第36話 スキルと魔法
あらためて自分たちの目の前でスキルと魔法を見た宇宙の住人は人間の強さに度肝を抜かれていた。バトルドレスよりも強い人間が居るとは思わなかったのだろう。これがスキルと魔法の力なのだ、これを知らずに戦えば宇宙に居る仲間たちは白兵戦になれば簡単に負けてしうだろう。
「さて次はオーク達だな、準備は良いか?」
「男爵様、最初からバトルドレスで行きたいのですが・・」
「そうか、戦闘装備で戦うと良いぞ。」
バトルドレスはコーティングされているので光学兵器は効かない、特殊合金は相当な耐久性能が有るので壊すためにはハンマー等の重量武装をするのが一般的だった。オークのバトルドレスの武装もハンマーやメイスを装備していた。
「良いのですか、ハンマーの衝撃力は5トン位有りますぞ。人間に耐えられるものでは有りますまい。」
「大丈夫だと思うぞ、どうだ重騎士?」
「やって見ないと分かりません男爵様、どの位の力か分かりませんから。」
「それもそうだな、オーク。地面を力いっぱい叩いてみてくれ。」
オークのバトルドレスがハンマーで地面を叩くと地響きがしてハンマーが50センチ程地面にめり込んでいた。
「ほう中々のものですな、トロル並みのパワーですな。」
重騎士は涼しい顔でそう言った。トロルのパワーを知っているならかなりの上位騎士の様だ、試しにステータスを覗いて見たらレベル61だった。ダンジョンの60階層に行けるレベルなのでトロル位なら一人でさばける位のレベルだ。これなら大丈夫だ。
2メートル全備重量300キロのオーク型バトルドレス5機と重騎士5人が対面して立っている。重騎士達は皆デカイ人間ばかりで2メートルで120~130キロ位が普通だ、それにフルアーマーと重盾・重槍の150キロを加えるとバトルドレスと変わらない位の重量があるのだ。まあこんな重さで戦うのだから当然重騎士の連中はそれなりのスキルが無いと動くことも無理なレアな職種なのだ。
「始め!」
「身体強化!防御力アップ!」
バトルドレスの突進を重騎士達は軽々と受け止めている、彼らは身体強化の他に防御力を一時的に上昇させるスキル等も持っているのだ、そして彼らがヒーラー等の支援を受けだすと難攻不落の人間要塞となるのだ。
「なんだこいつら!硬い!」
「うわ~!!」
重騎士に突進を軽く止められ、乱戦になれば実戦経験豊富な重騎士達に関節部分を攻撃されてオーク達は防戦一方だ。いくら破壊力がある攻撃でも重騎士達は盾で軽く受け流してしまうのだ。まともに受けずに相手が体勢を崩す様に受けて攻撃するのだ。実戦経験の差は無情だった、30秒でオークのバトルドレスは壊されてしまった。
「負けた。完敗だ。」
「スピード、パワー、テクニック全てで叶わない。」
オーク達は自信喪失していた、バトルドレスの戦闘装備でも叶わないのだ。彼らには人間たちが化物にみえた事だろう。
「予想以上に強いな、まるで鬼人の如しだ。スキルと魔法とはこれ程のものなのか。」
「スキルと魔法の力も有るが、彼らは子供の頃から実践経験豊富だからな、少しくらいの訓練じゃ、かなわないと思うぞ皇帝。」
「我々の訓練はタダの遊びだった訳か・・・悔しいな。確かに死なない様に加減した訓練だからな、この星の人間からしたら甘いのだろうな。」
そう彼らの訓練は甘い、軍隊の訓練は死ぬまではやらないのだ。だが俺達の世界の冒険者は違う、へますれば死ぬのだ。そして生き残った者だけが高位ランクの冒険者になれるのだ、実力も運も両方備えているものが高位冒険者なのだ、はっきりいって宇宙に住んでいる機械に甘やかされた奴らより遥かに強いのだ。
「皇帝、まだやるか?」
「やる!勝てなくとも逃げはしない。我らはオーガだがらな。」
「いい心がけだ、今度は飛び道具を使ってみたらどうだ?飛び道具なら勝てると思ってるんじゃないか?」
「それは流石に反則だろう、剣を持った相手にバトルドレスに銃は過剰だ。」
「構わんよ、これで本当の強さが分かるはずだ。」
聖騎士達に今度は飛び道具を使う、本気の戦いになる事を伝えた。彼らはオーガ族の持つ実弾兵器を見たことが無いので一度見せておくのも良いだろう。
「皇帝、実弾兵器を撃って見てくれ、聖騎士達に銃撃を見せてやりたい。」
「良いぞ、壁に向けて撃つぞ。」
オーガ族のバトルドレスの標準型実弾兵器は10ミリ口径毎分600発のマシンガンだ、1発の威力は衝撃力が300キロ程度で初速が音速程度だ。これ以上だと宇宙空間で使用した場合自分の船や設備が破壊されるので威力を落としている。しかし生身の人間や生き物には致命的な威力が有った。
「どうだ?聖騎士達。」
「速いですな、キラービーより小さくて速い。でもまあ、見えない事は無いですな。」
彼らには銃弾が見える様だ、ダンジョンのキラービーは流石に音速は出ないが、物凄く速くて毒を持っている。それに薄暗いダンジョンで高速飛行する生き物は物凄く見つけにくいのだ。
「用意は良いか、皇帝?」
「本当に銃を使って良いのか?」
「構わないそうだぞ、聖騎士達は銃弾が見えるそうだ。」
「ならば遠慮なく行かせてもらうぞ。」
試合開始と共にオーガのバトルドレス5体からサブマシンガンが乱射される、聖騎士は身体強化と固有スキル聖なる障壁で銃弾を軽く跳ね返している。彼ら聖騎士は魔法も使えるレア職なので重騎士以上に硬いのだ、それに聖騎士は全員回復魔法が使えるので腕や足が飛ばされた位では負けることは無い、直ぐに自分か周りの騎士が回復するのだ。
「銃撃は効かない、全員突撃せよ!」
「来るぞ、迎え撃て!」
銃撃が全く通じないのでオーガのバトルドレス達は突撃に切り替えた様だ。だが聖騎士達は接近戦も物凄く強いのだ。なにせ銃弾が見える程の動体視力に実戦経験も豊富な相手に突撃してもいい様に関節を攻撃されてバトルドレスは倒れて動かなくなってしまった。
「完敗だ男爵、我々が何をしても勝てない事が分かったよ。」
「うん、それが分かれば良いんだ。その為の試合だからな。」
「それに、彼らは本気じゃなかったんだろ?こちらは銃まで出して本気だったが。」
「そうだな、彼らは5割位の力だと思うぞ、本気なら色々な魔法何かも使うからな。」
「そうか良くわかったよ、スキルや魔法を使う相手には絶対接近戦をしてはいけないって事が。バトルドレスを着てても負けるんだからな。」
「そうだな、バトルドレスに自信を持ちすぎると危険だな。宇宙でなら必ず宇宙空間でやっつける事だ地上に降りられると厄介だぞ。」
彼らは心のどこかでスキルや魔法を舐めていたと思う、だが今回の件でバトルドレスを使ってもスキルと魔法に勝てない事が分かったはずだ。深淵から来るものの事を本気で心配しはじめた様だ。




