第2話 空から槍がまた降ってきた
空から落ちて来た3人は朝早く起きて又ガヤガヤ騒ぎ出した。
「腹減ったであります!」
「何か食べたいです~。」
「芋下さい。芋!」
「朝飯位食わせてやるから黙ってろ!ただし食った分は働いてもらうぞ。」
3人組に朝飯を食わせる、野菜のスープと焼き肉とパンだ。俺達の村は仕事がハードなので朝から沢山食べるのだ。しかしこいつら兵士と言う割には偉く弱いので聞いてみた。
「なあ、なんでお前らそんなにレベルが低いんだ?兵士なんだろ?」
「俺達ゴブリンは弱いから全然育たないであります。」
「そうそう、だってゴブリンだもの。」
こいつらより弱いのはスライムしか居ないそうだ、そのスライムも今では絶滅して居なくなったからゴブリンは全然成長しないらしい。
「お前はホブゴブリンだよな?どうして成長したんだ?」
「私は、病気で死にかけていたオークをたまたま倒して成長したのだ。」
「あちゃ~、お前ら全然ダメじゃん。」
「当然!だって俺達ゴブリンだし。」
こいつら駄目だ、最初から諦めている。中途半端に利口なので色々理由を付けて努力しない気なのだ。俺に言わせれば甘えてるのだ。泥にまみれて地面をはい回ったり森の中で1年間魚を取り続けていた俺から見ればこいつらは負け犬だ、ゴブリンの恥なのだ。
「良し分かった、お前たちの腐った根性を叩きなおしてやる!アーサー!」
「はい、主殿。おまかせ下さい。このクソ共を立派なクソ野郎にして見せます!」
「え!なんなの?・・なにするの?」
「お前ら来い!強くしてやる!」
「アーサーさん、これは一体?」
「アーサーではない!軍曹とよべい!」
嫌がる3人をアーサーは連れて行った、幾ら嫌がってもアーサーから逃げられる訳はなかった。ついでにキング達にもあの3人を鍛える様に頼んでおく。そして俺とゴブ吉はロープを伝って槍の中に入って見る事にした。この槍の中に部屋が有って住めるのだそうだ。俺とゴブ吉は空を飛ぶというこの槍に凄く興味があったのだ。
「なんか狭いゴブな。」
「本当だ、暗くて狭いな。」
「椅子が3つ有るゴブ。」
「小さくて俺じゃ座れないな。あいつら用の椅子だろうな。」
「じゃあ俺が座るゴブ。」
---ゴブリン族・・確認・・・AI作動開始しますーーーー
「おっ、明かりがついたぞ。」
「何か言ったゴブ。」
---ご命令を・マスターーーー
「お前誰ゴブ。」
---偵察艦337の人口知能バリキリーデスーーー
「何だ人工知能って?」
「知らんゴブ。」
---警告!警告!惑星軌道に敵艦!・・敵艦発見!---
「おい、ゴブ吉何だかやばそうだ。降りるぞ!」
「分かったゴブ。」
人口知能とやらがピーピー喧しく騒ぎ出して敵艦とか言うので俺達は槍の中から出る事にした。こんなところで敵に襲われたらたまらないからな。ロープを伝って大急ぎで畑に降りる、無駄に高いレベルのお陰で楽ショーだ。
「ヘラクレス!キング達を集めろ、敵が来るらしい。」
「ゴブ吉、魔導士を集めろ。」
キングゴブリン隊の隊長ヘラクレスと魔導士部隊の隊長ゴブ吉に敵襲の迎撃準備をさせる。アーサーが居ないので俺がソード隊の指揮を執る。
「あれ見るゴブ!」
「また槍か?」
遥か上空に黒っぽい槍が見える。こちらにゆっくりと近づいて来ている。聞いたことのない甲高い音も聞こえて来る。恒星間戦闘艦の重機動エンジンの音だがまだ男爵達には分からなかった。
その船は俺達の上に来ると静かに地上に降りて来た。近づくとその大きさが分かって来た。ゴブリン達の槍船の2倍、物凄く大きな槍船だ。
「ひや~、デカいゴブな!」
「すげえな、こんなのが空飛ぶのかよ。」
「マスター、気を付けて下さい。」
俺達の目の前に黒くてデカい槍船が降りて来た。さっきから聞こえて来る甲高い金属音もかなり大きくなってきている。今ではギンギンうなってて耳がどうにかなりそうだ。
「おい。すげ~煩いな!ゴブ吉!」
「本当ゴブ!だんだん頭に来たゴブ!吹き飛ばして良いゴブか?」
「おう、やれ!黙らせろ!」
ゴブ吉が槍船の後ろの方、甲高い音を立ててる付近を睨んでファイアーボムをぶっ放す。爆発音の後、槍船から何かの部品がバラバラに飛び散った。代わりに金属音が完全に止んだ様だ。
「やばいゴブ!不味いゴブ!落ちて来るゴブ!」
「皆逃げろ~!落ちるぞ!」
俺達はデカい槍の下から大慌てで逃げ出した。まさかあんなに脆いとは思わなかった。デカい槍だから頑丈だと思っていたのだ。
それは30メートル位の高さから地上に落ちて来たのだが、物凄い音を立てて地面にめり込んだ。地面が揺れて俺達は立っていられないぐらいだった。そして俺達の芋畑は益々酷いことになってしまった。芋畑を荒らされたキングゴブリン達は怒り狂っていた。彼らはフライドポテトを食いながらビールを飲むのが大好きなのだ。
「うえ~、酷い埃だな。」
「脆い槍ゴブね。」
「我々の芋畑が~!!!!」
とにかく俺の芋畑に空から2本のデッカイ槍が降って来た日だった。これが銀河を巻き込んだ銀河帝国対ゴブリン共和国との戦いの始まりになるとはまだ誰も気が付いていなかった。