第39話 勇者とダンジョン
そいつはダンジョンから現れた。光り輝く鎧を着た人間だった。光魔法をぶっ放し攻撃を盾で受けて剣で攻撃する魔法剣士ってやつだ。実力は冒険者ランクで言うとAAAかSランク位か?結構強いがアーサーよりも剣の腕は下だし、魔法も光魔法の上位魔法が使えるだけなので大した事ないヤツだ。しかしこいつは偉く厄介なスキル持ちだった。
「悪魔どもよ!この勇者の前にひれ伏すが良い!」
「何言ってんだ!俺達は悪魔じゃねーぞ!馬鹿野郎。」
「ワハハ~、悪魔は皆そう言うのだ!私は騙されんぞ、なにせ勇者だからな。」
「この阿呆が、人の言う事全然聞かない馬鹿だ。」
「ゴブ吉!やれ!」
「任せるゴブ!」
勇者の身体にゴブ吉のイージスが炸裂する、どんな敵でも倒して来た攻撃魔法なのだが勇者には通じないのだ、爆炎の中から勇者がゆっくり現れる。
「中々やるな!悪魔ども。だが私は勇者だ、倒れはせん。」
「駄目ゴブ.俺のイージスが通じないゴブ。」
「アーサー!行け。」
「おう!」
次はアーサーだ、ゴブリン族最強の剣士だ。戦艦をも真っ二つにする化け物だ。凄い速度でアーサーの剣が振られていく勇者は何百という斬撃を受けているのだが全く通じていない。おかしいだろ。
「ほう、悪魔にしてはやる様だな。まあまあの腕だ、だが軽い!」
「く・・私の剣が通じない。」
おかしいだろ大型戦艦を真っ二つにするアーサーの剣が軽いハズないだろ?勇者もまるで見えないからアーサーの攻撃が全部当たってるじゃないか。
「緊急通信!緊急通信!」
「今度は何だ!」
「他の3か所のダンジョンにも勇者が現れた模様!」
「くそ!一人でも厄介だというのに。」
ダンジョンにも魔法が効かない奴がいたし、悪霊やミストなんかは物理攻撃無効の奴がいたが両方効かないヤツは初めてだ。俺達の方が遥かに強いのに奴を倒せなかった。
「死ね!魔王!」
「俺は魔王じゃね~!」
勇者は馬鹿だがカンが良いのか俺に襲い掛かって来た。アーサーが相手なら瞬殺される俺だが勇者位なら何とかなる。俺と勇者が戦っているので周りが手を出せないでいた。物理攻撃も魔法攻撃も受け付けないヤツの弱点を探るべくギルドの職員に指示をだす。
「ギルドのねーちゃん!こいつを鑑定して俺に教えろ!」
「はい!男爵さま。」
「フハハハハハ、私を鑑定しても無駄だ魔王!悪は滅びるのだ!」
「だから俺は魔王じゃね~!悪でもね~ぞ。」
「鑑定出来ました!」
勇者の鑑定結果を戦いながら聞く。目の前に居るヤツのステータスはこうだ。
勇者 レベル99
HP 99999
MP 99999
力 999
体力 999
知力 99
速さ 999
スキル 魔法無効 物理攻撃無効 光魔法レベル5
くそ雑魚の癖にやたらHPが高いやつだ、やはり魔法無効と物理攻撃無効が付いていた。
「こいつ、チートごぶ!改造キャラごぶ。」
「魔道部隊!合唱魔法用意!」
物凄くインチキ臭いこいつを倒す事にする。俺は元々冒険者だ、正々堂々なんて柄じゃないのだ。初めは強い相手にはこうやって戦って来たのだ。
「魔道部隊デッカイ穴を掘れ!」
俺の指示で魔道部隊がデカい落とし穴を作った。
「ヘラクレス、こいつを穴に投げ込め!」
「うお~!任せるでガンス!」
穴に勇者を投げ込んだ俺達は皆で石をバンバン投げこんでやった。人間達も手伝ってくれた。足りない時は土魔導士達がいっぱい石を造ってくれるので無限に石が出来ていた。
「よ~し、魔導士達。合唱魔法でこの穴を埋めるのだ。勇者にデカい墓を作ってやれ。」
勇者を落とした直径100メートル深さ200メートルの落とし穴の上に山が出来た。今では小高い山にになったのだ。死ななくても出て来るのに凄く時間が掛かるはずだ。
「上にアークロワイアル改も乗せるか?」
「あいつの力じゃ今の墓石ものけられないと思うゴブよ。」
「あ!あいつの反応が消えたゴブ。死んだみたいゴブな。」
「物理無効だったから圧死じゃないな。窒息死かな?」
「よし、他のダンジョンの連中に教えてやろう。」
俺は宇宙の仲間達に勇者の弱点を教えてやった。直ぐに対策するとのことだ。その間にこっちはダンジョンの始末だ。
「魔道部隊、水魔導士を集めろ。ダンジョンをぶっ潰すぞ。勇者がこれ以上現れない様にする。」
「水魔導士集合しました。」
「よし、ダンジョンに向けて水魔法を放て!このアリの巣みたいな物を水浸しにしてやるのだ。勇者が中に居れば溺死だ!」
「合唱魔法津波用意!放て!」
ダンジョンの入り口に合唱魔法津波を放つ、これは合唱水魔法の広域殲滅魔法だ。大量の水を発生させ敵を押し流す魔法だが今回はダンジョンを水攻めするのに使った。
「どんどん水を出せ!魔力は俺が供給する!」
「男爵様、我々の水魔導士達も協力いたしますぞ。」
「おう!頼むぞ冒険者達。」
ここらあたりに居る全ての水魔法を使う者達がダンジョンに水を送り込む。物凄い水量なので中から外に出て来る者はいなかった。ダンジョンの入り口から水があふれるまでやってやるのだ。
「ゴブリン王国より通信、勇者を生き埋めにしたそうです。」
「そうか、よくやったエリザベス。」
「オーク共和国からも入電。気化爆弾の連発で酸素を奪い倒したそうです。」
「あいつ等過激だな。」
そしてオーガ帝国はバトルドレスで勇者を捕まえて宇宙船に閉じ込めて宇宙空間に放り出したそうだ。まあ3か所とも勇者を倒したから良しとしよう。
「水が溢れて来たゴブ。」
「よ~し、魔法攻撃やめ。様子を見る。」
これでダンジョンの中は水でいっぱいになったはずだ。空気が少し位残っていても長くは持たないだろう、ダンジョンコアは破壊出来ないが階層主や勇者は死ぬはずだ。俺達は警戒しながらダンジョンの入り口を皆で見守っていた。それから30分程経った頃。突如としてダンジョンが消滅した。
「ダンジョンが無くなったゴブ。」
「中の奴が全滅したからかな?」
「あっけない最後ですな男爵様。」
どうやら俺達は勝った様だ、突然できたダンジョンは消滅した。すぐに残りの3か所にダンジョンの消滅を報告する。
「男爵、水を入れれば良いのだな?」
「そうだ、中を水浸しにしたら30分位でダンジョンが消滅したぞ。」
「分かりましたわ!直ぐにポンプ車で放水いたします。」
「教えて下さり感謝いたします男爵。海水をダンジョンに流し込みます。」
俺達は魔法でダンジョンを水浸しにしたが、他の連中は機械を使う様だ。そういえばあいつらはカテゴリー3だった。俺達野蛮人と違って宇宙に進出するほどの科学力を誇っているのだ。水で穴を埋める位造作もない事だろう。
それから3時間後、全てのダンジョンは消滅した。俺達の宇宙は平和に戻ったのだ。
「終わったなゴブ吉。」
「・・なんか嫌な予感がするゴブ。」
「奇遇だな、俺もだ。」
ダンジョンの現れ方がおかしい事に気が付いたのは俺だけじゃ無かった様だ。ゴブ吉も気が付いていたらしい。
「男爵様、いかがなされました?」
「何だか嫌な奴が何処かで俺達を見ている気がしてな。」
「嫌な奴が見てる?」
「そうだ、ダンジョンが現れた4か所。不自然だろ?悪意の有るゲームのような気がする。」
「チートキャラまで出して来たからセコイ奴ごぶな。」
ーーーフハハハハハ!!!良くぞ気が付いた!貴様を敵と認めようーーーーーー
へんな爺さんが空一杯に現れた。
「誰だお前は!」
「我は創造神!貴様らの敵だ。」
「お前がダンジョンを作ったのか?」
「そうだ、1万年ぶりの儂の遊びだ。中々面白かったぞ。」
「お前が深淵の正体かクソ爺!」
「そうだ、我と戦え。我を楽しませるのだ。」
「嫌だね、お前なんか楽しませるもんか。」
「儂に勝てば何でも望みをかなえてやるぞ。それでも嫌か?金でも名誉でも地位でも望みのままじゃ!」
「面白い、これが何か分かるか?」
俺は5年前から肌身離さず見に付けているバーバラの魔石を引っ張り出した。
「魔石じゃの。」
「生き返らせるか?出来たら俺が相手をしてやろう。全力でな。」
「ふふふ、簡単じゃ。ほれ!」
魔石が光り輝くとそこにはバーバラが立っていた。死ぬ前に見た姿と変わって無かった。とても懐かしくて泣きそうだった。あいつが生き返ったのなら俺に悔いは無い。
「これで良いのか?」
「ああ、礼を言う。約束通り全力で相手をする。」
「我を楽しませるのだ、いと小さき者よ!」
創造神と召喚神の戦いが今始まる。




