第34話 皇帝とフラグ
オーガ帝国親衛隊に勝った俺は正式にオーガ皇帝から皇帝の位を移譲されてしまった。オーガ帝国本星で1週間に渡る大々的な宴会が行われた。宇宙中に中継された放送による俺の突撃に次ぐ突撃は俺の勇猛さの証としてオーガ族全員に好評だった様だ。
「おいバルト!お前副皇帝な!」
「え!何を馬鹿な事を」
「それじゃ俺帰るから、後の事はよろしく頼む。」
「ちょっと待って下さい!男爵様!」
俺はレベル999の力で全力で逃げ出した。オーガ帝国なんて知るか、俺はそんな面倒なもの知らないのだ。俺は領地に帰って芋を育てるのだ。
「エミリー、アークロワイアル発進!領地に戻る。」
「了解、そろそろだと思っていたぞ!我が夫よ。」
「早く温泉に入りたいゴブな。」
「やはり自分の国が一番ですな、主殿。」
ゴブリン帝国の王になった時は王の娘のエリザベスに丸投げした、オーク共和国を手に入れた時もオーク穏健派に丸投げだ。そして1000年以上の歴史のあるオーガ帝国を手に入れても勿論オーガのバルトに丸投げなのだ。俺が指示するのは一つだけ、民の為に尽くせ!それだけだ、後は知らん。
「なあ、何であんたがここに居るんだ?」
「我輩は皇帝を止めたので行くところが無いのだ。」
「でもここアークロワイアルだぞ、カテゴリー1の星に帰るんだぞ。」
「知っておる、約束の星に帰るのだろ?」
「約束の星かどうかは知らんが、俺の生まれた星に帰るんだ。」
「儂も連れていってくれ、敵対する気は全然ないのだ。ただ儂に勝った男爵の故郷が見たいだけだ。」
「まあ良いけどな、だけど働いてもらうぞ、自分の食い扶持は自分で稼げよな。」
何故か皇帝がついてきた、まあ悪い奴じゃなさそうだから領地に連れて帰って世話する事にした。俺の屋敷に住んで色々な所を見学に行ってるようだった。
「男爵、今日は温泉に行ったぞ。いや~素晴らしい。」
「そうか、それは良かった。」
次の日
「男爵、今日は人魚達と魚を釣ったぞ。面白かったな~。」
「そうか良かったな。」
「そろそろ、本当の目的を話してくれても良いんじゃないか?皇帝。」
「何だ気が付いておったのか?」
俺の星に偉い奴らが来るのは珍しくないが、皇帝が一人で来るのは怪しすぎた。せめて付き人と一緒に来るなら旅行か興味本位かだろうと思うが単独は無いな。よっぽど人に言えない重要な事だろうと俺は思っていた。
「深刻な悩みなのか?」
「銀河の存続に関わる事だ。多分深刻なのだろうな。」
「なんの事だ?俺には関係ないと思うが?」
皇帝が言うには、古い言い伝えが王家には残っているのだそうだ。その言い伝えによると周期的に深淵と呼ばれる所から魔法やスキルを操る外敵が来るのだそうだ。そしてその深淵から来る者達は邪悪で、この銀河に住む者達を無差別に殺すのだそうだ。その邪悪な者達に対抗する為に、王家は魔法の効かない金属であるオリハルコンを貯めこみ、弩級戦艦を造って用意していたのだそうだ。
「どうも男爵は深淵とは違う様な気がするのだ。邪悪さが足りんのだ。」
「深淵が何かは知らんが、俺はそれ程邪悪でも無いと思うぞ。」
「そうなのだ、この国をちょっと見ても邪悪どころかユートピアにしか見えんな。魔法を使うからてっきり深淵の者と思って親衛隊を出したのだが、違った様だ。」
「まあ、その話がおとぎ話かも知れないしな!気にするな皇帝。」
「そうだな、儂の勘違いにちがいないな男爵。」
「フラグごぶ!・・間違いなくフラグごぶ。」
「やっぱりそう思うか?ゴブ吉。」
「思うゴブ、皇帝がわざわざ言ってるんだから絶対来るゴブ!」
どうやらフラグが立った様だ。皇帝の立てたデカいふらぐだ。深淵から来る者。何だか嫌な響きの連中だ、大人しく引っ込んでいれば良いのにわざわざこっちに来るらしい。
「なあ皇帝、俺はどうしたら良いんだ?」
「来るか来ないか良くわからんが、やはり備えは必要だろう。民を守るのが王の務めだからな。」
「そんじゃ、あんたは親衛隊の指揮官な。」
「何だと、儂はもう皇帝では無いのだ。男爵に負けた負け犬なのだ。」
「いいじゃないか。俺に負けただけで深淵に負けた訳じゃないだろ。それに親衛隊の事を一番知っるのはあんただ。」
「・・・分かった。どこまで出来るか分からんがやって見よう。」
俺はその日から、ぶっ壊した親衛隊の戦艦を回収し頑張って修理した。俺の星でもオリハルコンは少し取れるので頑張って集めている。ゴブリン帝国やオーク共和国にも協力してもらっているのは当然だ。親衛隊の艦は6隻改修出来た。そして宇宙中から集めたオリハルコンでオーガの各種族の秘密戦艦6隻にオリハルコンコーティングをする事が出来たのでオリハルコン艦隊は全部で12隻になった。
「どうだ皇帝、オリハルコン艦隊は?」
「私はもう皇帝ではない、ただのオリハルコン艦隊の司令だ、男爵様。」
「何だか言いにくいな、もう名前をコウテイに変えろよ。」
「無茶言うな、名前はグスタフだ!いい加減に覚えてくれ男爵。」
「お前も俺の事を男爵って言ってるジャン。」
「・・・・・男爵って、名前ではないのか?」
「俺の名前はダイだ!男爵じゃないぞ。」
「ほ~、初めて知ったぞ。お主こそダンシャクに名前を変えたらどうだ?宇宙の皆は名前が男爵だと思っておるぞ。」
皇帝・・じゃない元皇帝はとても有能だった、子供の頃から政治や戦闘の教育を叩き込まれたらしい、俺よりも遥かに頭が良くて働き者だった。オリハルコン艦隊も元皇帝に任せておけば安心だ俺が指揮するより美味くやるだろう。俺が皇帝に勝てたのは俺にゴブリン達が居るからだ、俺はゴブリン達の事は何でも知っているし、美味く扱えるが他の種族はサッパリ分からないのだ。深淵から変なのが来たときは俺はゴブリン達と戦うのだ。この宇宙を守るために。