ、そうだ」
安息地に向かう前に、せっかくなのでカロンはパソコンでモンスターストリップの情報を調べておく事にした。ファフニールのステータスは目の前にいないので確認できないが、ゲーム内の情報を知っておけば、立ち回り方も考えられるだろう。
「あ、出た出た!」
カロンは、モンスターストリップ(故)の廃墟のような攻略ページを発見し、ファフニールのステータスを見つけた。
【ファフニール】
レアリティ:☆10
レベル:30
体力:5000
【スキル1】薙ぎ払い
・巨大な尻尾での全体物理攻撃。パーティ全員に500~800ダメージ
【スキル2】ヘルフレイム
・燃え盛る火炎を口から吐く。パーティ全員に火属性800~1000ダメージ
「どないせぇっちゅうねん!」
いきなりの無理ゲーに、カロンは思わずキーボードを叩いた。




