第16章 防御と攻撃の練習をした
オーガ族の美人お姉さんのエミリーが俺達の仲間を連れて帰って来た。船には200人程のメイジゴブリンとヒールゴブリン達が乗っていた。最高速度を出したので往復で2週間程だった。後はエリザベスに頼んだ俺の兵士達が来れば準備完了だ。それでも今回は最上位の200人なので、中程度のクラスのゴブリン達2000名分位の魔力が有った。
「男爵、無事連れて来たぞ。」
「ありがとうエミリー、ご苦労さん。」
「何、夫の一大事だ、妻として当然の事だ。ワッハッハ!」
とても美人でスタイルの良いオーガのお姉さんが高笑いしている。黙っていると凄くクールな感じの美人さんなんだが、芋ばっかり食べていて喋ると残念な人なのだ。
「私は、妻として超弩級戦艦を用意いたしましたわ!」
ゴブリン族のエリザベスが張り合ってるが話がややこしくなるので、俺はエミリーと計画について話す事のした。
「エミリー、超弩級戦艦を見てくれないか。お前の意見を聞きたいんだ。艦隊戦には詳しいんだろう?」
「任せておけ、これでもオーガ族の偵察艦の元艦長だ。戦闘教育は受けている。」
そこで俺は超弩級戦艦を使って相手に近づいて魔導士による攻撃で戦う方法について話した。こっちの戦艦のエネルギーは全て防御に回す作戦だ。何しろ大きすぎて隠せないし、小回りも利かないのだ。敵からの集中攻撃を受けるのは戦う前から分かってる。
そしてエミリーの出した結論は・・・・分からない、だった。AIの出した未来予測と同じだ。
「超弩級戦艦の防御は固いので、小型艦の攻撃は全て無効化出来ると思うが、相手の戦艦の攻撃全てを無効化出来るかどうかは分からんな。飽和攻撃をされると防御エネルギーが足らなくなるだろうな、そして少しづつ削られてやられるハズだ。」
「俺もそう思う、でもエネルギー防御の他にもヒーラー部隊による防御魔法や魔道部隊による防御魔法が有るんだ。」
「何だと、ゴブリンはそんな事まで出来るのか?」
「試して見るか?」
「面白そうだ、やってみよう。」
「エリカ、ヒーラー部隊を集めろ。ヒーラー部隊の力を見せるのだ。」
この世界の奴らはどうだか知らないが、俺達の星の人間やゴブリン達にはスキルや魔法と言う不思議な力を持っている。俺の魚釣りスキルはMAXなので、どんな所でも魚が居れば釣れるのだ。この話をエミリーにしたら、あり得ないって一言で片付けられたな。ヒーラーの能力はこの星のゴブリン達にも試して見たが怪我・病気がみるみる治ってエリカは聖女認定されて毎日大勢のゴブリンに祈られている状態だ。ゴブ吉の魔法も毎日研究員が調査しているが、全く分からないらしい。
「よし、それでは私の艦の主砲で攻撃するから防御してみてくれ。」
エミリーの200メートル級オーガの主砲は50センチ核融合リニアガンだ、重さ2トンの金属を音速の10~20倍で撃ちだすものだそうだ。最高出力で撃てば戦艦の主砲並みの威力が有るって話だが俺には良く分からない。
「エリカ、ヒーラー隊、頼むぞ!頑張ってくれ。」
「お任せくださいマスター、マスターの嫁部隊の力をお見せしましょう。」
「皆さん!マスターの嫁としての力を見せるのですよ!」
「「「はい!はい!はい!はい!」」
ゴブリンヒーラー部隊のクイーン達が目を輝かせて返事をしている。物凄いやる気を感じる。つっこみたい所が有るが怖いので言わない事にする。勿論ゴブ吉やアーサーも聞こえないふりをしている、こいつらは賢いゴブリンなのだ。
海の上に標的になる古い100メートル級の偵察艦が置かれた。これにエミリーの艦の主砲が攻撃する手はずだ。まともに当たると一撃でバラバラになるのだそうだ。
「ヒーラー隊、合唱防御魔法開始!」
エリカを中心としたヒーラー達が合唱魔法を開始する。標的間の前に淡い光の壁が浮き上がっていく。
「標的確認、弾道計算開始、終了。射撃準備完了。」
「いいぞエミリー、撃て。」
「発射!」
エミリーの艦の前の方から物凄い音と共に何かが飛び出した。標的まで白い煙みたいなものが筋を引いている。多分空気中の水蒸気だろうな。
グワン!!
10キロ先の標的艦から物凄い音が聞こえる。着弾したところには爆炎が上がっている。主砲の運動エネルギーが音と光に変換され、金属が着弾の衝撃で粉々なったようだ。正確なものは後で記録映像を見ないと分からない。
「防御成功です。マスター。」
「良くやったぞ。お前達。」
ヒーラー隊の防御魔法はオーガの主砲を完全に受け止めたのだ。ヒーラー達は皆嬉しそうに喜んでいる。ぴょんぴょん飛び跳ねるので大きな胸が揺れて大変な光景だ。
「まだだ!もう一度だ。今度は最高出力で撃つ!」
「ふふふ、望む所ですわ。」
オーガ族のエミリーは真っ赤な顔をして怒っている。自慢の主砲が跳ね返されたので悔しい様だ。エリカは跳ね返したの自慢げだ。
「これは使いたくなかったがしょうがない。最高出力なので一発しか撃てないが・・覚悟は良いか?」
「オーガの女なんかに負けませんわ。マスターの嫁は私たちです。」
「ふふ、モテてるゴブな~」
「主殿流石です。」
「何とかしてくれ、ゴブ吉。」
「世の中には出来ない事もあるゴブ。」
もはや意地と意地の張り合いになってしまった訓練は最高出力の砲撃で魔法の防御壁が砕け散ってしまった。だが標的艦は無事だったのでヒーラー達の勝利だった。その後防御魔法を傾斜をかけて行うなど改良案が出されて防御魔法は更に強力になっていった。
「次は俺達ゴブな!」
次は攻撃魔法の演習だ。標的艦にエネルギーの障壁を張って貰いゴブリンのメイジ達が攻撃する。標的艦までは距離が有るので合唱魔法で攻撃する。
「合唱魔法、ファイアーランス用意!」
最初は威力の小さなヤツから試して見る事にする。どの程度でエネルギー障壁を打ち破れるか試して見たいのだ。
「合唱魔法、放て!」
50メートル程の炎の槍が標的艦に向かい着弾する。エネルギー障壁は素通りだ。標的艦表面が少しえぐれて煙が出ている。
「やはり、エネルギー障壁は無効だったか。魔法は感知出来ないからな。」
エミリーが渋い顔でうなずいている。俺達の魔法は相手の艦に直接攻撃出来る様だ。これならいけるかも知れない。デカい合唱魔法なら戦艦でも壊せそうだ、それにゴブ吉なら戦艦内部に直接魔法を叩き込めるのだ。
この訓練は完全に秘密にされた。ゴブリン王国の一握りの者にしか映像を見せなかった。万が一にもオーク達に知られる訳には行かないからだ。




