第20章 緑の巨人が出来た
俺達の宙域に入って来たオーク艦隊の戦艦30隻を撃破したニュースは瞬く間にゴブリン王国に広がった。俺達が星に帰ってきたら大騒ぎになっていた。ゴブリン王国が始まって以来の大戦果なのだそうだ。ゴブリンがオークに勝っただけでお祭り騒ぎになるのはチョットいただけないが、まあしょうがない。戦意の高揚は必要だ。やりたくは無いが俺達はメデアに出て毎日愛想を振りまいていた。勿論次の準備も始めている。俺の領地の戦士達が来てくれたので、ヒーラーとメイジ達を戦艦に割り振ったり。ソードゴブリンやウォーゴブリン達にバトルドレスの訓練なんかもやっていた。これにより俺専用の艦隊が出来上がった。超弩級戦艦を旗艦とする戦艦20隻の艦隊だ。
「男爵様、出来ましたわ!アーサー様専用バトルドレス。」
「へ~、専用とは豪勢だな。」
「ただチョットだけ問題が・・・・」
「いかがいたしたのですか?」
「あのアーサー様、少々大きなバトルドレスが出来上がったのです。」
俺がエリザベスに頼んでいたバトルドレスが出来た様だが何故かエリザベスが煮え切らない。超弩級戦艦を造る技術力が有るのだから何とかなると思ってたのだが、何か問題でも有るのだろうか?
「どうした?エリザベス。兎に角見せてくれ。」
「はい・・それではこちらにどうぞ。」
俺達はエリザベスの案内で中央公園にゾロゾロ歩いて行った。途中で国民に熱狂的な歓迎をされたので手を振って愛想笑いをずっと浮かべているのが少々苦痛だった。
「なんじゃこれは!」
「はあ、超弩級バトルドレス・アーサー専用でございます。」
「少々大きすぎる様な気が・・・」
「少々どころか、物凄く大きいゴブな。」
目の前に直立2足タイプのバトルドレスが鎮座していた、高さが50メートル位有るのか?デカかった。
「なんでこんなにデカいんだ?」
「それがですね・・・」
アーサーの動きをトレースする機械を造っていたらドンドン大きく頑丈になって行ってとうとうこのサイズになってしまったらしい。しかし大きいので各部に余裕が有り宇宙空間でもかなり自由に移動出来て、攻撃力・防御力共にかなりのモノらしい。良く見てみると背中に剣が付いている。50メートルの剣を振り回すバトルドレスとは凄いを通り越していると思うのは俺だけか?
「何かカッコ良いゴブ、俺も欲しいゴブな~。ロマンを感じるゴブ。」
「拙者も気に入り申した。これで主の役にたてます。」
「なかなか漢らしいバトルドレスじゃないか。良かったな、アーサー殿。」
50メートルのバトルドレスにアーサーがイソイソと乗り込んで行った。胸の奥にコクピットが有る様だ。デカいので空気何かは無限に供給できるしエネルギーも内部動力で1年位供給出来るらしい。もはや人型の宇宙船みたいな感じだ。ゴブ吉が異常に興奮して欲しがっているが無視する。
「アーサー!ゆっくり動けよ。そんな大きいのが動き回ると俺達が危ないからな。」
「了解です。主殿。」
アーサーが乗ったバトルドレスがゆっくり動き出す。ゆっくりなのにデカいから早く見える。背中に有った50メートルの大剣をゆっくり振っているが物凄い音がする。剣先が音速を突破した衝撃音だ。そして剣に水蒸気がまとわりついている。俗にいうベイパーってやつだ。
「主殿、これなら行けそうです。ご覧くだされ。」
バトルドレスの大剣が赤く光って見える。多分アーサーが剣に気を注入しているのだろう、ただの金属の剣が50メートルの光の大剣になったわけだ。アーサーは本気で戦艦に切りかかるつもりの様だ、そして多分本当に真っ二つに切ってしまうのだろう。しかし大剣で良かった、これが斧だったら、機体の色がゴブリンカラーの緑色なので〇クとか言われる所だ。
「大変です!国王!」
エリザベスのお父さん、前国王が走って来ている。運動不足のおっさんが走ってるから本当に何か大変な事が起こった様だ。
「どうした?何か有ったか。」
「偵察衛星がオーガの艦隊を補足しました!」
「なに!オーガが何でこっちに来るんだ?」
「迎撃するゴブ!」
「ふっふっふっ、主殿。拙者が切り刻んで見せましょう。」
「待て!待ってくれ、多分それは味方だ。私の叔父上だと思う。」
エミリーが俺の配下を連れに行った際に、本国の叔父上に救援要請をしたらしい。俺達だけでは負けそうなので助っ人として頼んだ様だ。それが多分今着いたのだろうと言う事だ。
「お前そんな事してたの?」
「妻として夫を助けるのは当然だ。そうだろう?」
「いやまあ妻が夫を助けるのは良い事だが・・・」
「そうだろう。そうだろう。」
お前俺の妻じゃ無いじゃん。って言うのは止めた。こいつなりに俺の事を心配してやってくれた事だからだ。それに、少しでも味方が増えるのはうれしい事だ、それに上手く行けばオーガ族とは争わなくて済むかも知れないのだ。
「オーガ艦隊から通信が入っています。こちらに繋ぎます国王。」
「ああ、頼む。」
「こちらオーガ族赤色艦隊司令、バルト。ゴブリン王国の代表と話がしたい。」
「お~!叔父上!」
「な!エミリーか!」
「そうだ叔父上。美人でスタイル抜群のエミリーだ!」
「くっ、その馬鹿げた物言い。本物だな。何故そこに要るのだ?代表はどうした?」
「ゴブリンの国王なら私の隣に居るぞ!今、変わるからな叔父上。」
「え~、変わりました。初めまして司令。ゴブリン王国の国王してますダイ男爵です。」
「君がエミリーの旦那のダイ男爵か!本当に存在したとは・・・・ビックリしたぞ!」
「いえ・・あの・・旦那とは・・」
「今から行くから待っていろ!いや~目出度い!こんな嬉しい事はないぞ!エミリーの阿保に旦那さんが出来るとは・・・いや~長生きはしてみるもんだな。」
「何を言う叔父上、私は以前のエミリーでは無い。いまやクイーン級の美女なのだぞ!」
「ワッハッハー!冗談が上手くなったではないか。この合成画像も見事な出来だ。これなら騙されるアホウが居るかも知れんな。」
エミリーが良いとこのお嬢さんなのは間違いない様だが、叔父さんの評価は低い様だ。オーガ族とはもしかしたら凄く優秀なのだろうか?俺からしたらエミリーは凄く頭が良いように思えるのだが。
まあ何はともあれ、このオーガ艦隊は戦いに来たのではない様だ。それだけは一安心だが、俺がエミリーの旦那って言うのは何処から出て来た話なのだろう。
「外堀を埋められてるゴブな~。」
「主殿なら嫁の100や200楽ショーでござるよ。」
「楽ショーな訳ねーだろ!」
俺は渋々オーガ艦隊の受け入れ準備を始めた。




