第37話 深淵より来る者
深淵からの脅威に備える為に宇宙の仲間たちにスキルと魔法を実際に体験させたのだが、余りの破壊力に度肝を抜かれていた。だが敵を舐めてやられるよりはちゃんと脅威を知った方が良いと思ってやったのだ。その結果、深淵からの脅威については白兵戦は出来るだけ避ける、やる場合は戦闘型バトルドレスで全力で攻撃する事に成った。そういう訳で現在強化型バトルドレスが各国で増産中だ。
「ゴブ吉暇だな。」
「俺達することないゴブ。」
「だよな~、芋育てるか魚釣るかしか能がないもんな。」
「後は戦いゴブな。これをとったら俺と師匠は駄目っぽいゴブ。」
「魚でも釣って、フィッシュ&チップスでも作るか?」
「じゃあ俺は魔法でエールを作るゴブ。」
「おっ、新しい魔法か?」
「一応、魔導神だから何でも出来るゴブ。」
深淵に備えていたが、そんなに緊張出来るものでもなかった。備えるだけ備えたら気が抜けて俺達は普通の日常に戻っていた。ただし軍隊は別だ、毎日激しい訓練に明け暮れている。元皇帝など宇宙で毎日戦闘訓練を行っていた。俺とゴブ吉は強すぎて訓練する相手がいないのだ、それにレベルがカンストしてるのでこれ以上強く成れないのだった。アーサーやヘラクレス達は毎日ダンジョンで鍛えてるそうだ、俺とゴブ吉が居ると訓練に成らないので仲間外れにされているのだ。それで俺達は二人で黄昏てるって訳だ。
「おやぶ~ん!!やりました!」
「どうしたヘラクレス。何やったんだ。」
「クラスチェンジっす!とうとう成りあがりッスよ!」
「お~凄いぞヘラクレス!キングゴブリン初のクラスチェンジだな。」
キングゴブリンの中でも最強のヘラクレスが待望のクラスチェンジだ、身長3メートル500キロのゴブリンがどうなるのか俺は凄く興味が有った。こいつらだけはクラスチェンジの度に大きく成って行くのだ。
「いいか?ヘラクレス。クラスチェンジ行くぞ。」
「へい、お願いいたしやす。」
別に呪文も何もいらないのだが、ゴブリン達にとって大切な儀式だし、それに俺の唯一の見せ場なのでもっともらしい呪文を唱えてクラスチェンジをやってみる。「ゴブリン召喚神たる我が命ずる、ヘラクレス、限界突破せよ!」ヘラクレスの身体が一瞬眩しく光りクラスチェンジした。
「あれ?ヘラクレス?」
「マスター、クラスチェンジ終了です。」
3メートル有ったヘラクレスの身長が2メートルちょっとに成っていた。物凄く怖かった顔がイケメンに成っていてヘラクレスの面影が無くなっていた。何かイメージと違う。
「つまんないな~、前の方がカッコ良かったぞヘラクレス。」
「酷いッス、マスター!今の方が強いッスよ。」
「それはそうだろ、だけどな~イケメンとか詰まらないじゃん。」
ステータスはキングゴブリンからアルティメット・キングゴブリンになって大きく上昇していた。スキルも限界突破が付いて以前より強いのは間違い無かったが、見た目のインパクトが欠けていたのだ。
「まあ良い、エール飲むか?」
「やけ酒で貰うッス!」
「見た目は絶対前の方が良かったぞヘラクレス。あの笑うと、女子供が失神する凶悪さが最高だったんだがな~。」
「俺も何だか背が低くなって気に食わないッスよ。でもまあ強くなったから良いッス。」
「仕方ないゴブ、ある程度大きくなると今度は小さく成るのは定めゴブ。あまり大きく成ると邪魔になるから仕方ないゴブ。」
ウウウウ~!!!! 俺の街に警報が鳴りだした、そして俺の左腕の通信装置が振動している。ゴブ吉の腕の通信機もだ。
「こちら男爵、どうした?」
「こちら、危機管理センター。オーガ偵察艦隊より入電。ホワイトホール発生。」
「そいつが深淵なのか?」
「分かりませんが、ホワイトホールから宇宙船が大量に出て来ているそうです。」
「分かった、俺達もアークロワイアル改で直ぐに上がる。」
ホワイトホールがドンな物かは知らないが、ブラックホールの反対の性質のものならドンドン宇宙船を吐き出すのも理解できる。きっとどこかからこの世界へ宇宙船を送り込んできている者が要るのだ。
「エミリー、アークロワイアル改発進!」
「了解、親衛隊に合流する。」
今俺達の帝国に有る戦艦全部1400隻がホワイトホールの発生現場に向かっている。本国の防衛は戦艦以外の小型艦10万隻が行っている状態だ。俺は戦力を小分けにして出し惜しみをする気は全くなかったのだ。勿論前皇帝や他の皆も同じだった。俺の乗る旗艦アークロワイアル改は親衛隊との戦いの後改修されて更に大きく重装甲に成っていた。全長2キロ1000万トンの要塞と化した戦艦だ。この大型化には理由が有った、俺の船だけは魔法で防御と攻撃を行うので、オリハルコンコーティングを出来ないのだ。そこで物理的な装甲を貼り付けていたら重く成り過ぎて動けなくなったので動力炉を継ぎ足していったらこんなに大きく成ってしまったのだ。
「どうだ皇帝、あれが深淵か?」
「我輩は前皇帝だ!お主が皇帝だぞ男爵!」
「ああ、そうだったな忘れてた。」
「深淵かどうかは分からんが無数の宇宙船が出て来ている、通信も何も無いのは敵だからだろうな。」
「じゃあ、行こう。」
ホワイトホールから出て来た宇宙船はこちらに連絡を取ろうとはしていない様だ、敵対する気が無いのなら連絡を取るはずなので多分敵だ。
「全艦アークロワイアル改に続け!エミリー全速前進。」
「アークロワイアル改全速前進!男爵、燃えるな!」
何も言ってこないので、何時もの様に突撃する。先頭は俺のアークロワイアル改それに全ての戦艦が2列に成って続いてくる。全長700キロに及ぶ戦艦で出来た竜だ。密集隊形でもこれだけの大きさがある艦隊なのだ相手が気が付かない事は有りえない。
「敵艦からの攻撃を確認、敵艦ミサイル発射。」
「よし、こちらも発砲開始!」
「敵艦隊総数5万隻。」
敵艦隊の規模が分かる様になって来た、数は多いがどれも小型の艦ばかりだ、500メートルを超える大型艦は100隻程度しか居ない。多分この事を知っていたご先祖様達が今の戦艦のサイズを決めて沢山作っておいたのだろう、帝国中に戦艦が有ったり戦艦の数で地位が決まったりしていたのは、こいつらに対抗するためだったのだ。一見無駄に見えた事も今となっては有難い事だった、戦艦が無ければ帝国が無茶苦茶にされるのは目に見えていた。
「皇帝よ、この日の為に昔の人達は頑張って戦艦造ってたんだな。」
「そうだな、今になって意味が分かったぞ男爵。」
艦隊戦はこちらの方が遥かに優勢だ、こちらの戦艦の攻撃力は相手の艦の防御力を遥かに上回っている。敵艦に魔力のシールドみたいな物も見られるがオリハルコンコーティングされた主砲の一撃で消滅している。
「接近するな!遠距離射撃で仕留めろ!スキルや魔法が届かない距離で戦え!」
俺はスキルや魔法について熟知していたので、相手の弱点は良く知っていた。スキルも魔法も接近戦でしか役に立たないのだ。防御魔法だけは宇宙空間でも役に立つが、オリハルコンコーティング弾の前には無力だった。
「敵艦隊逃げます!」
「各艦散会!敵を惑星に下すな。降りられるとスキルと魔法を使われるぞ。」
スキルと魔法の恐ろしさを知っているので、逃げる敵を容赦なく撃ち落とす。こちらの戦艦の方が大型なので推進剤も豊富で速い。幾ら逃げても追いつかれて落とされていた。
「勝ったな。」
「うわ~!それはフラグごぶ!」
「何だって!駄目なのか、ゴブ吉!」
「緊急入電!!緊急事態発生!」
「あっちゃ~、本当にフラグかよ。」
「本国にダンジョン発生!敵が出て来ている模様!」




