第30話 秘密兵器が集まった
オーガ族の族長会議の後1週間程経ってから、オーガ族の族長から次々と秘密兵器の提供が有った。どの部族も隠れて親衛隊に対抗する戦艦を造っていた様だ。世間に出すと反乱を疑われるので今まで隠していたのだそうだ。やはり戦闘に特化した種族は考える事が過激だった。
「男爵様、我々の秘匿戦艦をお使い下さい。元々親衛隊の戦艦に対抗する為に造っておりますから強力な艦ばかりですぞ。」
「お前ら、そんな物造ってたのか!」
「勿論です、備えあれば患いなし!ですぞ。」
各部族の戦艦は皆大きかった。親衛隊の超弩級戦艦に対抗する為に当然の様に超弩級戦艦になっていた。例えば赤の部族の戦艦は赤く塗られた超弩級戦艦で、動力炉を極限までチューンアップして攻撃力を増していた。青の部族の弩級戦艦は親衛隊の弩級戦艦を上回る主砲の数を誇っていた。そして黒の種族はこれまた動力炉を極限まで搭載してエネルギー兵器の威力を親衛隊の弩級戦艦よりも増していた。・・・いや・・チョット待て、なんだこれは!
「おい、バルト。この秘密兵器って全部攻撃力に全振りしてる超弩級戦艦だよな?」
「勿論です。攻撃は最大の防御ですからな。攻撃しないとそもそも勝てませんぞ。」
「それでもバランスは必要じゃないかな?」
「オーガ族は前進有るのみです!」
こいつら本当にカテゴリー3の種族なのか?魔物と同じ考え方じゃん、強い時は強いが一旦不利になったら立て直せない考え方じゃん。頼りになるのか成らないのか微妙な感じがする。それでも親衛隊の弩級戦艦に匹敵するサイズの戦艦が6隻も集まったのだから良い事なのだろう。
「男爵様、我ら黒の種族の秘密兵器をご覧くだされ。これは凶悪な性能ですぞ。」
「お~!黒の種族は学者の集まりだから凄いのが有るんじゃないか?」
「勿論です、威力が有り過ぎて封印していた兵器を引っ張り出して参りましたぞ。存分に使って親衛隊を打ち破って、我々に研究させて下さい。」
黒の種族はオーガ族の中でも学問に特化した種族だ。早い話がマッドな研究者がノリと勢いで造った秘密兵器が封印されていたのだそうだ。見るからに禍々しい形をした戦艦?が2隻。頭が異様に大きく成った、オタマジャクシみたいな形をしていた。
「こちらの戦艦にはレーザー砲、あちらには重質量弾をレールガンの100倍の速度で撃つ事が出来る多重薬質砲となっております。」
「レーザー砲って反射されたり散乱させられるんじゃ無かったかな?」
「低出力ならそうですが、これは違います。」
これは小型核爆弾を10個同時に爆発させて造ったレーザーを収束させて攻撃するのだそうだ。収束地点の温度は100万度。どんなコーティングも装甲も溶かして破壊する事が出来るそうだ。
「凄いな、こっちのヤツは何だ?」
「こちらは、通常の弾頭の100倍の質量を持つ金属を小型核爆弾で順々に加速して、レールガンを遥かに上回る運動エネルギーを持たせた主砲です。これが当たれば親衛隊の戦艦は爆散するでしょうな。」
「凄いな、俗にいうムカデ砲か、でも内部で核爆発とか起こして平気なのか?」
「エネルギーフィールドで抑えてますから、1発だけなら大丈夫です。」
「1発しか撃てないんか。」
「もっと大型化すればいけるでしょうが、何分予算の都合で試作機だけで終わりました。1年程時間を頂ければ連射出来る戦艦が出来ますが・・・今回は間に合いませんな。」
「まあ良いや、少なくても相手がビックリするのは間違いないだろう。上手く行けば2隻落とせるしな。撃った後は囮として頑張って貰おう。」
とんでも兵器達が集まって来た様だ、俺の戦艦も今改修中だ。オーク族の様に強気になれない俺は何時もの様にまず防御だ。ダンジョンの強くて知らない相手にするように、まず自分が死なない様にするのだ。死ななければ次もあるし、対策だって立てられるのだ。俺はゴブリン王国に頼んでアークロワイアルに追加の装甲を付けて貰っていた。
「エリザベス。俺の戦艦どうなってる?」
「現在追加の装甲をガンガン取り付けております。主に艦首を中心に大型装甲、リアクティブ装甲、多重複合装甲等々。現在知られている全ての装甲を張り付けております。」
「お~凄いぞエリザベス!亀の様に守りを固めるのだ。」
「分かりました、お任せください。男爵を死なせるわけには行きません。」
よそよし、俺の乗る旗艦アークロワイアルは防御にステータス全振りだ。他のオーガ族の戦艦8隻が攻撃に全てを割り振っているので丁度良い。
「ゴブ吉、亀作戦で行くぞ。」
「あの作戦は疲れたゴブな。」
「でも、大盾のお陰で死ななかったから良かったんじゃないか?」
「そうゴブな、生き残るのが一番大事ゴブ。」
相手の事が分からないので、出来ることは全てやって備える事にする。魔法が効けば俺達が勝つのは間違い無いだろう、その時にはこの用意は笑い話として皆で話せば良いのだ。俺はこの用意が笑い話になってくれるように祈っていた。




