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存在の証明

作者: 南港

元々俺はこんな性格じゃなかった。

どこにでもいるごく普通の学生。クラスの中に何人かはいる

地味で目立たない存在。まさにそれが俺だった。

人と話すのが苦手だった俺は、こんな環境でも別に嫌じゃなかった。

現状を変えたいとも思わなかったし、むしろこの生活に満足していた。

だから、変わりたいと思って変わった訳じゃなかった。

でも、自分を変えなくちゃいけなくなってしまったんだ。


最初は些細な変化だったから、余り気にしてなかった。

でも、日が経つにつれ変化が激しくなってきて、無視できるものじゃなくなってきた。

実はその変化っていうのが、信じられない話だけど

体が日に日に透明になっていくってものだった。

完全に透明にはなってないけど、確実に体の色が薄くなっていってるような感じだった。

ありえないと思うけど、実際俺の身に起こっていたから

俺にとっちゃ紛れもない事実だった。

透明人間なんて面白そうだし、楽しい事色々できそうだからいいじゃんって思う人はいるだろう。

まあ始めのうちは、そんなことも思ってた。でも考えてみてほしい。

完全な透明人間になったら、もう普通の生活には戻れない。恐らく自分の意志で

自由に透明になったり、元に戻ったりは出来ないからだ。

しかも誰にも気づかれないから友達はおろか、家族とすらもコミュニケーションが取れない。

まあしゃべる事で、会話ぐらいは出来ると思うが、もし信用できる人以外に

透明人間ってばれた時は、上手くいっても見世物扱いにされ、最悪モルモットとして

実験動物扱いだろう。そんなの俺は死んでも嫌だ。

でも、どうやってこれを止めたらいいかわからない。

悩んだ末に、俺は自分を変えてみることにした。

積極的にいろんな人に話しかけたり、部活に入ったりイベントに参加しに行ったり、とにかく

なんでもいいから自分をアピールしまくった。

バカな話だけど、少しでも自分の存在をアピールすることで、

体の透明化を止めようとした。だが、何しろ苦手だった人付き合いを

一から始めた訳だから、うまくいかない事の方が多かった気がする。

でも、自分の今後の生活が懸かっていたもんだから、そんなこと気にしないで

とにかく無我夢中で行動を起こした。

そしたら、そのかいあってかわからないが、いつの間にか体の透明化がなくなっていた。

しばらく経っても、もう体に変化がなかったから、これで俺は

透明化の呪縛から逃れることが出来たんだと安心した。

だから俺は、元の自分に戻ろうとした。もう自分をアピールする必要も

ないかと思ったからだ。だが、どうしても行動に移すことが出来なかった。

もし元の自分に、前と同じ目立たない存在になっても大丈夫なのだろうかと考えたからだ。

戻ったら、また透明化が始まるのかもしれない。

そう思うと、どうしても元の自分に戻ることが出来なかった。

昔の俺を知る友人と会うと、性格変わったな とよく言われる。

長い事行動を起こしたせいか、今じゃどっちが本当の俺か分からなくなった。

でも、俺が今も消えずに存在できているということは、

この世界に認められたってことじゃないかなとポジティブに考える事にした。

多分もし俺が、あのまま変わろうとしなかったら、

数多くいる行方不明者の一人になっていただろうから。
















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