第18章 オーク艦隊に会いに行った
「超弩級戦艦・アークロワイヤル発進!」
オークの艦隊がやって来たので、俺達は迎撃に向かった。エリザベスも艦隊を率いて付いてきたがったが、本星を守って貰う様に頼んだ。以前陽動作戦で自分の領地からおびき出されて酷い目に会った事が有るので用心の為だ。つまりこの戦艦一隻でオーク族の艦隊をどうにかしようとしている訳だ。ハッキリ言って無謀だな。カテゴリー1の俺ならではの発想だ。
「何でエミリーが付いて来てるんだ?」
「私が居ないと、艦隊戦の仕方が分からんだろう?」
「そりゃまあそうだが、危ないぞ。」
「私は軍人だぞ、オーガ族の軍人をなめて貰っては困るな。」
エミリーは関係ないから危険な所には連れて行きたくないのだが、何故か着いてくるのだ。即死さえしなければ治療魔法で何とでもなるが、宇宙空間では直ぐに即死しそうな気がする。
「敵の戦力が分かったゴブ。戦艦30、小型艦300の艦隊らしいゴブ」
「戦艦30か、何か少ないな。300来るかと思った。」
「全くこれだから素人は困る。」
それからエミリーの講義が始まった。オークの戦艦が全部で300隻として実際に稼働しているのはおおむね200隻位、残りの100隻は整備や補給等でドックに半年位いるのが普通だそうだ。そして200隻も全体に散らばってるので本国で急に使えるのは100隻も無い事、その中から最大に集めて30隻だろうという事を教わった。
「つまり30隻の戦艦は、かなりの本気って事か?」
「当たり前だ、戦艦30隻を移動するのにどれだけの金が掛ると思っているのだ?これで戦艦が何隻か沈めばオーク共和国の主席は責任問題だぞ。」
こっちの世界の戦争は変だ、経済とかお金とか考えてるのか?俺達は生きる為に戦争してるのにカテゴリー3の連中は経済の為にやってる様だ。俺はこいつらは馬鹿だと思った。戦争で儲ける連中や仕事が増えて喜ぶ阿呆も居るだろうが、負けたらどうする気だ?前線の兵隊は死ぬし、そのまま攻め込まれれば後方の連中もただで済む訳ない。俺達が笑って許すとでも思ってるのか?それとも自分たちは絶対に負けないと思ってるのだろう。責任問題どころか首を狩に行く気の俺達の事が全然分かってない様だ、カテゴリー1の俺達は直接行動しか信じないのだ。
「なあエミリー、経済とか金とかがそんなに大事なのか?」
「そりゃあそうだ。経済が駄目になると失業者が増えて政府が不安定になるからな。」
「金なんか食えないのにそんなに大事なのかね?」
「金が有れば食い物は買えるだろう?」
「やっぱりエミリー達は平和ボケしてるゴブな。金で物が買えるのは平和な時だけゴブよ。」
この世界は平和な世界らしい、金なんかの価値を信じているらしい。金が万能で俺のバーバラが生き返るならこの世界の金を全部集めてやるんだがな。結局この世界の住人は俺達カテゴリー1の住人とは価値観が違うらしい。
「マスター、もうそろそろオーク艦隊の宙域ですわ。」
「そうか、皆気を引き締めていくぞ!」
久しぶりにゴブリン召喚士の力を使う時が来た。艦内のゴブリン達全員の意思を俺が統率する、そして俺とゴブ吉はゴブリン達全員の意思が理解出来るようになるった。これが俺の力でありゴブリンの力の秘密だった。魔導士全員が完全にシンクロした合唱魔法を撃てるのも、ゴブ吉のイージスを全員で共有する事により相手の位置が完璧に分かるのもこのせいなのだ。俺はゴブリンであり、ゴブリン達は俺なのだ。そして俺は自分では魔法が使えないにもかかわらず膨大な魔力が有るので、ゴブリン達の魔力タンクでも有った。
「オーク艦隊まで距離30万。」
「男爵、オーク艦隊の一斉射が来るぞ。」
「エミリー、操船は任す。」
「任せておけ!オーガ族艦長の実力を見せてやる。」
エミリーは腕捲くりして第1操縦席に着いた。戦艦で機動が出来るかどうかは知らないが。俺達の中で一番うまく出来そうなのでお任せする。俺達を敵の真ん中に運ぶのがエミリーの役目だ。
「敵一斉射!来ます。数30!」
「右スラスター全開。艦首シールド1~5番まで展開。」
敵の一斉射撃をスラスター全開で躱したエミリーは、直ぐに左スラスターを使って元の起動に戻した。
「次は。飽和攻撃が来るぞ。男爵、口を開けるなよ。舌を噛むぞ。」
さっきの一斉射を避けたので、俺達の戦艦の機動速度がばれてしまった。そこで今度はどの方向へ逃げても当たる様に周り中に戦艦が主砲をばらまくのだ。
「艦首シールド、エネルギー展開。全速前進!」
「オーク艦隊主砲120!来ます!」
今度は避けずにそのまま直進する、変に避けると沢山被弾するし、シールドを収束させ難くなるからだ。だが相手の主砲にまともに突っ込んで行くので物凄い肝っ玉が必要な操縦なのだ。エミリーは女だがデッカイ金玉をぶら下げている様だ。
「おい!男爵、今失礼な事を考えただろ!」
「嫌、全然考えてない。」
この感の良さで操縦しているような気がする。艦首シールドに弾かれる敵の砲弾はわずかだ。
「ふっふっふ、イージスで捉えたゴブ。」
「やれ、ゴブ吉!」
「魔道部隊!合唱開始!」
「ヒーラー隊、防御魔法展開!」
俺達は超弩級戦艦の速度と防御力、そして誰もやらない作戦でオーク艦隊のど真ん中にたどり着いた。さあ、これからは俺達の時間だ、オーク族よオークの神に祈るが良い。




