log in - 96 その湖空にて。
“ゴウゥンッ……ゴウゥウンッ……”
虚空に響く……駆動音。
「何とかこの自体までには形にできたな」
眼下に広がる湖面に映り込む……巨大な影。
「そうね、たぶん……大炎上するでしょうけど……」
誰かに聞かせるというわけでもなく、感慨に独りごちた呟きに応える声。
赤いショートヘアの少し小柄な少女は、どこか諦念を感じさせる声色でそう断じる。
「な、何……?」
おっと、少しばかり“ジィー”と見つめすぎたか? ……しかし。
「魔砲少女だな、と……」
「誰が作ったのよ!? 誰がっ!!」
はい、俺ですが何か?
赤を基調とした心持ちゆったりめなドレス……風? 的な法衣とでも言おうか。
どこか古いアニメ作品を彷彿とさせるデザインである。
しかんも、だ。小柄な体型とは裏腹な、大きく張り出すその胸とかがまた、ね? 萌え、の中に背徳的なエロスを醸し出しているのだ。
うん、いい仕事をした!
「うふふふふぅ~、仲良しさんですねぇ~……」
「っ!?」
まるで今気づいたと言わんばかりに“グリンッ”と大袈裟に声の主へと顔を向ける少女……イニス。
いや、揃ってこの場に来たんだからいるだろうよ……と、そう思いながら、俺もそちらへと顔を向ける。
腰まで伸ばした青みがかった緑髪を揺らしながら、垂れ目がちな瞳を細めてこちらを窺う女性。
スタイルは平均的? だが、その間伸びした独特の口調から醸し出される雰囲気が、なんていうか……こう、母性的な艶めかしさとでもいおうか? そんな不思議な感覚を覚えさせるのだ。
それが、どうしようもなく男の本能を刺激してくる。
これで、彼女が受け持っている生徒は、はたして無事であるのだろうか?
随分と会っていないのにも拘らず、恐らくは向こうでも変わりないであろう彼女の様子が鮮明に思い浮かび、俺は心の中で……合唱。
見ず知らずの男子生徒諸君……冥福を祈る。
そう、何を隠そう。彼女……知人である。
あちらでは久しく顔を合わせてはいないうえ、姿も種族すら変わっているにも拘らず、その独特の喋りと雰囲気から中の人をすぐに察することができてしまったという、ね……。
アバター名:リリウ。本名:厳島 霧羽。
そう、俺が通う病院……その医院長、厳島 貴臣氏の娘である。
いや、『VRO』をやっているってのは医院長から聞いてはいたけど、さ? まさか、イニス繋がりで顔を合わせることになるとは思わなんだ。
「あらぁ~? あらあらぁ~?」
「ん?」
「うわぁ……」
モニターに映し出されたのは……阿鼻叫喚の図。
足元に流れ込む黒いヘドロ? に触れた途端にいくつもの状態異常を受け……しまいには即死判定を受けて、一人、また一人、光の粒子へと変わっていく『転生者』達。
見ているもののSAN値を“ゴリッ、ゴリッ”と削りながら押し寄せてくる異形に、彼等彼女等は為す術もなく呑み込まれていく。
「むう……何か、非常に見覚えのあるのが混じっているな……」
押し寄せる海魔の群れ。その中に、以前『湖村:フォロム』にて遭遇したあの異形と同じ姿が多数見受けられた。
「「うわぁ~……」」
イニスとリリウ、2人がドン引きするのも頷けよう。
某TRPGから抜け出てきたかの様なその異形は、群れ立って『転生者』達を蹂躙していくのだ。
1人……また、1人……次から次へとSAN値直葬、リスポーン地点へと出荷されていく。
「それにしても、だ。あいつ等……阿呆か?」
それは、何ら対策をする素振りも見せることなく、我先にと先陣? を切って群れへと突っ込んでいく……とある『転生者』の集団。
「あ~……あいつ等、攻略組ね。自称、だけど……」
「はいぃ~……攻略組(笑)さん達ですぅ~」
うん、酷い言われようだ。まあ……弁解の余地はないだろうが……。
とはいえ、だ。今回参戦の趣旨からすれば寧ろ好都合。
散々不遇種族に心無い仕打ちを行ってきた最大の加害者である彼の連中がその無様を晒すのは、我等からすればまさにお誂え向きの状況といえるだろう。
この時のために、奔走してきたのだから、な……。
今回分は、これにて終了。
またしばらく間が空きます。
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