第32話 決戦
ヒーラー部隊の防御魔法が破られたという事は多分攻撃魔法も利かないはずだ。ダンジョンで言えばドラゴンみたいに魔法耐性が異常に強かったり、物理攻撃が無効にされるミストみたいなものだろうと思う。兎に角離れていたら負ける、俺の直感がそう叫んでいる。
「敵第2斉射来ます!着弾まで20秒。」
「ヒーラー部隊頑張れ!」
「魔道部隊、旗艦前方にアースウォールを作れ。」
俺の旗艦は無茶な追加装甲のお陰で物凄く足が遅かった、亀が進むようなもので、近づく間は無茶苦茶攻撃を受けるのだ。防御魔法だけでは心もとないので魔道部隊にも手伝わせて防御する。ファイアウォールやアースウォールは防御にも使えるのだ。
「着弾します!」
ゴオ~ン!!!
「2発着弾、追加装甲1番2番消滅!」
真空なのに艦内に物凄い音がする、館内は空気が有るから当たり前か。足元が結構揺れている。2発でこれだから10発位当たると旗艦でも不味い気がする。
「オーガ族、全力斉射!」
敵に主砲を撃たれると不味いので、こっちのオーガ族にも主砲を撃って貰う。敵が防御してくれればその隙に近づける。アークロワイアルの陰からオーガ族の艦が顔を出して主砲を撃ち、又すぐに陰に隠れる。まだ敵は8隻いる、最初にやった2隻以外は健在だ。こちらも何とかアークロワイアルが先頭で耐えてるお陰で10隻全部無事だ。
「しかし親衛隊ってすげ~な。ガッチリ陣形を守って一斉射撃だもんな。落ち着いてるよな。」
「相手も馬鹿みたいに突撃してくるからビックリしてると思うゴブよ。」
「頭を使う作戦なんて無理だぞ、俺はカテゴリー1の野蛮人だぞ。突撃有るのみだ。相手の頭をたたき割れば俺達の勝だ。」
「流石は男爵様!素晴らしい気迫と根性でございます。」
「それでこそ私の夫だ!嫁として誇らしいぞ!」
多分オーガ族だけしか喜ばない俺の作戦にオーガ族のバルトとエミリーが喜んでいた。俺の突撃はゴブ吉達魔導士の攻撃が近くでしか撃てないので、渋々やっているのだが、どうやら男らしい作戦だと勘違いしている様だ。
「皆の者!オーガ族の根性を男爵様にお見せするのだ!」
「青の部族、突撃します!」
「白の部族、突撃する!」
「灰の部族、突貫する!」
今まで旗艦の後ろに隠れていたオーガ族の戦艦が突如後ろから飛び出した。どうやらオーガ族は隠れているのが嫌な様だ。それぞれが目標を決めて主砲を全力で撃ちだした。
「男爵様ばんざ~い!!」
全艦俺のアークロワイヤルより速いのでドンドン取り残されていく。お陰でこちらに来る砲弾の数は減ったが、オーガ族が危険だ。1対1なら互角でも練度が段違いなのだ。
「後10秒で接触する。」
「敵艦を拡大してくれ!」
「了解、敵艦拡大する。」
「あれは・・・オリハルコン?」
「オリハルコンは魔法を通さないゴブ。」
敵の戦艦は見た事が有る色をしていた、金色の独自の色合いの金属オリハルコンの色だ。オリハルコンは魔法をはじく希少金属だ、それで艦全体を覆っていた。多分主砲の砲弾にもオリハルコンでコーティングした弾が有ったのだろう。防御魔法が無効化された秘密が今分かった。これではゴブ吉のイージスは使えないな、魔道部隊の攻撃魔法も無駄だ。
「よくあれだけの量のオリハルコンを集めたもんだな、すげ~な。惑星何個分だろうな。」
「黒の戦艦轟沈!」
「赤の戦艦航行不能!」
「負けそうゴブ!」
「アーサー!ヘラクレス!発進準備!」
「お任せ下され、主殿!」
「マスター、準備よしッス!」
俺の隠し玉バトルドレス部隊の出番だ。アーサーならオリハルコン等大根を切るのと変わらない。そしてヘラクレスの乗る重バトルドレスはドリルハンマーを装備している。ロケットブースターとバトルドレスの怪力で戦艦の装甲をぶち破るはずだ。
俺の旗艦アークロワイアルからアーサーのバトルドレスが発進する。そして俺の後ろに隠れていたオーク族のステルス戦艦は密かに親衛隊の戦艦に近づきヘラクレスのバトルドレスを発進させた。これが俺達ゴブリンの最強の2人だ。
「アーサー、ヘラクレス。オリハルコンの装甲を破ればゴブ吉達魔道部隊がやる!お前らは装甲をぶち破る事だけに専念しろ。戦艦を沈める必要はない!」
「了解!」
「了解っす!」
「黒の戦艦2隻轟沈!」
完全に2つの艦隊が入り乱れた乱打戦になった、俺の艦隊は早くも4隻沈められている。物凄く不味い状態だった。ここから押し返せるか?出来なければ負ける。
「くそ、俺のイージスが役にたたないゴブ。」
「焦るなゴブ吉、アーサー達がやってくれるはずだ!」
「ヒーラー部隊防御魔法を張り続けろ!後少しの我慢だ。」
何だか昔を思い出した、ダンジョンで俺とゴブ吉がお荷物で何時もアーサーとバーバラに助けられていた事が有ったよな。歴史は繰り返すって奴なのかな。




