第6話 ゴブリン達が帰って来た
ゴブリン召喚士まだ頑張ってますよ。
完結済み 日間34位 週間30位 月間145位です。
そろそろ消えて無くなるかと思ったのですが不思議ですね。
睡眠学習による知識が上手く連動するシナプスが出来た俺達は結構論理的に物事を考える様になってきた気がする。エミリーに言わせると理論を正しく組み立てるには数学的な思考体系が必要なんだそうだ、しかし俺はフーリエ変換がさっぱりだったし、ゴブ吉は計算無しで右脳で瞬時に答えを出す天才だったので、エミリーが教えられる事は少なかった。でも世界的な絵画はフーリエ変換をすると一点に収束するらしいので天才と言われる人たちは皆右脳で作業できるらしい事は分かった。
「ゴブ吉、色々知識増えたけど役に立たね~もんだな。」
「そうゴブな。知らなくても生きていけるし不便もないゴブ。」
「なんか魔法の方がよっぽど役に立つんだが?」
「でも何でも魔法で済ますと馬鹿になりそうゴブ。」
確か知識は増えたが、それを実際に使うには社会が成熟していないのだ。つまり工場とか機械とか全然無いので何も出来ないのだ。何かを出来る様になるには非常に長い年月がかかりそうだった。まあ、オーバーテクノロジーなんてこんなもんだ。せいぜい文明化が加速するだけだ。教科書に載っている以外の無数の技術や知識がないと実用化には届かないのだ。
「エミリー、船は駄目だったのか?」
「直せる所は全部修復マシーンが直したみたいですが、交換部品がないやつは駄目でした。」
「そうか、勿体ない事をしたな。」
美味しそうに芋を食っている美人のオーガのお姉さんが平気な顔でそう言った。故郷に帰りたいだろうに無理してるのかな?
「自分の星に帰りたくないのか?」
「あんまり帰りたいとは思いませんね。食べ物は不味いし、毎日戦闘艦の操船訓練ばっかりだし。ここの方が広々してて生きやすいです。皆優しいですしね。」
「まあつらい時は言ってくれ、話を聞くぐらいなら出来るから。」
「ふふ、優しいんですね。」
「当然です、マスターは全ゴブリンを愛で包んでくださるのです。」
「いやいや、エリカそれは言い過ぎだと思うぞ。」
最近エリカが俺を神聖視しすぎて危険だ、確かに召喚神なのでゴブリンにとっては神かもしれないが、俺はただの人間なのだ。飯を食って寝て笑ったり怒ったりするのだ。それに国中に俺の銅像がチラホラ建ちだしたのが気になる。まだ生きてるのに偉人扱いされると気持ち悪いのだ。
「ゴブ吉、魚でも捕りに行こうか?気分転換だ。」
「良いゴブな。今の時期はサバが美味いゴブ。」
褒められると気持ち悪くなる俺は、ゴブ吉と魚を捕りに行く事でその場を逃げ出した。魚を捕ってると落ち着くのだ。人魚達に魚の居場所を聞いて魚釣りを始める、俺の魚釣りスキルはMAXなのでどんどん釣れるのだ、これが俺が誇れる唯一の芸だった。
「師匠、空見るゴブ。」
「うん?」
「この間のゴブリン達が帰って来たゴブ。」
「この間の船とは違うな、少し大きい様だ。」
あれから半年位だろうか、最近は時間を計る機械や日にちを現す暦を使いだしたのだが、あの時はまだ使ってなかったので、正確な日にちは分からなかった。今では銀河標準時間を使っていた。ゴブ吉と俺は魚釣りを止めて、畑の方へ歩いて行った。この辺で降りるとしたら又畑だと思う、他に広くて平らな所は無いのだ。
「また、芋畑が荒れるな~。」
「本当ゴブな、今度は宇宙船用の場所造らないといけないゴブね。」
この間の船より少し大きく150メートルクラスの宇宙船が畑に降りて来た。今度はちゃんと着陸脚を出して重力制御をしているので畑が余り荒れてない。あんまり芋畑を荒らすとキングゴブリン達が怒り出すのでホッとした。あいつらが本気で怒り出すと宇宙船をぶち壊しそうなのだ。
「ゴブリン神様、お久しぶりです。」
「よお、お帰り。」
中からこの間の3人と他にも5人程降りて来た。
「ゴブリンの神様、私どもは使者として参りました。私ゴブリン帝国第1王女エリザベスでございます、宜しくお願い致します。」
「ああ、宜しく。俺はダイ男爵だ。」
「私はゴブリン帝国第1外交相チャールズです、お見知り置き下さい。」
「ああ、こちらこそよろしく。」
「マスター、皆さんお疲れでしょうからお茶でも飲みながら話されてはいかがでしょうか?」
「そうだな、俺の屋敷で話をしよう。エリカ準備を頼む。」
睡眠学習の成果なのかそれとも元々気が利く性格なのかは知らないが、うちのゴブリン達は偉く気が利く様に成ってきた。もう何も教えなくてもドンドン文化や文明を身に着け始めていた。
第一王女がこの使節団のボスなのは見ただけで分かった、プリンセス級ゴブリンなのでこの中では最上位のゴブリンだった。第1外交相はジェネラル級ゴブリンで中々立派だったがウチのジェネラル級と比べるとやはり小さく弱そうだった。後はこの2人の従者が3人、ハイゴブリン級だ。
「やあ、皆。長旅で疲れただろう。くつろいでくれ。」
「どうぞ、皆様。ホートケーキとミルクです。取れたてのハチミツも有りますわ。」
最近料理に凝っているエリカが皆に軽食を出している。
「うわ!美味い!!!」
「何だこの旨さは!」
「だから言ったでしょう、ここの食べ物は凄いんだって。」
不味い宇宙食と精製水ばかり飲んでいたゴブリン達はエリカの出した物を瞬く間に食べていた。
「・・・すいません、興奮してハシタナイ所をお見せしました。」
第1王女が恥ずかしそうに言った。確かに使節団が口の周りをハチミツだらけにしてホットケーキを食べるのはみっともないかも知れない。
「はは、気に入ってもらえてよかったよ。」
「お代わりも有りますよ。」
「「「「下さい!!!」」」
宇宙から来たゴブリン達は腹ペコだったようで何度もお代わりして食っていた。どうやら宇宙に住んでいてもゴブリンはゴブリン、食べる事が大好きなのは変わらない様だ。さて話し合いを始めるか。